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ずっと一緒だよ  作者: 藤原 柚月


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22/31

何を期待していたんだろう

 アパートの二〇六号室の部屋に入る。


 父は先にリビングに向かったので、私は自室で鞄を置き、コートをハンガーにかけてクローゼットにしまった。


 リビングに向かうと、父はお茶の準備をしていた。


 私はダイニングテーブルをアルコール消毒をした。


 準備が出来たのか、父はお茶をテーブルに置く。


 私はテーブルを挟んだ向かい側に座った。


 父も座る。


 お茶が入った湯呑みに触れると温かい。入れたばかりだからか、湯気が上ってきた。


 残念なことに私は猫舌なのですぐに飲めない。


「あ、あの、ね。私」


 父は私の話を待っていたとばかりに真剣に話を聞いてくれた。


 今までの事を話してみた。あおいちゃんの事件だったり、職場での私の立場など……。


 話し終わってから、父はゆっくりと頷いた。温かいお茶は湯気が立ち、息を吹きかけて冷ましてからお茶を啜る。


 テーブルにお茶を置くと、一息ついてから口を開いた。


「事情はわかった。だがなぁ、心春。仕事なんてそんなもんだろう。そんなことで根を上げてどうする?」

「そんなことって……」

「どうしてそう思ったのか俺には理解出来ない」

「お父さんは……私が在らぬ疑いをかけられても普通だと言うの?」

「それは、心春にも原因があったんだろう」

「あの子は……百瀬さんは私があおいちゃんと仲良くしてるのが気に入らないって言ってた。それでも原因があるの?」

「だったら心春がそのあおいちゃんとかいう子と縁を切ればすむ話だ。友達は選びなさい」


 その言葉を聞いて、私は一気に気持ちが冷めてしまった。


 何を期待してたんだろう。昔みたいに慰めてほしかったのかな。


 ああ、そっか。私の居場所は元から……どこにもなかったのかもしれないな。


 心配そうにしてたのは、私が泣いていて驚いたからだろう。話を聞いて、深く考えずに『その程度』で済ましたんだろう。


 父は、「疲れてるんだ。もう休む」と言って寝室に行ってしまった。


 リビングに取り残された私はしばらく放心状態だった。


 私はなんて言われたかったんだろうと考えても分からなかった。でも、心にぽっかりと穴が空いたように寂しかった。


 ◇


【百瀬 奈美視点】


 佐藤さんを軽く脅してもまだモヤり感が続く。

 どんなに虐めても全然気分が晴れない。それどころかどんどんとイライラが増して仕方ない。


 それもそのはずだ。あの子は自分は不幸だって顔してるんだから。被害者ぶるなよ。


 寧ろ加害者なくせに。本当にムカつく。


「大丈夫だった? 百瀬さん」

「はい。すみません……、お見苦しい所をお見せしてしまいました。ですが、佐藤さんは悪くないんです。私がいけなかったんです」


 パートのおばさんが心配そうに私の顔を覗き込む。


 いきなり入ってきたから咄嗟に佐藤さんのせいにしたんだったことを思い出した。


 うるっと瞳を麗して落ち込む素振りをすると、単純なおばさんはコロッと騙される。


「いい子ね。何かあったら言うのよ。あんな奴に負けちゃダメよ」

「はい! ありがとうございます」


 おばさんは頷き、仕事に戻ろうとしたらピロンっとおばさんのボトムスのポケットから音が鳴る。


 おばさんは携帯を取り出して、首を傾げた。


 すると、私の携帯も音が鳴る。見ると、私のSNSの裏垢が全体に見れるようになっていた。


 鍵垢だったのに。鍵が外れていた。


 しかもかなり拡散されている。見覚えがない投稿もされていた。


 しかもこれって……さっきの事じゃない!!


 それは投稿には動画も載せてあり、動画の内容が私が佐藤さんを壁に力強く押し付ける場面だった。しかも音声も入っていて暴言がしっかりと記録されている。


「なにこれ」


 おばさんは絶句していた。


 そもそもなんでおばさんの携帯が鳴るの?


 そう思っていたら、おばさんはメールを見せてきた。


 その内容はさっきの動画がメールで送られてきていた。


 なんでいきなり……?


「ち、違うんです。信じて……」


 おばさんは私を見た後、誤魔化すようにそそくさと仕事に戻る。


 終わった。そう思った時に、また携帯が鳴る。


 見ると、DMに「動画を投稿した者です」とメッセージが送られてきた。


 私はメッセージを打ち込み、送信した。





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