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ゲーム風異世界でハンターライフ  作者: クドウ
兼業ハンター生活一年目
69/110

虫のいる迷宮




「今日は虫のいる迷宮に行こうと思うから、サオンは掃除でもしてて」


 私がそういうと、サオンはきっ、と顔を上げた。

 

「わたし、行きます!」

「え? 本当気にしなくていいって。日帰りだしあんまり深く潜らないし、お土産買ってくるから」

「でもでも、お仕事です!」

「いや仕事だけど、もともと雇い入れの契約時にハンター業務はなかったわけだから」


 ハンターで契約してるなら虫が苦手でも強制的に連行するけど、そうじゃないのに無理することはない。話を聞く限り、サオンがいないと攻略出来ないようなレベルでもないし。


「元々お休みも少ないし、のんびりしてていいよ。おやつも買っておいたし」


 キャラメルとマシュマロを見つけたから買っておいたのだ。チョコレートクリームを挟んだビスケットもあるよ。


「おやつ全部食べていいよ」

「…………お留守番してます」


 うん、それがいい。




 

 虫のいる迷宮は馬車で三時間ほどの場所にある。迷宮の近くには小さな村。ハンターが来る都合上、大抵の迷宮の側には街や村があるそうだ。

 観光や名産といったものは特になく、迷宮に潜るハンターを狙った宿泊施設や酒場が少しあるだけの長閑な村だ。目ぼしいものは見当たらないので、地図を購入して迷宮に潜る。

 罠の本を読んで罠解除が50を越えたけど、実際に解除となると不安が残る。そのため今日は十階までが目標だ。

 鉱石パーツを使ったベルトが使いたくて、盗賊風装備にプラスした。オネエも今日はメイド服じゃなくてチャイナ風。スケッチはいつものローブで諦めたように笑っている。いいじゃん、防御力あれば好きなもの着たって。


 迷宮は薄茶色の魔石で出来ていた。入った瞬間から羽虫がざわめく。うん、サオン連れて来なくて良かった。

 サオンがいないので今日は私が先頭。気配察知を使ってモンスターを探しながら歩く。小さい反応を気にするときりがなさそうなので、大きな反応だけ探っていく。


「来るよ、スケッチ!」

「わっ!?」


 スケッチの杖が羽虫を薙ぐ。羽を失い、くしゃりと地に沈む。


「このくらいの反応でも一撃かぁ。もっと大きい反応探さないと駄目ね」

「弱いですけど、スピードはちょうど良さそうですよ」

「そう?」

「はい。ちょっとぎりぎりです」


 ぎりぎりセーフよりぎりぎりアウトを探したいな。厳しく行こうよ。

 大きめの反応を探しながらゆっくりと下りて行く。

 スピードの訓練だと羽虫が一番良い。蟷螂とかバッタ系もけっこう素早いけど、予備動作があるからなぁ。

 カブト、クワガタは虫系の中では頑丈な方。力も強いし、けっこう楽しい。

 蝶々は強くないけど、鱗粉が気持ち悪い。この迷宮の中で一番嫌いだ。

 虫系は大体馴染のある形をしているけど、色が不気味。芥子色のクワガタと桃色の蝶々とか遠慮したい。

 十階に到着してから休憩。時間いっぱい十階で粘ろうかな。粘ると行っても帰りも三時間馬車だからそんなに遅くまでいられないけど。


「疲れた……けど、ゴーレムよりは疲れないね」

「そうね、攻撃自体は強くないし」


 当たっても痛くないって素晴らしい。いくら回復出来るって言っても、痛い思いはしたくないしね。装備がいいおかげだ。


「あ、蛍だ」

「蛍? あぁ……形は似てるけど、蛍だと昆虫になっちゃうよ」


 大きな蛍の色は瑠璃色で、色自体は綺麗なのに何とも不気味。でも形は蛍で、おまけにお尻は光っている。

 もしかして蛍葛の色か、これ。私は以前蛍葛をほたるくずと読んで、糞親父に大笑いされたことがある。小学生の読み間違いに腹抱えて笑うってどうなのか。思い出したらムカついてきた。


「光源部分は薬の原料になるので、買い取り価格も良いですよ。たくさん狩りましょう」


 おぉ、オネエが嬉しそうだ。

 とりあえず蛍を乱獲した。なかなかいい収入だ。

 結論として、虫の迷宮は剣と罠の練習にいいかもしれないけど、食べられるものがないからちょっとつまらない。食べられないわけじゃないかもしれないけど、食べたくないし。スケッチの訓練にはいいからまた来るかもしれないけど、どうせなら十階以降がいいなぁ。罠解除のスキル上げたい。罠解除練習用キットとか売ってたらいいのに。

 帰りに王都の店で投擲用鉄球を受け取り、お土産のおやつを買って帰宅した。




 翌日はいつも通り、四人揃って王都の迷宮へ。

 午前中の狩りを終え、休憩所で軽食を食べながら考える。


「うーん……」

「どうかした?」

「思ってたより回避が上がらないのよねぇ。けっこう避けてると思うんだけど」


 避け損ねたりとかあんまりないんだけどなぁ。


「……いや避けてないと思うけど。むしろ迎え撃ってるよ」

「そう?」


 あれー?


「むしろ僕とサオンの方が避けてるよ」

「そうだっけ……あ!?」

「えっ何!?」


 スケッチのスキルを確認する。

 うん……回避ないよね。運動神経底上げしたかったからダッシュ・ステップ・ジャンプに重点を置いてたんだよね。


「スケッチ、回避設定しよう!!」

「いいけど、伸びは悪いとおもうよ?」

「大丈夫大丈夫」


 根拠はないけど、運動神経と逃げ足が関係ないのはお決まりだし。運動神経壊滅的でもドッヂボールでは長く生き残ったりするし。

 午後からは回避スキルを設定してお試し。わざとモンスターの中に突っ込んで、攻撃なし回避オンリーで頑張ってもらった。

 結果。スケッチは回避に向いていることが判明した。

 ダッシュやジャンプより、かなり伸びがいい。系統が一緒に思えるのに伸びが違うとはこれいかに。やはり回避に運動神経は関係ないんだな。

 あー、もっと早く気付いていれば……。他にもこういうことあるかもしれないし、スキルを定期的に入れ替えて伸びがいいものを探してみるか? 


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