辺境伯領の戦線
父を待つ、マルク君。戦線の結果を聞き、更に頑張る。
あれから3カ月、ようやく帝国は自国に戻ったようだ。
直前に衝突があった。帝国の貴族が堪えきれず、挑発にのり、単独で攻撃を仕掛けたらしい。これに王国側は辺境伯軍が簡単にいなし、捕縛した。
これに帝国は焦って戦闘を開始、右翼の一端を失った帝国は無理攻めとなり、戦線は崩壊した。そのため、これ以上諸侯を失うことを避けるべく、帝国軍はすぐに撤退した。早い撤退だったが、帝国の被害は少なくはなかった。王国は何人かの帝国貴族を捕縛したが帝国国内を攻めずに、辺境伯内に留まったとのことだ。
これが今回の戦闘の結果らしい。ゼルが教えてくれた。
父上も無事で怪我一つもなく、もうすぐ帰るらしい。よかった。そう思ったら、訓練にも力が入る。やっぱり心は大事だ。まだまだ心が弱い。前世みたいに誰かを悲しませたくないから、もっと心を強くしよう。
午前の訓練、槍術の基本六技から始める。丁寧に、一つ一つしっかりと。
次は武闘オーラの訓練、丁寧に『覆』で体に武闘オーラを纏い、『集』で足や手や腹に集め、『凝』で目に集めて木や植物を見て、周りを確認する。『露』で外に出し、『覆』で槍に覆わせる。これを繰り返す。
今度は槍に武闘オーラを纏わせた状態で、基本六技を行う。各技を100回ずつ。そして最後に『飛』の訓練だ。絶え間ぬ訓練とゼルの教えで10回に一回程度はできるようになった。まだまだだが、一歩進んだ。でも、まだ基本ができるかというところだ。
武術家として、まだまだ。基本六技を実践で行え、武闘オーラの基本技を扱え、実践で使えて、初めて、ようやく一人前だ。一流なんて程遠い。一人前すらなれていない。もっと頑張る。
ああ、父上に槍の訓練を見てもらい、褒めてもらえるよう頑張ろう。たまに見せる渋い笑顔で褒められると嬉しい。そしていつか父上を超えてやる。俺が父上の子であると皆が認められるようになる。
午後は、母上と訓練だ。ここのところ、家のことも落ち着いたから訓練に付き合ってくれる。こっちも頑張ろう。俺はまだ上級もできない。
姉上は王立学院に入学前に得意魔法は上級まで撃てたらしい。スキルはそれぞれも得意魔法スキルが7もあったらしい。これは上級魔法を難なく撃てるくらいだ。他のスキルも5か6だったらしい。俺には魔法スキルがないから関係ないが。スキルなしでも魔法は撃てる。俺がそれを証明する。そのためには他の者より魔法を使えないといけない。
母上に上級魔法を見せてもらい、何度も見て、呼吸で吸う。そして自分で試す。上級はやっぱりできない。中々出来ない。どうしても魔法を再現できない。やり続けるしかない。それしか俺にはない。
やってみる。・・・できない。
もう一度試す。・・・できない。
今度こそと心を落ち着かせ、再度やる。
・・・うん。再現できた。後は的に
あっ、的に向かって撃ち込む前に
「惜しいわ。上級魔法を再現できたのに、できた瞬間に集中を切れてしまったわね。相手に撃ち込むまでしっかりと集中することが大事よ」
「ええ。もう少しで何かを完全に掴めそうです。これができれば完全に出来るような気がします」
「ふふ。ラルクが帰ってきた時に驚く顔が見られるかしら。」
「ええ。そう出来るよう頑張ります」
母上も期待してくれている。その後に何度も試みたが、今日はもうできなかった。もっと訓練してればできるはずだ。明日も頑張るしかない。
「夕食の時間ね。もう上がりましょう」
「はい、母上。またよろしくお願いします」
「ええ」
「今日はありがとうございました」
そして夕食の時間だ。
「リネア様、マルク様、ラルク様が帰路に着いたようです」
「そう、もう少しで帰ってくるのね」
母上も心配していたようだ。あんまり、そんな様子は見えなかったが、そうなんだな。
「ええ。母上、無事帰ってこれてよかったですね」
「ラルク様も、2人に心配され嬉しいでしょう。まぁラルク様が無事じゃない姿は想像できないですがね。ふふふ」
「そうね。よかったわ。でも無事じゃないラルクは想像できないわね。大戦の時も自殺願望がある人だと噂されていたのに、本人はけろっとしてたわね」
ゼルも、母上もいい笑顔だ。やっぱり皆が元気で笑っているのがいいなあ。
健気さが滲み出る回になりましたでしょうか?
そう思っていただけていれば、幸いです。




