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帰還と問題

戦いの1ヶ月後


一報は聖国で大虐殺が起きたことだっだ。その一報を聞いた時、レオサード領の要塞では、驚きが広まった。


「何があった?」

「落ち着いてください。アルフ将軍」

「ああ、すまぬ。魔族の仕業か?」


「いえ、ダークエルフと勇者だそうです」

「な、何?」


「驚くのはわかります。何故、このタイミングかを王宮もわかっておりません」

「そうか、すまぬ。伝令、ご苦労」

「はっ」

伝令が下がった。アルフは顔を顰めている。


「ハンニバル殿、会議室に獣人族国家の代表と連合軍の代表、マルク、リットを集めてくれ」

「はっ」


「レオサード子爵、会議をして、状況次第では解散をする」

「はっ」


「何が起きている」

と、アルフの執務室は声が響いていた。マルクは呼ばれて、会議室に行った。


「すまぬ。皆集まってもらい申し訳ない。一報を聞いただろう?聖国が消えた。やったのはダークエルフと勇者だ。正直に言えば、何が起きているかわからない。皆の意見を聞きたい」

「「「「はっ」」」」

兄上は将軍らしくなった。その貫禄に皆が引っ張られる。


「まずはハンニバル殿、もう一度状況を説明してくれ」


「はっ。まずは我々が魔族との戦線を開いている間に、王宮は密偵を聖国に入れました。あの国がどう動くか?それ以上にダークエルフたちがどうなっているかを知るためです。

ですが、状況が掴めないまま、時は流れたそうです。それが急に状況が変わったそうです。勇者が聖都に現れ、いきなり人民を皆殺しにして行ったとのこと。密偵は危険を感じ、勇者が現れたのと同時に聖都を出て、遠くから様子を見ていたとのことです。ですが、ダークエルフに見つかり、聖国を出て王国に戻って来たようです」


「そういうことだ。皆、これからのことだが、まずは状況を知りたい。まずは解散して、一度各国に戻り状況を確認してから集まるべきと思う。どうだろうか?」


「ええ、状況が混沌としていて、どこを守ればいいかがはっきりしないですね。ここは国に戻り、英気を養うことも必要です」

「そうか、獣人族はそういう意見か」


「ええ」

「それは同意する」

「はい、ありがとうございます」


「私たちも同じです。特に我ら小国家群は小さい、しかもレオミラン王国があるとはいえ、聖国に近い、この状況下では厳しい状況です。敵が分かりにくい状況では国の守りもしなくていけない」


「そうだろうな。それは配慮すべきだ」

「ありがとうございます」


「うむ。マルク、リットはどうだ」

「はっ、では私から。王国も辺境伯側の守衛を増やすかこちら側を維持するかを考え直す必要があります。ここは解散がいいと思います。そろそろ、騎士団長から話が来ると思います」


「そうか。わかった」

「はっ」


「マルクは?」

「はい。私も戻るべきかと。状況が複雑な中、ここで皆さんを留まらせるのは良く無い。特に小国家国家群や商業都市国家群の人々は決して聖国とは遠い国ではないですから」


「よし、わかった。一度解散する。再度集まる時期はおって連絡する。有角族領の要塞は有角族をレオサード領の要塞には王国軍が駐留する」

「「「「はっ」」」」


皆が出て行く。


「兄上、少しお話が」

「うん?何だ?」

「はっ、ハンニバル様とリット騎士団副団長にもお集まりいただき、執務室で」

「そうか、わかった」


そして、リット騎士団副団長、ハンニバル様と兄上と俺で執務室に

「あの場では言えなかったのですが、私はダークエルフが魔族とくっついている可能性を考えるべきかと」

「な。それは」


「ええ、突拍子も無い話に思えますが、タイミングがあまりにもいい。魔族が同盟を倒せればよし、そうでなければ第2案として聖国を蹂躙して、御神体の供物を得るというような考えに思えます」

「な。もしそうなら、それはマズイな。王国の権威を損なう」


「ええ、それは申し訳ないと謝るべきです。あとでわかるよりは先に申し上げるべきかと。ただ状況が状況なので、上の判断を仰ぐべきです。それにこの状況では魔族の攻め自体が囮とは思わないでしょう」

