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真相 使命 マルク・ドンナルナ

そして2日後


俺はまたカインさんと会う。

「カインさん、何かわかったのですか?」

「ええ、ある事がわかりました。学者総動員で、2日徹夜してやっとです。それにエルフの伝承なんかも参考にして」

「徹夜を?」


「ええ、で、わかったのは古代文明の遺跡は神の信託を受ける場所でした。あそこでエルフは神の信託を受けて来たようです。神は最後の信託で、あそこを捨て、エルフに今の場所に行かせたようです。そして彼らを守ったようです」

「そうですか。神があそこで?」


「ええ、さらに、カンバルはあそこで神を化現させ、そこで神になったようです。あそこが前に赤い空を作り出した場所のようです」

「そうですか。だとすると?」

「ええ、あそこの場所を目指していると思います。カンバルの研究所では一度では完全な神になれないと書いていました」


「そうですか。それじゃあ、もう一度あそこで神になる儀式をする気ですかね」

「そうだと思います」

「父上らに報告しましょう」

「ええ」


これらを父上に報告して、世界に発表された。それで、同盟の各国の国民は安心した。そして同盟は最後の準備をしてゾンビたちを迎え撃つ。


「前線は魔道具を持て、魔道具を持たない騎士や冒険者は魔術師たちを守れ」

「「「「「おう」」」」

「よし、十分に引き付けろ。そして魔術師は一気に放て、そして魔道具を持つ者も一気に使え。まだだ、待て」


「私たちの出番だわ。宮廷魔術師や各国の魔術師の力を見せる時よ」

「ん、皆、やる。ここが私たちの勝負所」

「「「「メル様、エルカ様〜」」」」


「冒険者の魔術師共、行くわよ。冒険者も世界を救うんだよ」

「「「「「任せろ、シンディー」」」」」


「おい、獣人族の魔術師たち、冒険者たち、この私、冒険者協会会長を信じな。あんたちは十分にできるよ。獣人族が魔法を使えない?そんな時代は終わったよ。マルク殿が変えてくれた。その未来を守るよ」

「「「「会長、任せろ」」」」


そして、ゾンビたちが俺らの前まで来た。魔術師たちは一斉に魔法を放つ。

『『『『『『『『浄化』』』』』』』


一斉に浄化が放たれてる。ゾンビたちに当たると、ゾンビらは急に苦しみだす。体が溶け始め、徐々に消えてゆく。ゾンビらは悲鳴もあげずに動かなくなり、溶け消えて行く。人らの積み重ねがゾンビらを消して行く。


「ハマったな。マルクとルーナがよく開発していてくれた。狙いは違ったが、準備をしていて助かったな」

「ああ、呪いを解くためだったが、それをこんな形で使えるとは思いもせんかった」

「ああ、ガルド、もう戻れ。これだけ見ればいいだろう?」


「ふん、戦えなくても、この老いぼれが最後までここにいることの意味もあろう。この世界の最後の戦いだ。儂はそれを見守りたいのだ」

「そうか。危ない時はどっかで隠れろ。俺は出る」


「ふん、トルネストとの戦いで、体は辛かろうに。完全には回復してないのだろう?」

「ふん。お前がわかるのか?」


「腐れ縁を舐めるな。お前が辛い時くらいはわかる。それでも子供たちに任せるだけとはできないのだろう」

「そうか。腐れ縁もここまでくると、それすら愛おしいな」

「お前らしくない」

「そうか」


そして、ゾンビの第一陣が消えるとまたゾンビたちが殺到して来た。今度は

「よし、騎士たちよ。魔道具を持つものは撃て」


今度は魔道具が発動する。一気にゾンビたちに浄化が降り注ぐ。そしてまた第2陣のゾンビたちは消えて行く。


しかし、また第3陣が来る。いつまでゾンビが来るのかわからない。それでも負けられない。俺らは多くの命を、多くの思いを背負っている。それを皆がわかっている。終わらない戦いだろうと、俺らは諦めない。同盟軍からはため息も、泣き言も聴こえてこない。


