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ドンナルナ辺境伯

親戚の登場です。

5日後

例の集まりの翌日から訓練と勉強の毎日が始まった。ゼルと朝から訓練、午後は母上と訓練もしくは家庭教師の先生やリリアから獣人国の言葉を習う毎日を続けていく。毎日忙しい。


しかし、兄上は大丈夫だろうか。あの父上の言葉、王太子殿下から何か言われていなかっただろうか?王太子の不興を買っていないだろうか?そう心配してしまう。

俺のせいだしな。兄上は帰ってこないのだろうか?


そんなことを考えながら、毎日を訓練に明け暮れていた。


そんな中、父上の休日に思わぬ人が訪れた。ドンナルナ辺境伯家の当主、ルイン・フォン・ドンナルナ辺境伯様だ。

俺とはいとこにあたる。19歳も年上だけどね。ちなみに父上に、2年前くらいに聞いた話だと、父上の兄であるルバン様は父上より12歳も上で、父上が10歳の時にルイン様が生まれたらしい。(父上は今39歳)だから、ルイン様は父上にとって甥というより弟でまぁまぁ仲がいいらしい。叔父上の代の時は本家とは仲が良くなかったが、叔父上が数年前に亡くなって、ルイン様が継いだ後は、本家とは上手くいっているようだ。


「やあ、ラルク兄様、今日はお忙しい仲、突然のお伺い、すみません」

「あぁ、問題ない。ルイン。いやドンナルナ辺境伯様」

「ラルク兄様、あまりいじめないでください。リネア姉様もお元気そうで」

「ええ。ルイン様も元気そうで」

「はは、リネア姉様は変わらずお美しい」


「ふふ。そんなことを言ってくれるのはラルクとルインだけだわ」

「そうではありません。姉様。皆、そう思っても言うのも失礼と思うのです。私も1人身ならば、その美しさに・・・」

「奥方に言いますよ」

「姉様、それは」

「冗談よ」


「はあ、勘弁してほしいですね。ゼルも、アイナも元気そうだね。」

「ええ、ドンナルナ辺境伯様につきましては、もうすっかり辺境伯として、板についたご様子、先先代もご安心でしょう」

「やめてくれよ、ゼル。お爺様を出されると困るよ。それに昔みたいにルインでいいよ」

「辺境伯様は変わりませんね」

「アイナ、そういじめないで」


「ふ、ルインよ。先日はマルクに挨拶もさせずに帰ってしまったな。すまんな。マルク」

「ドンナルナ辺境伯様、お久しぶりです。ラルク・フォン・ドンナルナの次男、マルク・ドンナルナでございます」

「やあ、久しぶりだね。マルク、辺境伯はやめてね。ルインでいいよ」

「はい。先日はすみません。ルドルフ様にご恥をかかせてしまい」

「いいよ。あれはあいつが悪い」

「そうでございますか。でも再度謝罪を」


「ああ。わかったよ。マルク。そうそう、ラルク兄様、アルフも王太子殿下の近衛隊に選ばれたようで親類の当家も嬉しい限りです。兄様も鼻が高いでしょう?」

「辺境伯様、その話は」

「いいのよ。アイナ」


「あれ、何かありましたか?」

「少しな。そんなことより、今日はどうした?」

「ああ、ルドルフが失礼をしまして、謝罪をと。あと、兄様にお話しておきたいことが」

「ふむ。ルドルフの件は気にしておらぬ。マルクもああ言っている。こちらこそ、マルクはあういう場が不慣れでな。申し訳ないな」


「いいえ。ラルク兄様。あれはルドルフが圧倒的に悪い。あんな場で自分の名乗りにフォンをつけるなど、マルクがああ言ってくれなくば当家がマズイことになっておりました。しかし、兄上は素晴らしい教育をなされいる。メルもエルカも評判になっております」

