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家族のひととき ②

翌日


学院が明後日から始まる。二学期はついに課外授業だ。そして学院祭がある。イベントが目白押しだ。今期も頑張る。


今日は父上やメル姉、エルカ姉様、兄上がお休みで家にいる。兄上の婚姻の儀が来月に迫っているために色々と確認があるらしい。俺は二学期の準備とできていなかった訓練の日だ。朝から武闘オーラを中心にしっかりと行う。武闘オーラは2時間を保つ訓練をした。


「マルク様、武闘オーラはほぼ完璧に扱えるようになりましたね」

「ああ。まだ甘い気もするけど」


「そうですね。特に出だしが甘いところがあります。初めの安定するまでをできる限り早く、丁寧に使えれば良いですね。そうすれば完璧です」

「ああ、まあ、マルクのレベルで使える者がこの国にも数人だがな」


「ええ、私がマルクの歳の頃にはここまでは使えませんでしたね。学院時に何とか模擬戦で使える程度、騎士学院時に今のマルクぐらいでした。槍術は私より良いぐらいです」

「兄上」

「マルク、聞いたぞ。猪の魔獣をスキルなしで倒したそうだな。騎士でもそこまでの者は少ない。私もできるが、なかなかに難しい」


「いえ、兄上。あれはアレスたちの協力があってのことです。俺の実力じゃないです」

「そうか、慢心もないんだな。良い心構えだ」

「ありがとうございます。兄上」

「まあ、お怪我をされれば、慢心など程遠いです」

「そうか」


そして恒例の兄上らとの模擬戦だ。まずは兄上と。

「よろしくお願いします。兄上」

「ああ。今日も負けぬぞ」


「今日こそ、勝ってみせます。俺の成長を見せ付けます」

「ふっ、口では幾らでも容易に言える。やってみせろ」


俺も、兄上も武闘オーラを全開で対峙する。もう俺が武闘オーラを使いこなせるため、兄上も武闘オーラを使用しての模擬戦だ。ほぼ2人とも全力だ。死闘ではないため、完全な本気にはならないが。


お互いに半身から、全力の技の掛け合いが続く。間合いの取り合い、仕掛けては引いて、技を出して避けたり、返したり、ほんのコンマ数秒の世界で隙を突く。しかし、お互いにそんな簡単に隙も作らなければ、相手を自由にさせない。時には隙すらフェイントである。


多くの打ち合いで、お互いの腕は所々に赤い跡がつき、少しづつ息が上がってきている。兄上の息遣いを感じられ始めた。俺の集中がトップに入る。ここからが俺の本気中の本気。兄上の息に合わせて、フェイントの切り上げから、槍を半回しで突く。溜めていた武闘オーラを使う。速い突きになった。


兄上は虚を突かれ、胸に一撃を喰らった。何とか槍で致命傷は防ぎ、立ち上がったが、俺は首元に槍先を這わせた。俺の勝ちだ。初めて兄上に勝った。


「うむ。そこまで」

「マルク様、疾駆を使っておりましたね」

「ああ、あれは疾駆だな。マルク。またスキルで飲み込んだか」


「そうですか。多分、飲み込んだと思います。集中力を高め、素早い突きを使った際に自然と使用したようです。まだ意図的には使えません」

「そうか。だがこれで目処は立ったな」

「ええ。そうでございますね」


「マルク、完全に負けたよ。あの突きは凄く良い突きだ。予想だにしなかったから、ついていけなかった」

「まだ、虚を突いただけです。もう一度はできない突きです。また、よろしくお願いします」

「ああ。今度は負けないよう、私もさらなる鍛錬を積もう」


「はい。次の模擬戦を楽しみにしております。突いた場所に回復魔法をかけます」

「ああ、頼む」

兄上に回復魔法をかけた。


「では、マルク様、次はラルク様と模擬戦です」

「ああ」


父上と模擬戦を行う。今までとは違い、硬化と疾駆を父上が使う。撃ち合いに持ち込まれ、何度も撃ち合いをする。技を出しては引き、引いては出す。柄返しや巻き槍で軌道をずらしたりとするが、徐々に父上の一撃が俺の一撃を超え始める。俺の一撃は効いてないが、


俺は父上の一撃で衝撃を受け、体勢を崩し始める。そして数度撃ち合い、負けた。最後は強烈な突きを貰った。強い。まだ、父上とは差が大きい。父の背中はまだ遠い。俺も兄上も。


兄上とゼルの模擬戦後に、ゼルとも模擬戦を行う。兄上はゼル相手に何度も撃ち合いをするが、叶わず負けた。俺も撃ち合いに持ち込むが、捌かれ負けた。まだゼルの技量には程遠い。槍術の頂は少しも見えない。まだ鍛錬あるのみ。


