貴方は、狂ってる【美月視点】※グロ注意
佐藤さんに友達になりたいんだと伝えてから数日後、お母さんから頼まれていたものをスーパーで買ってきた帰り、佐々木くんが声をかけてきた。
佐藤さんからは今まで以上に警戒されてて、落ち込んでいたけどもまさか佐々木くんから話しかけてくるとは思わなかった。
全然学校にも来てなかったみたいだし。
でも、元気そうで良かった。前見た時は包帯が巻かれていたから心配していた。
「えっと、心春ちゃんから聞いたんだけど、友達になりたいの?」
佐々木くんは頬を赤らめて恥ずかしそうに聞いてきた。
私はその仕草に気を良くして、勢いよく頷く。
「うん。うん!!! そうなの。やっぱりダメだっかな? 佐藤さんからあれから前よりも距離を取られちゃったし」
「ううん。ダメじゃない。ーー嬉しいよ」
「知りたいんだよね。キミら二人のこと。仲良くなりたい」
「うん。ありがとう」
私と佐々木くんは連絡先を交換した。
私は知りたいんだ。佐々木くんの『洗脳』という言葉の意味を。
何か理由があるかもしれないし、軽く思っただけかもしれないし……。
だから、まずは心を開かせるしかない。
「……心春ちゃんと三人でお菓子パーティーやらないかな? 折角友達になったんだから、親睦を深める為にも」
「え、いいの?」
「うん。場所は僕の家。住所は後でメールで送るよ」
佐藤さんはあんなにも私を警戒してたのに、佐々木くんは私をすぐに受け入れてくれた。
真逆な反応で戸惑ってしまう。しかも、早々に佐々木くんの家でパーティ……。
佐々木くんは思っていたよりも社交的なのかな。
何はともあれ、交流あるのみね!
佐々木くんと別れて帰宅した私は、お母さんに食材が入った袋を渡して自室に向かった。
携帯を確認すると、メールには佐々木くんの住所が送られていた。
ーー仕事が早い。
そう思って、私は嬉しくなって口角をあげた。メールの返信をする。
◇
お菓子パーティーは日曜日に開催されることとなった。
私は今、佐々木くん家……アパートの部屋の前にいる。
どうしよう。なんだか緊張してきた。
これまで友達の家に遊びに行ったことがあるが、佐々木くんの場合は、私の友達とは正反対な性格してるから、余計なのよね。
私は大きく深呼吸して心を落ち着かせてからチャイムを鳴らす。
しばらくしてからガチャっと鍵を開ける音が聞こえてきた。
ゆっくりとドアを開けられる。
「いらっしゃい」
「お、お邪魔します」
中に入る。後ろからドアを閉める音と鍵を回す音が聞こえる。
「居間はその先だから、先に行っててよ。僕は飲み物の準備するから」
「手伝おうか?」
「いや、キミはお客さんなんだから、気にかける必要はないよ。ゆっくりしてってよ」
佐々木くんは相変わらず目元まで伸びた前髪で目が隠れているが、口元は笑っている。
歓迎されてるみたいで心から嬉しかった。
だが、居間に入って「え……」と間抜けな声を出してしまった。
目の前の光景に驚愕したのだ。
足が震える。全身から逃げないとって警報が鳴り響いている。
「キミは踏み込み過ぎたんだよ。人が親切心で警告したのに、ね」
背後から佐々木くんの声がした。怖くて振り向けない。
手に持っていた手提げカバンを床に落とした。
「心春ちゃんが好きで友達以上の関係になりたかったキミは心春ちゃんをストーカーしていた。そして、僕が邪魔で消したくて、まずは僕の両親を殺したーーその現場を目撃した僕にも襲いかかろうとしたが、抵抗した僕にナイフで刺されて死んでしまった」
私は佐々木くんが何を言ってるのか分からない。
だって、目の前には刃物で何回も刺されて出血が酷い男女の二人。恐らく、佐々木くんの両親だろうけど。
居間全体が、血痕だらけだった。
素人でもわかる。確実に死んでいると。初めて見る光景。
恐怖で声も出せない。動けない。
「……キミは犯罪者として死んでいくんだよ」
「~~っ!!?」
「恐怖で声も出せない? これも全て、僕の心春ちゃんに手を出そうとした罰だよ。ーーバイバイ」
命の危険を察した私は、恐怖を振り切って佐々木くんから距離を取った。
佐々木くんを見ると、手には血塗れなナイフが握られていた。
ナイフからはまだ乾ききれてない血が垂れて、床にシミを作っていく。
「両親を……ころ……したの?」
必死に声を絞り出した。
佐々木くんはキョトンとしていた。
「うん。だっていらないから。……僕には必要ないんだ」
当然だと言わんばかりに平然と答える。佐々木くんの考え方がおかしい。理解が出来ない。
佐々木くんは容赦なく私にナイフで切りつけようとする。私は必死にかわした。
「なんで逃げるの? 逃げないでよ。友達になりたいんでしょ?」
「そ、それは違う」
私が逃げた先は居間だった。なので必然的に血痕だらけの空間にいる。
「何が違うの? ああ、やっぱり嘘だったんだ。キミは嘘つきだね」
佐々木くんは、ゆっくりと居間に入る。
私は腰を抜かして尻もちをついてしまった。
一歩一歩と私に近付いてくる。私も尻もちをついた状態のまま一歩一歩と後退りしていると、死体に背中が当たってしまった。
その死体は女性だった。うつ伏せで倒れ、何ヶ所も刃物で刺されている。大量に出血もしているので死体の周りが他の場所よりも血が多い。その為、私の手が血塗れになっていた。
それだけじゃない、きっとスカートや靴下も血で汚れている。
私は佐々木くんを見上げる。
「貴方は、狂ってる」
恐怖から出た本音。佐々木くんは私を見下ろしながらお腹を抱えて笑いだした。
「あっはははははっ!!! 狂ってるのはこの世界だよ」
笑い終わった佐々木くんは私にナイフを振りかざした。
鋭い刃物が容赦なく私の心臓を貫く。
聞いた事のない歪な音。激痛なのに、悲鳴もあげられない。助けを呼ぶことさえ出来ない。
息が上手く出来ない。大量の血が私から流れていく。
私、死ぬんだ。まだまだ中一で、これからなのに。
色んな経験したかった。
ああ……そうだ。佐藤さんに……話さないと……。
佐々木くんはーー……。




