試験後に本格的にダンジョン
試験期間から4週間後
合宿まで2週間の8月の初め。俺は王都居住組のルーナとヨークスとルーイの4人と集団戦闘研究会のエメリーと5人でダンジョンに潜っている。試験期間中に冒険者が集められ、先日にダンジョンを攻略をして、魔獣を減らした。
これで溜まったエネルギーが使われて、氾濫はないということで、ダンジョンに入れることになった。今日は2日目。あと3日でダンジョンを出る。ここまで何回かに分け、7階、8階とマッピングして来た。
昨日、今日とかなり進み、9階に辿り着いた。9階は結構でかく、小型狼とうさぎの魔獣がいる。うさぎの魔獣は小型狼の餌だ。小型狼の群れは正直いえば結構大変だ。
大体5、6匹らしい。森では3匹だから行けたが、5、6匹は気をつけないと厳しい。リオル先輩らもここからは気をつけていくと言っていた。
入ると、入り口付近にセーフティゾーンがあり、休憩する。3時間後に出発だ。
「よし、休もう。3時間休憩だ」
「ああ、ヨークス、ご飯を用意しよう」
鍋を用意する。そこに水魔法を入れ、4階の植物エリアの木を使い、火を起こす。そこに保存食を入れ、スパイス類を足して、煮込んで食べる。このダンジョンならではの食べ方だ。
俺たちはマジックポーチを持っている。マジックポーチは宮廷魔術師の研究所でメル姉とエルカ姉様が作った、『エクステンション ボーダー』という魔法を付与したマジックポーチだ。結界魔法の応用でポーチ内に結界を張った空間を付与する。
これでポーチの中に別空間がある状態を作り、実際より入るポーチの出来上がりだ。それを俺らはあの魔道具屋経由で買って持っている。俺の割引が入った。普通のポーチの倍くらいの値段で買える。本当は数十倍だからかなり安い。俺への利益を返せてない、あの魔道具屋が気合を入れて用意した品物だ。
こうして、休憩をして食事をして、セーフティゾーンを出る。かなり広い空間をマッピングしながら進む。これも訓練なので時間をかけて進む。出た。小型狼だ。計5匹。まあまあの数だ。
気を引き締めていこう。
「マルク、俺とルーイが前衛で奴らを引きつける。もし、隠密で狙う奴がいたらそいつを頼む。エメリーとルーナは俺らが惹きつけた奴らを2匹倒してくれ。残りはルーイが一匹倒したら、残りは俺がいく。もし隠密がいなかったら、マルクもルーナたちと一匹倒してくれ」
「ああ。わかった」
「ええ、大丈夫です」
「ええ。大丈夫よ」
「いくぞ」
ヨークス集団指揮というスキルを使い、みなの士気をあげるとともに、自分が見た情報を共有できるようにして、敵に突っ込んでいく。ルーイも奴らを引きつける。よし前衛がうまくいった。
ただ、4匹しかいない。やっぱり一匹は隠密だ。こいつらいつも一匹隠密をする。定番か。テンプレか。
いた。あそこの影だ。そこで息を忍ばせ、ルーナたちを狙っている。
「ルーナ、エメリー、あそこに隠密がいる。2人を狙っている。俺がいくが、気をつけて」
「「ええ」」
あいつは一撃だ。武闘オーラと疾駆を使い突く。死んだ。串刺しにした。すると、あっちも動いた。ルーナが魔法で、エメリーが矢で狼を倒した。
その後にルーイがアクセラレーションの進化『超加速』と『完全停止』を使い、いきなりの超速の加速とそこからのストップは相手を驚かせ、隙を作る。慣性の法則を全く無視したスキルだ。
そこから切りつけて倒した。そしてヨークスがグラビティソードで一匹を倒した。最近、グラビティソードの派生スキル、『重量増加』で守備が強くなったヨークスは前衛としてかなり万能だ。
危なげなく、進む。数が10を超えるとかでなければ、そんなに危なくはない。でも気を抜いていい相手ではない。
それから何度も小型狼を倒し、少しマッピングも進んだので、セーフティゾーンに戻って来た。皆が位階酔いしたからだ。流石に小型狼を1人当たり5匹も倒せば位階酔いをする。俺はしない。多分、位階が高いようだ。あの時のが真実味を帯びて来た。
「みんな、位階酔いはどう?」
「ええ、辛いわ。数時間は休憩しましょう」
「ええ」
「ああ」
「飯を作っとくから休んで」
「「ああ」」
「「ええ」」
数時間して、
「なんで、位階酔いしてないのかしら?」
「ああ、俺らが全員ダウンしたのに、マルクは余裕で飯を作って、のんびりしているなんて」
「ええ、すごいです。どうしてです?」
「ああ、教えてくれるか?また秘密なのか?」
「いや、秘密ではなく。よくわからないんだ。去年、位階を調べたら、??って書いてあったんだ。それが測れないのか、それとも違う理由かわからないから、どうしてかは推論の域を出ないんだ」
