52、無事乗り切りました!
なんとか騒ぎも起きることなく文化祭を乗りきった私たち。
あの後舞台袖では第二王子が一人スタンディングオベーションをしていて、その声に調子に乗ったマリーウェル様が握手コーナーを儲けたいのですが、と二人に声を掛けた瞬間一番先頭に並んでいた。
感激と歓迎の言葉の羅列に、アレックス殿下もザッシュ様もだいぶタジタジだった。
そして、質問コーナーで決定的な一言により、殿下の王位簒奪は潰えた。
『勇者の称号で国を統べることはなさらないのですか? 求心力とそのお人柄で、お国の上に立つのも夢じゃないと私は思いますが』
それがそこら辺の生徒からの質問だったら良かったんだけど、何を隠そうこの国の第二王子から投げつけられた質問だったので、アレックス殿下は笑顔の下にげんなりとした感情を乗せた。
『たとえ勇者だろうと、私は第三王子、王太子である兄を支えることこそ使命です。それに、私よりもよほど兄の方が国を統べるのに相応しいですよ。穏やかで、それでいて視野は広い。下の者を労る優しさも持っている。けれど、厳しいときはしっかりと締める。私には出来ません』
『しかし、優しいだけで国を治めることは出来ないですよね。気弱とか他国にどのような目で見られるか……』
『勇者という称号は、誇らしいばかりではありません。時に強大な魔を相手取り、自身のことより精霊様を優先し、そんな者が国を治めたら一瞬にして崩れます。なにせ世界中に飛び出しますからね。まだ旅は始まったばかりですが、これから世界中を回ることになるでしょう。そんな私には国を中心で治めるよりも横から支える方が合ってます』
アレックス殿下は握手会のあとちゃっかりマリーウェル様のよこにちょこんと座った第二王子の手を取って、その瞳を覗き込んだ。
殿下、それ女性を口説くときの仕草です。そのままだと第二王子堕ちちゃいますよ。
心の中で思わず呟くと、殿下は手を取ったまま、ふわりと王子スマイルを顔に乗せた。
『ノワール殿、国というものは、中心に立つ者も大事ですが、それを支える者もとても大事です。あなたはご立派に兄王子を支えておられる。私には未だ出来ていません。尊敬します』
『そうだろうか……』
『はい。それと、こんなところで申し訳ないが、ノワール殿には是非やっていただきたいことがあるのです』
勇者からのお願いということで、第二王子も前屈みになる。
『私たちは世界中に精霊様の現状を発信しようと思っています。まずは隣国であるここ、カロッツ国から。ノワール殿には是非この国と私たち勇者の架け橋になっていただきたい。ご連絡はノワール殿を通すことで、我々の行いを国内に発信して欲しいのです』
『わかりました。全身全霊をかけて、やりましょう。つきましては、ご連絡方法を』
『それは後ほど王宮に顔を出しますので』
『わかりました!』
キリッと頷く第二王子殿下を鑑定で見てみると、「王位を取る」という文章が消え、「勇者との架け橋を行う」となっていた。ついでに隣のマリーウェル様の手を取って、是非一緒に勇者のために頑張りましょう的なことをキラッキラな笑顔で言い、まんまとマリーウェル様の了承を得てしまった。マリーウェル様も大好きな顔で頼まれてご満悦そう。こっちも王妃じゃなくて、婚約解消して勇者のための架け橋となるべく動こうとしているってなっていたから、地味にゴタゴタが解決してしまった。
そして三人はぐで~……とした状態で、滞在先まで帰ってきた。
「神経削がれた~……マジで疲れた」
「ローズ嬢、あの婚約者変更狙ってたご令嬢はどうだった?」
二人ソファにだらしなく身を投げ出しながら同じような恰好をしている私に質問してきたので、先ほどの結果を伝えることにした。
「第二王子は王位簒奪を狙ってましたが、重度の勇者ファンなので架け橋となるっていう殿下の言葉に堕ちてました。もう全力で一生涯架け橋となるでしょう。そしてマリーウェル様ですが、第二王子殿下が好きなので、先ほどの一緒にやろうという言質を取ったと国王陛下に進言し、婚約者変更をしてもらおうとしてます。もう第一王子を追い落とそうとはしてません。そのうち王太子妃候補が空席になるんじゃないでしょうか」
「「「「……」」」」
誰一人、言葉を発しなかった。
全員の顔を見回すと、呆れたような疲れ切ったような顔をしていた。だよね。
というわけで!
ようやく私は学園に通うことがなくなったので!
一ヶ月まるっとセルゲン国にいきたいと思います!!!!