「確かに、そうだな」


「ええ、ただあくまで可能性です。それが正しいかは情報が少ない」

「そうですね。まぁ、十分に検討すべき話です。王宮に帰り次第、兄上やラルク様らに話をしましょう」

「ああ」


「しかし、よくそこまで考えられますな」

「リット騎士団副団長、もともと、それを念頭に置いていたのです。どうにもダークエルフの動きが不可思議なので、こういう展開すら考えておく必要があると。ただ、何も証拠も無い。むしろそうじゃ無い可能性が高いので、誰にも言ってませんが」


「そうですか。感服しました」

「しかし、何故、月夜神を敬う魔族と、天神を敬うダークエルフが?」

「そうですね。それが謎ですね」


「私は報告書にあげましたレキシナとカンバルという者が関係するのではと思います」

「?レキシナという者は、数千年前のエルフだったのだろう?」


「ええ、そうです。ただ、エルフが言っていたことがどうにも引っかかるんです。何でレキシナとカンバルがキーと言ったのか?」

「確かにそう言われるとそう思えますね」


「ああ、それも王宮に戻り報告しよう。もしそうだとわかったなら早めに他国に言わなくては信頼を失うな」

「ええ、そうですね。これはガルド様や陛下のご判断になるでしょう」


「ああ、そうだろう。マルク、わかった。報告ご苦労」

「はっ」

そして俺ら第00小隊は王都に戻る。




4日後


俺らは王都に帰ってきた。一度宿舎にて解散した後、俺は王宮に行く。俺が帰ってきたら、俺らは飲み会をすることになった。そして俺は宿舎で荷物を置き、一汗を流してから、王宮に行く。王宮の前で兄上やハンニバル様らと合流して、騎士団長の執務室へ。


「失礼します」

「ああ、入れ」

ガルド様とコーネリアス様もいる。


「本日、王都に戻ってまいりました」

「ああ、アルフ、マルク、ハンニバル、リット、ご苦労」

「ありがとうございます」


「うむ、アルフよ。報告を頼む」

「はっ。ガルド様。では報告します。この度の戦場では・・・・・」

兄上が戦果の報告をして行く。


「うむ。素晴らしい結果だ」

「ありがたき幸せ」


「マルクも、ハンニバルも良くやった」

「「はっ、ありがたき幸せ」」


「で、同盟軍は解散したのだな?」

「はっ。聖国の事があった以上、これ以上同盟各国の軍を駐留させられないと判断して解散しました」

「うむ。良き判断だ。小国家国家群などは自国が心配であろう」


「はい。そう言っておりました」

「そうか。意見も聞いた上での解散を判断したか。良い判断だ」

「ありがたき幸せ」

「うむ」


「もう一つ報告したきことがあります。マルク」

「はっ。此度の聖国の件、ダークエルフと魔族につながりがあるのではと思います。まるで計ったかのように、魔族が退却するのを待ってからのこと、どうにも不可思議であります」


「な、待て」

「ああ。マルク、これまで主神を争い、戦をしてきたことがおかしくなる。まるで脚本でやっていたということになるぞ」


「ええ、そうも考えられますが、それ以上に御神体が関係するのでは?」

「な、それは」


「おい、それでは王国の失墜につながる」

「ええ、ですから、状況を把握する必要があります。御神体の供物を集めるために王国を攻め、それが不可能となり、聖国で大虐殺をしたというのは納得がいく部分といかない部分があるかと」