今度はまた魔術師が撃つ。そして第3陣のゾンビが消えて行く。そしてまたゾンビが出てくる。騎士が今度は前に出る。魔道具を使い果たした。ここからは殺すしかない。かなりの数を消してくれたんだ。ここからは俺らがやる。


右翼、中央、左翼の各軍で、ジュライ先輩、ジンダ先輩、ラックス先輩、リックス先輩、クリス先輩、カリウス義兄上、ヨークス、ルーイ、マーク、アレス、ケビンらレオナルク王国の騎士団や領主軍、サンゼル、カット、リッキーら冒険者たち、ガイス師匠やカレスさんらドワーフ軍、ガッソさんらエルフ軍、有角族、ガイアスら獣人族、その他少数種族やレオミラン王国軍、元勇者の山本里奈、市川舞らが前に出る。


そして、一人一人が命をかけて戦う。皆、ゾンビにビビることなく、ただ前の敵を殺して行く。死んだものらをもう一度あの世に返すように。第4陣を倒し終えた。


そんな中、世界に響く声がする。


「儂はカンバルだ。世界を変える救世主にして、創造神である。この世界に生きるものよ。お前らはもう終わりだ。この狂った世界は儂が作り変える。

 誰も傷つかない、誰も否定されない、儂の元で皆が等しく、平等に生きる世界だ。全ては儂が管理してやる。だから死ぬのだ。そして新たな生命として生まれ変われ。そこには生きることのみを目的としたユートピアだ」


クソ野郎の演説は続く。


「そして、誰しもが愛し合う世界だ。種族などのない世界だ。皆が等しく同じ世界だ。儂以外は誰しも違いはない。顔も形も同じ、それなら差別も、格差もない。あるのは生きることだけだ。

 お前らはただ生きるだけで良い。この世界を生きるだけだ。それこそが平等になれる世界だ。儂はその世界の神になる」


「そして、そのために死んだ者らを儂は褒め称えよう。さぁ、我らの新たな世界のために死ぬが良い。世界の再誕のためにその命を捧げよ。世界は今日、生まれ変わる」


本当に狂ってる。こいつはダメだ。最悪だ。


「何故死なぬ。この世界が狂うが故に、この世界にある差別や違いに苦しんだ者もおろう。ならば、それらのない世界を作ろうではないか?儂が作ってやるぞ」


誰も死ぬはずない。そんな世界などくそくらえだ。


「どうした。もうすでに、新たな世界の再誕のために死んだ者らがいるぞ。勇者の赤井直樹、エルフのレキシナ、聖国の枢機卿クロ・ダリエ、レオナルク王国の元魔術師マルク・トルネストらだ。これらの者は儂が作る世界のために死んだ。自身の命を捧げ、そしてこの世界の再誕を願った」


「何を。直樹」

「直樹」


「うん?声が聞こえたな。儂は世界の神だ。世界の民の声を聞く素晴らしき神だからな。どこぞの神とは違う。一方的に言葉を伝え、世界を狂わす神とは違うのだ。どうだ、言ってみよ」

「くそったれ。直樹が世界のために死ぬはずないでしょ」


「そんな男じゃない。あんたが殺したんだろ。クソ野郎」

「ふははは。お前らは勇者と一緒に来た役ただずか。まぁいい。儂が死ぬ機会を与えた者らだ。ではその時の様子を見せてやろう。神だからな、こんなこともできる」


そして、空の上に急に映像が映る。それに全ての者が目を奪われる。その映像には、クロ、赤井、佐藤、レキシナの意識を入れた怪物、マルク・トルネストだった怪物が闇の穴の前に立つ姿が見える。


「おい、クロ、本当にあいつに勝てるようになんのか?」

「ええ、できますよ。これであいつらを殺せます」


「そうか。あの野郎を殺さねえと気が済まねえ。あの野郎だけは」

「bずいあhdhd、あ」


「・・・」

クロが穴の中に御神体を入れた。心臓のような形だ。それが闇の穴の中へ。そして、ついで、クロは赤井を闇の中へ突き落とした。


「な。てめえ」

「ははは。貴方は神の元へ行くのです。さぁ、これで幸せになれます。神と共になるのです。幸せでしょう。貴方が願ったマルク・ドンナルナを倒すのも神がしてくれます。これで願いが叶いますよ」


