ラルクの帰還
ラルクが辺境伯領より帰還
それから3週間、今日、辺境伯領に行っていたエドワード殿下が帰還されると早馬を飛ばし、一昨日に伝令によって王宮に伝えられたらしい。
このおかげで、昨日から王都はお祭りムードだ。父上が帰ってきたら、戦争のことを聞きたい。俺の訓練の結果を見せたい。色々と話したい。
下が騒がしくなった。父上が帰ってきたのか?
「マルク様、ラルク様が王都に帰ってきて、エドワード殿下と共に王宮に報告をしているとのこと。少ししたらお戻りになられる模様、下にお越しください。メル様、エルカ様もいらっしゃり、リネア様と玄関にてラルク様をお出迎えするとのことです」
「ありがとう、リリア。今行くよ」
メル姉もエルカ姉様も父上のご帰還を祝うために帰ってきたのか。兄上は今日も来ないのか?
まぁ、王太子殿下の警護があるのだろう?戦勝報告の謁見の間に警護として働いているのだろう。姉上らは今日は無理に休暇を取ったのかな。
まあ、ここのところ、宮殿回復士も宮殿魔術師も大忙しだったらしい。何せ、多くのものが戦場に行ったからな。しょうがないのだろう。今日くらい休みなのは周りの方が気を使ったんだな。
「メル姉、エルカ姉様、お久しぶりです。お忙しいようで、お勤めお疲れ様でございましょう。ですがお会いできて嬉しいです」
「久しぶり、マル君。ふふ、マル君もしっかり礼儀作法が板についてきたね。レアから授業を受けているんでしょう。レアから聞いているよ」
「ん。マルク、久しぶり。レアが褒めていた」
「そうですか。ありがとうございます。レア先生には良い授業をしていただいております」
「ん」
「マル君、頑張ってね」
「はい。そうそう、色々とレア先生からお二人の学生時代のことを色々と伺っております」
「!?」
「マル君、何を聞いたのかな?メル姉に教えてくれるかな?」
メル姉の顔が怖い。エルカ姉様は声になってない「ん」だ。
「はい、メル姉とエルカ姉様がどのように学院を過ごしていたか、レア先生と仲良くなったきっかけなどです。レア先生とは学院時代、抜きつ抜かれつと切磋琢磨し、良きライバルだったようで」
「ふ。そうねレアとはそうだわ」
「ん、他に何か聞いた?」
「う!?マル君、どうなの?」
「いえ、お二人の素晴らしき活躍だけです」
「少し、レアを問い詰める必要がある。ことによってはやる。メル、いい?」
「そうだね。エルカ。マル君にある事ない事を言うなど言語道断だよ」
あるんだな。何か言って欲しくない何かが。レア先生ごめんなさい。屍は拾い、ご実家にお届けします。2人の悪魔を解き放つこと、お許しください。
「ほら、そろそろラルクが帰ってくるわ。メル、エルカ、マルク用意なさい」
「「「はい」」」
ガチャッ。ドアが開く。父上だ。
「リネア、メル、エルカ、マルク、ただいま」
「「「お帰りなさい。父上」」」
「お帰りなさい。ラルク」
「ああ。リネア、うちの事をすべて任せてすまない」
「いいのよ。ラルク。私はもう戦場には立たないわ。あなたの側で、あなたの傷を癒してあげる事も、結界で守ってあげる事もできないわ。力を付与することも、あなたの前の敵を討つこともできないのよ。だからラルクが無事戻ってきてくれるなら、このくらい、なんてことないわ」
「そうか。ありがとう、リネア。ゼルもアイナも色々と苦労をかけたな。リリアも他のメイドたちも頑張ってくれたようだな」
「「「はい、ラルク様」」」
「いいえ。ラルク様。ラルク様が無事であるならば、このくらい問題ありませんよ。戦場の方が何倍も大変でしょう」
「ああ。それでもだ。ゼル」
「はあ。ありがとうございます」
「うむ。メル、エルカ、私が戦場にいる間、よく頑張っていたようだな。王宮にて戦勝報告した後に廊下で宮殿魔術師長と宮殿回復士長にあったが、2人を褒めていたぞ。新人とは思えぬほど、よく気が利き、頑張っていたと」
「はい。お父様」
「ん、お父様」
「マルク、どうだ訓練は?頑張っていたか?」
「はい。訓練に励んでおりました。武術は、『飛』を10回に一回程度とまだ精度は低いですが撃てるようになりました」
「何?本当か?」
「ええ」
「それはよく頑張ったな」
「はい。魔法も上級の風魔法が数回成功しました。まだ、安定して撃てるというところではないですが、何とか成功しました」
そう、あの後、一番得意な風魔法が数回成功したんだ。あの時はゼルも母上も一緒に訓練を見ていてくれて。2人と大喜びしたんだ。2人は心から嬉しそうだった。
「本当か?すごいな」
「ふふふ。直接見せて、ラルクを驚かせようって計画だったのに、直ぐに話しちゃうんだから、マルクは可愛いわね」
「母上」
「いや、マルクよ。十分に驚いたぞ。見なくてもマルクができたと言うなら出きたんだろ。お前の努力は十分に知っている」
「ありがとうございます。父上。父上に喜んでもらいたいので必死に頑張りました」
「そうか」
急にメル姉とエルカ姉様がこっちに向かってきた。俺の肩に手をかける。いやメル姉、エルカ姉様、ちょっと手に力を入れすぎじゃない?痛いよ。
「ねえ、マル君、嘘だよね?だって私でさえ、火の上級魔法が撃てるようになったのは10歳になったばかりだったよ」
「ん。エルカもエリアハイヒールができたのは10歳を超えた時、弟が姉に並ぶなんてあってはダメ」
「もう、メル、エルカも嫉妬しない。マルクが信じられないの?」
「マル君は、嘘はつかないよ」
「ん、それはない」
「だったら、祝ってあげなさい。お姉ちゃんでしょ?」
「そうだよね、マル君おめでとう」
「マルク、おめでとう」
「あ、ありがとうございます。メル姉、エルカ姉様。それにまだ成功しただけで安定して撃てるのはまだまだ先です。そうじゃないと誇れるほどではないです」
「そうね。マル君。でも頑張ればできるよ」
「ん。マルクはエルカの弟。できて当たり前」
「まあ、昼食にいたしましょう」
「そうね、ゼル。アイナ、よろしくね」
「はい、ラルク様の帰還を祝いまして、料理長が腕によりをかけて頑張っております。お任せください」
「ああ」
その後、昼食を食べ、色々な話をして、夕食、そして今日はのんびりとした。メル姉とエルカ姉様は夕食後に帰った。俺も喋り疲れたのか直ぐに寝てしまった。
アルフはまた帰ってこない。