「はい、これで終わりです」

「ああ」

「最後はラルク様とアルフ様の模擬戦です」

「ああ」


「行くぞ。アルフ。夫になるのだ。家族を守る気概を見せろ」

「はい」


父上と兄上の戦いが始まった。その模擬戦は壮絶な撃ち合いだった。兄上は硬化を取得したようだ。俺との一戦では使わないのか。まだ兄上の本気は見せてもらえないか。


兄上と父上の戦いは長期戦となり、父上が貫禄勝ちだった。少しだけ父上が焦っていたくらい兄上は強くなっていた。ゼルのような技術派よりも父上のような剛毅な槍術の方が兄上はやりやすいのだろう。ゼルの技術は壮絶だ。俺はゼルのような槍術を目指さなくてはいけない。


「これで終わりにして御昼食といたしましょう」

「「ああ」」

「父上、兄上、凄い試合でした」


「ああ。硬化をここまで使用したのは久しぶりだな。アルフ、成長したな」

「はい。ですが、まだ父上の背中は遠いようです」

「兄上、硬化を使えるようになったのですね」


「ああ。マルクとの模擬戦で使わず、すまないな」

「いいえ。いつか硬化も使用させた上で勝ちます」

「そうか」

「さあ、リネア様たちがお待ちです。汗を拭き、食堂へ」

「ああ」


俺は一度部屋に戻り、汗を拭き、荷物を持って、食堂に行く。

「遅くなりました」

「マルク、遅い」

「マル君、遅いよ」

「すみません。エルカ姉様、メル姉」

「許す」

「しょうがないね」


「メル姉にはこれを、エルカ姉様にはこれがお土産です」

「可愛いリボン」

「うん、可愛い」

「お揃いの色違いです。お二人に似合うと思い、スピキアーズ領で買いました。喜んでもらえて嬉しい限りです」

「ん」

「嬉しいわ。マル君」


「はい。こちらは義姉上にお土産です」

「え、私もですか。ありがとうございます」

「マルク、すまない。ありがとうな」

「いえ。義姉上に喜んでもらえ嬉しいです」


「髪飾りね。珍しいものだわ。王都やルクレシアス領じゃ見ないものね。可愛いし、いいものだわ」

「ユリア、よかったな。よく似合うぞ」

「はい」

兄上とユリア義姉上の間に甘い空気が漂っている。


「兄様、家でして」

「そうね。アルフ兄、ユリア義姉、ご自宅で甘い雰囲気は出してください」

「そうだな。アルフ。夫婦が仲がいいのはいいが、エルカやメルの言う通り、自宅でするように」

「はい」

「申し訳ありません」


「まあ良い。でアルフ、来月の婚姻式の準備は大丈夫か?」

「はい。済んでおります。招待客は父上の推薦していただいた方は問題ありませんか?」

「ああ。全員参加できるそうだ」

「そうですか。であれば、問題ありません」

「ならよい」


「あと、母上、かのレストランは大丈夫でしょうか?人気店なので、母上に頼んで無理を言ってしまったので」

「大丈夫よ。オーナーが物凄く気合が入っているみたいよ」

「そうですか。であれば全て完璧です」


こうして、お昼を家族団欒で食べ終わった後は、メル姉とエルカ姉様と魔法の訓練とスキルの訓練だ。最近は完全に上級魔法を使えるようになった。家族で俺が一番万能化した。武術も魔法もかなり使える万能な中衛型である。兄上や義姉上が見守る中、メル姉やエルカ姉と魔法の正確性を競う。どちらも2人の方が上であるので、2人の撃ち方を習う。


俺の撃ち方を改良するためだ。より正確に、そして早く撃つ。エルカ姉様は無詠唱を手に入れたようで、自慢げだ。メル姉は連続詠唱が多重詠唱に変わったようだ。数個を一気に的に当てていく。凄いの一言だ。俺は最近、連続詠唱に挑戦中だ。2人ともここに来て、物凄く成長している。


「マルク、見た?無詠唱」

「マル君、多重詠唱よ」

「エルカ姉様、無詠唱ができるようになったのですね。凄いです。メル姉は多重詠唱とは凄い」

「ん」

「でしょう」


「凄いですね。メルさんも、エルカさんも多重詠唱に、無詠唱、マルク君も全属性魔法なんて」

「魔法の才能は俺より、妹、弟たちの方が上だ」

「そうですね。アルフ様。でもマルク君はスキルは?」

「ユリア、内緒だぞ」

「はい」


さらに、俺は回復魔法の訓練をして、今度はスキルの訓練だ。メル姉の魔法を飲む。そしてエルカ姉様の魔法を。どちらもかなり強いが今では何とか2人分を飲み込めるようになった。でも辛い。2人とも強すぎる。手加減を覚えて欲しい。


「大丈夫か、マルク」

「はい。何とか」

「そうか。なら良い。だいぶスキルが伸びて来たな」

「はい。何度も訓練して体がスキルを利用できるところまで来ました。これからです」

「ああ。その意気だな」

こうして訓練を終え、夕食を食べて、兄上らを見送り、学院の準備をして眠りについた。


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