「メルもエルカもお転婆でな。少し困っているよ」

「ははは」


「笑われちゃったわね。今度、2人にちゃんと言っておかなきゃね」

「まあまあ。姉様」

「ふふ冗談よ」

「リネアよ、冗談に聞こえないぞ。それより、俺に伝えておかなくてはいけない事とは?」


「はい。実は公爵家から嫡男のライルに婚姻の話がありまして」

「公爵が?うむ。裏がありそうだ」

「ええ、貴族派が何か企んでいるんじゃないかと思っております。それに付随して、帝国側に何か動きがありそうなのです」

「帝国にか?」


「ええ、ここからは秘密にしていただきたいのですが」

「うむ。マルク。部屋に戻りなさい。アイナ、リネア、席を外してくれ」

「はい。父上」

「ええ、ラルク」

「はい。ラルク様」

俺と母上、アイナは客間を出た。



マルクらは出て行き、ゼルとラルクとルインだけになった。

「実は、皇帝が亡くなったようです」

「何?本当か?」

「ええ。ラルク兄様は知りませんでしたか。では王宮も知りませんね」

「ああ。多分な。いつだ」

「先月の終わりのようです。私もこちらに来る前に聞きまして」


「そうか、いち早く教えてくれて助かった。宰相と軍務大臣には伝えておこう」

「ええ。お願いします。どうやら皇太子が継ぐようですが、どうも第2皇子が不穏な雰囲気なのです」

「何!それは」

「ええ、公爵家は確か、前王妃の出身家の帝国侯爵と仲よくしているはず」

「そうだな。それが公爵家の動きと関係ありそうだ」


「ええですから、公爵家に目の敵にされておられるラルク兄様には伝えておこうと思いまして」

「わざわざ、すまぬな」

「いいえ、うちのライルが来年から学院に通う際には、兄様のご家族には何かと妻共々ご迷惑をおかけしますので。これくらい、領に帰る前によるだけですから」


「ふ。俺の休みに合わせてくれたのだろう。そういう気遣いは昔からよくできるからな」

「それでは、気遣いだけのようではないですか」

「そうではないさ。もう立派な辺境伯をしている」


「兄様に言われると嬉しい限りです。そうそう、マルクは優秀ですね。先日の話も。今日の私の話にも挨拶以降は口も挟まずに熱心に聞いているあたり、どこぞの貴族当主より優れているようですね」


「ふふ。お前も噂を聞いたか?」

「ええ。でも昨前に会った時も少ししか話す機会がありませんでしたし、それ位以前ですと数年前に会った以来です。とは言え、私が知る限りでは無能には思えぬので、訝しんでおりました」

「そうか、で一年ぶりに会ってしっかりと話したら違ったか」

「はい。スキルだけが全てではないと」

ルインは感嘆したように、納得したように頷く。


「ああ。マルクは努力家でな。スキルがない分、努力を重ねている」

「ふふふ。兄様の子らしいですね」

「あぁ」

「祖父上によく聞いておりました。兄様は兎角才能がないように見えたと。でも一番才能があったと。あやつの負けず嫌いは才能だ。あれほど心の強い子も珍しいと。兄様に似たのでしょう。」

「俺の場合は横におる師匠が良かったのだ」

ラルクはゼルをチラッと見る。ルインは少し笑いながらそれに答える。


「ふふふ、ではマルクもきっとすごくなるでしょう」

「ゼルが長生きすればな」

「人を年寄り扱いはやめていただきたい」

「まぁまぁ、ゼル。ゼルは若いよ」

「ルイン様に免じて許しましょう」

「え?私も怒られる予定だったの」

ルインが驚いた顔をしているがゼルは含んだ笑顔をしており本心が読み取れない。それを無視してラルクはゼルに声をかける。


「ゼル、そろそろ、リネアらを呼び戻してくれ」

「ええ」

「ゼル、よろしくね」

「はい」

「最後に兄様、公爵は王太子殿下にも近づいているようです。お気をつけを」

「わかった」

ゼルが部屋を出てマルクらを呼びに行く。



俺は部屋にいたが、ゼルが呼びに来てくれた。客間に向かう途中に母上らと合流して、客間に入った。

「ルイン様、父上、戻りました」

「うむ」

「やあ、さっきぶりだね。ルイン叔父上くらいでいいよ。マルク君」

「ルイン叔父上」


「ふふ。うん。それで」

「ルインよ、叔父ではなく従兄弟だがな」

「そうだね。僕とマルクは従兄弟だね。そうすると、ますますルドルフは失礼だね」

「ルイン様、教育しがいがありますね」


「ゼル、悪かったよ。そういじめないで。ライルの教育で手一杯で、ルドルフまで手が回らなかったんだ。ほら遠縁の分家と家臣の阿保に乗せられちゃったんだよ」

「ああ。あれらはすぐ調子に乗ります。お気をつけを」

「ゼル、顔が怖いよ」


「そうだな。俺も嫌いだが、ゼルよ、そう怖い顔をするな」

「まぁ、そろそろお暇するよ。兄様も、姉様も、マルクも元気でね」

「ああ、ルインも元気でな」

「ええ兄様」


「ルイン、親類なんだから、いつでも義姉の私を頼っていいのよ。来年には奥方がライルを連れてこっちに来るんでしょ?よろしく伝えてね」

「はい、姉様」

「ルイン叔父上、またお会いできるのを楽しみにしております」

「ああ、従兄弟殿」

「ふふふ。ドンナルナ辺境伯様、こちら、王都で流行っております。土産でございます。奥方様とライル様とリア様に」

「ありがとう。アイナ」

「道中お気をつけを」

「ああ、ゼル。では皆様、失礼します」


ルインはいかがでしょうか?

私としてはこれまでにいないいいキャラだと思っています。

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