「ああ、それだとどちらの神を化現させるというのだ?」

「ええ、それがおかしくなるかと。しかし、それが同一ならば?」

「な。何を」

「それは」


「全くの推論です。ただ、エルフが言っていたレキシナとカンバルがこれに関係し、その二人の子が神とか?だとすると、両者が手を結ぶのは不思議ではないと思います」

「な、な、暴論ではないか?」


「いえ、可能性だけなら十分にありますねえ。ラルク様、ガルド様」

「そうか。可能性はある。それが1%でもあったなら探るべきだな。そうしないとマズイぞ」

「ああ、そうか。取り乱した。たしかにそうだな」


「はい。と思いまして報告に同行しました。推論で申し訳ありません」

「いや、いい。コーネリアス、お前もそれは考えていたのではないか?」

「はい。ただ、何せ根拠はないですからね」

「そうだな」


「あと、もう一つ報告があります」

「もう一つ?」

「はい」


「うむ。何だ?」

「はい。魔族に軍師の存在を感じました」

「魔族にか?アルフ、それは何故だ?」


「はっ。魔族には今まで策らしい策というのは聞いたことがないですが、初日にいきなり策を弄されました」

「初日、策を。魔族が策を弄するだけでも珍しいが、それも初日にか」

「はい。その策が山からの風を装い毒混じりの風を使ってきたのです」


「なんともらしくない。帝国や聖国がしたというならわかるが、そうじゃないと変だな」

「はい。だとすると、考えられるのは人族の軍師がいるような気がします」


「確かに、人族の軍師がいる可能性がある。ハンニバル、現場で見たのだろう?」

「はい」


「じゃあ、ハンニバル、それを元に誰かわかったかい?」

「ええ、何とく知っているものならば、3名を思いましたが、どれもありえません。兄上」

「ちなみに誰かな?」


「ええ、一人はシグルソン顧問、もう一人はロドメルさん、もう一人がマルク・トルネストさんですね」

「な」

「ありえないね。シグルソン教官は辺境伯領で待機していた。ロドメルさんは学院にいたし、トルネストは死んだよ。私も、ラルク様も見たね」


「そうですよね。だとすると知らない者になりますが、どうにもあんな戦術の幅が広い者がそう簡単にいるのですかね?」

「そう、戦術幅が広いか。そうはいると思えないよね」

「はい。兄上」


「だが、コーネリアス、ハンニバル、マルクはないぞ」

「ガルド、マルクと呼ぶな。息子と間違う」

「すまん。トルネストか。あいつは死んだ。それ以外は王国にいる。ありえん」


「ただ、確か顔や手など体のほとんどが潰れて誰か判別不能でしたはず。判明したのは身につけていた者のみでは?」

「な?」


「ええ、そうでしたね。確かにハンニバルの言う通り、遺体からは判別できなかったですよ」

「そうか。もしそうなら、ルーナは」


「傷つくでしょうし、何より最近、トルネストを名乗っています。それが今更、トルネストがいたら、どうなるでしょうか?」

「ああ、これはマズイ」


「ああ、それなら、対策しないとマズイな」

「もしそうなら、洗脳か、偽物とすれば?」


兄上がそう言った。それしかないと思う。しかし、それではルーナが・・・。


「そうでしょうね。それしかないでしょうね」

「ふむ。そうするしかなかろう。今日は狼狽えることばかりだ」


「わしらも年を取ったということだ」

「ああ、そうだな。まぁ、後継者が育っているだけ、良いかの」

「ああ」


「ガルド様、それにこれはあくまで可能性です。帝国にもしかしたらそう言った者がいて、その者が行った可能性もありえます」

「そうだな」

と、話し合いは終わった。そのあと、コーネリアス様と話をした。


「コーネリアス様はマルク・トルネスト氏を知っているんですか?」


「ええ、同期でね。私とアルフォンス・フォン・スピキアーズとトルネストで学院時代は一緒にいましたね。私は途中で休学しましたけどね。当時は一つ上にラルク様や陛下、ガルド様がいて、三英雄と呼ばれていてね。それにつられて私たちも三天才と呼ばれたものです。

アルフォンスはまさに知の天才でね。特に経営や商売はもう天才でした。それに対して、トルネストは何でもできたんですよ。本人は魔法を好んでいましたけど、剣も、戦術も全てできましたね。良く学問ではアルフォンスと、戦術では私と競っていましたよ。

時に戦術に関してはまぁ、何というか、戦術幅が広くてね。ロドメルさんと良く似た戦術でした。予想しない手を討つのが困りました。ハンニバルとは遊びながら競ってましたから、覚えていたのでしょう」


「そうですか。それで、ハンニバル様は」

「ええ、まぁ、シグルソン顧問もまあ、戦術幅が広くて困らせられましたね。特に得意な戦術があったので、また別ですが」


「そうですか」

こうして俺は話は終わると、隊のみんなが待つ宿舎に行き、その後はシューガルトで打ち上げをした。明日から2日間お休みとなる。


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