「それは」
「ええ」
「ああ」
「ねえ、それって初代国王陛下と一緒なんじゃない?どこで調べたの?」
「王都教会だよ」
「え?待って?そこって、100まで調べられるんじゃない?」
「そうらしいよ」
「どれだけ魔獣を倒したの?」
「いや、そんなに倒してないよ。みんなとそんなに変わんないかな。ただ、推論だけど、俺のスキルのせいだと思う」
「え?」
「俺のスキルは、自然のマナなんかを吸ってるんだ。いつでも」
「それって」
「そう、その時に経験になってるのか?それともマナを力に変えているんじゃないか?って思っているよ。ただ本当はわからないけど」
「マルクは英雄みたいな話しかないな」
「ええ、マルクの話はきっといつか小説になります」
「もうなるわよ」
「「「「え?」」」」
「一部のファンが勝手に作っているものだけど。その1人にプロの作家がいるの」
「おお、英雄伝だ」
「しかも、ラルク様の英雄伝を書いた人よ。私の叔父」
「ええー」
「ふふ。マルク驚いた?」
「ああ」
「まあ、私もラルク様のファンだから、マルクと同じクラス、同じ実技になった時は喜んだわ」
「知らなかった」
「英雄はそういうもの。ファンのために生きる英雄なんてつまらないわ。信念に基づいて行動する。それをファンは熱狂するの」
「そういうもんかな。でも門の前の人だかりが減ったよ」
「いいえ。ファンクラブが迷惑はしないように協定を作ったからよ」
「ええーー」
「ふふ。もうマルクのファンはすごいわ。特に女性の人気は。ラルク様以上ね。ラルク様は英雄になった時にはリネア様がいたから女性人気はそこまでだけど、マルクはいない。しかもアルフ様に期待したファンが一気にマルクに来たから、すごいわ」
「へえ。なんだか想像できないな」
「そんなものよ。いいの。マルクはマルクらしい英雄になれば。ファンは自分に擦り寄る英雄なんて見たくないのよ。英雄が英雄然として、伝説を残してくれるのを期待しているわ」
「そうか。まあいいや」
「それを、『まあ、いいや』って言えるマルクは大物だ」
「ああ」
「でも、もう実践戦闘研究会もすごい人気よ。マルクファン以外にも、アレスファンやヨークスファン、ルーイファン、マークファン、カリウス派、リオル派がいるわ。でも密かに人気なのがクリス派よ。あの細い筋肉質は女性人気が高いの。しかも女性顔だしね。あそこのファンは一番怖いファンが多いのよ」
「何だか恐いのは俺だけ?」
「いや、俺も。クリス先輩が心配になった」
「ああ」
とエメリーの新たな一面に恐怖を覚え、ご飯を食べて、休憩したら。もう一度ダンジョンアタックをした。だいたいはマッピングできたのでセーフティゾーンに戻り、代わりばんこに寝た。
そして、翌日は10階に降りてみて、魔獣を確認した。魔獣は小型狼が10匹程度の群れをなしていた。しかもかなり広い階だ。これは厳しい。
この人数では無理だということで俺らはそこから戻り、ダンジョンを出ることにした。1日かけて戻った。もう出た時には夕方で、そこで解散した。
家に帰ると母上と父上が待っていた。
「ただいま戻りました」
「今日は何をしていたんだ?」
「はい。ダンジョンに潜りました」
「そうか、怪我はないか?」
「はい」
「それはいい。少し話がある」
「はい」
「その前に、ダンジョンでは酔いが来なかったか?」
「はい」
「そうか。やはりマルクのスキルはすごいな。どこまで凄いか測りきれん」
「はい。このスキルオンリーではそうでもないですが、すごい可能性を秘めたスキルです」
「うむ。それで話だが。聖国が『飲み込む』は神のスキルだ。と言ってきてな。王国にマルクを調べさせろと言ってきた。しかし、ガルドの弟の件もあるしな。もう付き合う必要もない。無視をした。それに知っていると思うが、荒れた領地は聖国のせいでな。
そこを隠れ蓑にして王国で活動していたから、先々月からあの領地の聖国と帝国の拠点を潰して回っていたが、それも終わった。もう怖くもない。貴族派には王国か聖国かを選ばせた。これからは聖国とは完全に敵対する。気をつけろ」
「わかりました。帝国はどうなるのです?」
「ああ、そっちは王国とは敵対したくないと言ってきた。皇帝の弟が反乱をした。王国と敵対すれば、新魔法理論は教えてもらえない。そうなれば国家は潰れるとな。皇帝も敵対しないと決めたようだ。まあ、今はということだろう」
「そうですか。では教えるので?」
「いや、まだ独占する。獣人国家には教えたがな」
「そうですか。より一層気をつけます」
「ああ」




