41話 エピローグ アムカムの日常
第一章エピローグです。
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「立つって重要なんですよ。人は皆普通に立って居るつもりで、普通に立って居ない」
「え?でも立ってる事には変わりないんじゃ無ェの?」
「軸が通っているかどうかで、状態の本質そのものが変わりますからね」
「あれだろ?『一本筋を通す』的な?ズシンと太い芯のある人間になる的な?」
「まあ、その芯の在り方が問題なんですが……、太くて硬い芯とかイメージしちゃ駄目ですからね?」
「え?その方が強そうじゃないの?より硬い方が簡単には折れ無さそうじゃん?」
「折れる様じゃ駄目ですよ。より強く、より細く、よりしなやかに、より長く」
「長く?」
「地の中心から天の中心まで、自分の中を通して一本繋がるイメージです」
「うわっ宇宙規模?!そんなんイメージし切れんよ!」
「どれだけ明確にイメージ化出来るかで、クオリティが変わりますからね!頑張って下さい!」
「宇宙の中心どころか、地球の中心だって距離感掴めないって!」
「ですが、より長く深くイメージが出来る程、明確に自分の軸に白銀の氣を通せます。シッカリとその軸が出来上がっていれば、生半可に邪な物など、近づく事も出来ませんからね」
「も、仙人の域だろ?ソレ!」
「まあ、そこまで出来なくとも地と氣を通して、自分の立ち方を知るのは大切だと思いますよ?」
「立ち方かぁ」
「少し話は違いますが、自分の立ち位置ってものも自覚出来ますからね。先輩もそろそろご自分の今の立ち位置を自覚し始めてるんじゃないですか?」
「今の…立ち位置…ね、…ねえ?ちょっと聞いても良いかな?」
「なんですか?改まって」
「前から思ってたんだけどさ…アンタさ、本当に後輩?」
「やだな、俺は俺ですよ?間違いなく先輩の後輩ですよ。……でも」
「…でも?」
「でも、貴女は…先輩とは違いますよね」
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「だって!わたしは、わたしだもの!!」
ベッドの中から両手を上に突出して、思い切り言い放ってやった。
そのまま ン! と伸びをしてベットから起き出し、窓を開け放って朝の空気を胸一杯に吸い込んだ。
ウン!かつて無い程、実に気持ちの良い目覚めだ!
秋口の朝は幾分肌寒いけれど、澄んだ空気がとても気持ちが良い。
いつもの様にランニングをして戻ると、やはりいつもの様にハワードパパが鍛練に打ち込んでいる。
もう一人と一緒に。
ウィルはこれから毎朝、ハワードパパと剣の修行をする事にしたそうだ。
今までも此方に来ている時は、ちゃんと修行はしていたと云う事だが…今は、これまで以上に、剣に取組む気持ちが違っているそうだ。
今もハワードパパに指導され、共に汗を流していた。
ハワードさんも、まるで息子と二人で剣を高め合うように嬉しそうに修行されていた…。
それがちょっとだけ妬けたのは内緒だけどねっ!
それでも!鍛錬終わりにハワードパパにタオルをお渡しするわたしの役目は、未だ健在なのだ!
…なのだ、…が。
何故かいつの間にか、隣でコリンがウィルにタオルを渡すようになっていた!
ナゼダ?!!何でココに居るのコリン?!
何だかオシドリっぽさが増量されてる?
朝食も一緒に摂るコリンとウィルを、ハワードパパもソニアママも二人をほのぼのと見守っている感が凄い。
ヌぅ?いつの間にやら何かあったのか?
学校へ行ったら行ったで、何故かビビとアーヴィンの距離感が近くなってる気がする。
ナニコレ?
どうしたの?ソッチもコッチも何かあったの?爆発するの?
思わず堕肉を掴む手に力が入ってしまう!
ミアが何か言ってるけど、シカトして両手をワキワキさせてたら…逆襲を受けてしまったぁン!!
ひぃにゅふゅにゅにゅーっ!そ!ソコは!だ、ダメなトコぉーーーっ!!にゅアンんんっ!!!