「ふざんけん〜」

「ふふ。では次は貴方です」


と、レキシナの意識を一部入れた怪物と、マルク・トルネストだった怪物が闇の穴の中へ突き落とされる。


「ふははは。これで神が化現します。佐藤良太、さあ、行きましょう」

「お前だけな」


「な?」

クロは突き落とされた。佐藤は笑みを浮かべて穴を覗き込む。


「さあ、カンバル様、化現のご準備は整いました。どうぞそのお姿をお見せください」

そして闇の穴は光輝く、赤く、世界を染めるかのように、赤く光輝く。その光がやんだとき、世界にそいつは現れた。


「ああ、良太よ。よくやった。これで世界を変えられる。我が世界を共に作ろう」

「ええ、勇者として、貴方様の願いを叶えました。これからこの世界は貴方様の世界でございます。家も、金も全て関係ない、誰にも否定されない世界をお願いします」


「ああ、儂が作ろう」

「ええ」


そして、映像は終わる。多くの者がこいつらは狂っていると思った。

「どこが、直樹が願ったのよ」

「そう」


「ははは。願ったであろう。マルク・ドンナルナを倒したいと。あやつでは倒せん。勇者の劣化版ではな。だが、奴が使えてない力、輪廻の力は儂に必要だった。だから儂の力にした。この力があれば儂は最高の存在になれる」


俺はその力が疑問に思った。

「輪廻の力?」

「まぁ、下等なお前らにも教えよう。輪廻の力とは、死んだ全ての生物を新たな生命に作り変える力だ。この力がないと神とは言えぬ。だから奴から奪ったのだ」


「そんな力が」

「ああ、神だった者が隠した力だ。まぁ召喚としてしか普通の人間には使えんがな」


やっぱり、こいつは神になり切れていない。神の力をまだ欲している。俺の力も。


「それがお前の狙いか」

「ああ、そしてそこの神殿がな」


「そうか。ならばそれをこの世界に生きる全てで潰してやる」

「ははは。お前らごとき下等生物がか?」


「そうだ」

「ははは。ならもらおう。お前らの命も。そして、マルク・ドンナルナよ。お主の力を奪ってな」


そうか。やっぱりそうか。そして映像も声も終わった。


「隊長。今のは?」

「ああ、多分だが、俺のスキル『飲み込む』も本物の神が唯一与えたスキルなんだろう。だから前に聖国は俺を引き渡せと言ってきた。そして赤井同様に俺のスキルをカンバルは狙っているんだろう」


「な」

「マルク、前に出るな。俺らが守る」


「リオル先輩、それはできません。俺はこの世界を守りたい。そして大事な人を救いたい。だからその判断はできない」

「お前、それじゃあ、お前の命を的にするっていうことだぞ」


「ええ、俺を狙ってくるなら、俺が奴を殺す。そして世界を守る。先輩、俺は死にませんよ」

「でも」


父上がこっちに来た。

「マルク」

「父上」

「お前は前には」


「それ以上は言わないでください。それは将軍の言葉じゃない。ここで勝つには俺の力が必要なはずです。英雄の力が」

「だが・・・」


「いいのです。恐くないとは言えない。でも勝たなくてはいけないんです。それが俺の使命です。このスキルを持った俺の使命です」

「お前ばかりが」


「違います。皆が使命を持っているのです。たまたま、俺の使命は辛く見えるだけです」

「そうか」


「みんな、聞いてくれ。心配しているんだろう?でも俺は負けない。これまでも、これからも、どんな困難も俺は乗り越えてきたし、乗り越えていく。だから力を貸してくれ。俺一人じゃ無理かもしれない。だから力を」

そこから、『うん』と全てから聞こえるように多くの人が頷いた。


俺らは次のゾンビの群れが来るのを待っていた。しかし、その日はもう来なかった。それだけだとは思えない。だが、来なかったのは理由があるのだろうか?


聖国がマルクを差し出せと言ってきた件は学院編の理論発表後くらいにあるはずです。この振りを長く引っ張りやっと使えました。もう少しでこの作品も終わりです、最後までお付き合いください。

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