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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
91/110




 三ノ月に入ったので、そろそろ家の下見をしてみることになった。

 オネエの集めた資料を見比べて、下見に行く家を選別する。


「資料を見る限り、これが一番良さそう」

「値段の割に広いですが、かなり古い物件ですね。場所も迷宮に近いですし見るだけ見てみましょう。あとはこの物件も良さそうです」


 オネエの呈示した物件は、貴族街にあって比較的新しく、値段も手頃と中々だ。ただし古い方に比べるとかなり部屋数が少なく、敷地も狭い。


「これも良さそうです」

「スケッチの家が近いね」

「そうですね。騎士が住んでいた家のようですから」


 スケッチの家の周辺は、大体騎士が住んでいるのだ。


「あれ? でも騎士の家って次の騎士に渡されるんじゃなかった?」

「そうですね……何かワケありかもしれませんね……」


 事件があったとか?

 幽霊出るならちょっと住んでみたいかも。ゴーストハウスかぁ……。

 とりあえずこの三件は見に行こう。



 休日をまるっと使うのはもったいないので、倶楽部活動のない平日に一件ずつ見て回った。

 下見のおかげで王都の大体の相場、税金は把握した。ボロいけど迷宮に近く、広めの屋敷がいいという結論になった。が、予約は出来ないので、あと一月売れ残ってたらってことになるけど。


「本当にあのボロ家で良いのですか?」


 オネエはとても不服そうである。


「いいじゃん、安いし。改造のし甲斐もあるし」


 広い割に安いってのが一番だけど。

 お風呂のスペースや魔動車を置けるスペースもあり、作業場も充分確保出来そうだ。何より地下室! クラウドたちの部屋と貯蔵庫になる。三階建てなのも嬉しい。王都では土地面積で税金が決まるが、四階以上になると税金が上乗せされる。三階ぎりぎりまであった方が損してない気分になるというか。二階建てだと一階分損してる気がするじゃん!


「まぁ貴族になるまでに綺麗にしていけばいいですけど……」


 綺麗にするより動くようにしたいけどね。無理だけど。


「場所もイマイチですけど」


 うーん、まぁ、貴族の住んでいる場所からはちょっと離れてるよね。上位の貴族を目指しているのに、一番近いのは下位の貴族が住む場所だ。


「四ノ月になるまでに新しい家が増えるかもしれないし、またその時考えよう」


 もっといい家が空くかもしれないしね!




 三ノ月の十四日は、ホワイトデー兼卒業式だ。武器愛好倶楽部の在校生一同から三年の先輩方に花束を渡す。どこの倶楽部もそれぞれ花束を渡しているようだ。

 エンディングは二年後のヒロインちゃんが卒業式を迎えるとき。ホワイトデーのお返しを貰って、卒業式後、呼び止められるシーンで終わる。あとはエピローグがエンディング用のスチルと共に流れる。

 ヒロインちゃんのことはいいとして、今年のホワイトデーはユーリー様にしか贈っていないので、もちろんお返しは一つ。星をモチーフにしたネックレスを頂いた。やっぱりかわいい系のデザインなんだよなぁ……。

 在校生は明日が終業式で春休みに入る。クラス分けは始業式なので落ち着かない春休みになりそうだ。今回は実家に帰らずに済むのでがっつり稼げる。

 そこで選んだのは毒蛇狩りとゴーレム迷宮の同時進行。本当はもう少し遠出しようかと思ったんだけど、家を買ったり改装したりと忙しくなりそうだしね。

 そんなこんなで四ノ月一日、いよいよ家を購入。結局目をつけていた迷宮近くのボロ家になった。なんとお値段、420万H。セキュリティ魔道具付き(鍵の代わり)でこの広さはかなりお買い得。ボロいけど。


「さー、改造するぞー!」


 ボロ家ボロ家って言ってるけど、何も壊れそうなほどのボロではない。とりあえず家全体を洗浄していく。うん、まぁまぁいいんじゃない? 

 雑草だらけの庭はとりあえず放置。まずは内装から手を付けよう。スケッチも手伝ってくれるというので、四人で手分けして壁に白いペンキを塗っていく。多少の色ムラなんて気にしない。

 地下の一室には、スケッチに頼んで壁に絵を描いてもらった。深い緑で壁中に植物を、赤い花でアクセント。クラウドたちの部屋の出来上がり。かなり広いのでホシの実の植木を置いた。水場も作る。これで少々留守にしても大丈夫だ。


「さて。とりあえず改造はオネエと私でやるから、二人は迷宮に行って来て」


 家を買ったものの、住むのは寮だ。改造は急がない。二人はまだレベルが4なのでレベル上げを優先してもらいたい。


「よし。一応部屋割考えておいたんだけど、どう?」


 それぞれの部屋や作業部屋、衣装部屋と客室、娯楽室、書斎。使用人はまだ増えるから使用人予定部屋もある。


「良いと思いますよ。どこを優先にしましょうか? すぐに移り住む予定ではないのですよね」

「うん。厨房と衣装部屋、作業部屋が優先かな。あっち狭いし」


 オネエが寝るのは寮だけど、昼間はこっちの作業部屋を使ってもらおうと思うのだ。


「では作業部屋から整えます」

「うん、お願い。私は厨房と衣装部屋かな」

 

 室内灯とカーペットやタイルを整えて、必要なものを運び込む。とはいえオーブンや食料を保存するような魔道具はまだない。あるのはちょっとした調理器具だけだ。でもこの魔石で作った鍋は自信作。魔道具制作の時間に作ったのだ。


「よしよしコンロは生きてるね……水道もオッケー。あ、食器がないわ」


 料理するときに材料と一緒に食器と箸を買って来よう。食器棚もいるのか。どちらにせよまだ先の話だけど。

 衣装部屋にも今は使っていない武器やドレスを運び込む。これでだいぶ寮が広くなるなった。

 もう日も暮れたので、そろそろ二人が戻って来る頃か。簡単なところくらいなら出来るかな……。浴室に石鹸や籠、タオルをセッティング。掃除は済んでいるからシャワーくらいならすぐにでも使える。でもそうじゃなくて私は湯船が欲しいのだ。しかも温泉で。まずは素材が必要だけど、王都でも手に入るだろうか。オネエに調べてもらおうか。

 二人の帰宅を目途に初日の作業は終了し、私はリェーン・パウペルに手紙を送った。



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