さ、最近時々ミアは、とぉっても危険なぎゃくしゅーをしてくにゅにょ………。
気を取り直して……。
現状、学校は結構な修繕が必要なんだけど、勉強が出来ない訳では無い。
只、修練場は完全に使えないので、一から建築し直す事になったそうだ。
立ち合いは、暫くは外でする事になる様だ。
それでも教室は、何時もの通り子供達の声で溢れかえっている。
あんな事があった後なのに、既にみんな平常運転だ。
流石アムカムの子供達!と言った所なのかな?
アムカムの村人が、マジ戦闘民族だと今回良く分ったよね。
教室の中に入れば、みんなが嬉しそうに迎えてくれた。
ヘレナがメアリーが嬉しそうに挨拶をしてくる。
レイラとメイベルも跳び付いて来た。
更に、こちらもいつもの様に忍び寄って来たので、額に『フレンドリー・フィンガー』でポンと弾いてやる。
弾き飛ばされたステファンが、額をさすりながら照れたような笑顔を返して来た。
ンで、アランはやっぱり後ろへ回るのね?
やっぱりこの子達の笑顔は、わたしを幸せな気持ちにしてくれる。
わたしの頬も自然と綻んでしまう。
教室に入ってからビビに、この前アルジャーノンの言葉が分った様に思う…と伝えたら。
「アルジャーノンが、アンタに伝えたいと思っていて、アンタもアタシに…こ!心を開いてくれてるから…!判ったのだと…思うわ!」
と、何故か目を泳がせて、頬を染めながら教えてくれた。
「あ!あと、この前!あの子が迷惑かけたみたいだから!キッチリ叱って置いたから!!」
ん?迷惑?なんだ?
「そ!それと!!そ、そういう貸し出しは…!してないから!そ…そう云う事は…じ!自分で…やんな…さ……い」
え?貸し出し?そう云う事?自分…で?
ベア子が真っ赤になって、最後の方はこの子らしからぬ小声で、消えいる様に話していた。
ん?
「し!親友の!そう言う趣味を……ベラベラ言いふらす気は無いから!あ、安心して!」
え?趣味?
ベア子が真っ赤な顔で俯きながら、上目でわたしの胸元を見ている…。特に先端辺りか?
…あっ!!!思わず思い当って、胸元を抑えてしまった!
アルジャーノンはビビの従魔だ。
二人(?)は心が繋がっている。
チャンネルを繋げれば、ビビはアルジャーノンが見ている事、感じている事を知覚出来るのだそうだ。つまり……。
胸元を抑えたまま、顔が真っ赤になって行くのが解る。
つつつまり!わ!わたしのぉ痴態がっビビに筒抜けだったってことたぁ~~~~~っっ!あふあふあうぅぅっ!
「ちちちちちがう!の!そう・・・ない!・・・の!」
胸元を押さえ、首まで真っ赤にしてビビに訴えた。
胸から上がメッチャ熱を持ってるのが解る!
ビビは 大丈夫だから とコチラも顔を赤くしながらも目線を合わせてくれない。
わたしがワタワタしていると、後ろに近付く気配があった。
それは徐にわたしを後ろから抱きしめて……。
「スーちゃん…、なんかイタズラしちゃってる?」
と耳元に息を吐きかけながら囁いて来た!
「ふにゃうにゃぁンん!!」
思いっきり変な声が出た!
ミ、ミア!何て事をぉ!何で又来にゅにょ!!
向こうの方でコリンが ほどほどにしなさいよー と呆れたような顔で言っている。
コリンは判って無い!この子、程々じゃ済まない事してるにょよ!?
ひ、人目が無かったらそれこそ…!
ダーナがケラケラ笑ってる。ビビにも諦められたように肩を竦めて首を振られたぁ!
「ぃにゃっアぁーーんンッッッ!!」
わたしの恥ずかしい声が教室に響き渡ってしまった。
学校の皆はいつもの様に元気一杯だ。
デイジー先生も、疲れも見せずに村の人達と校舎の片付けに参加されている。
学校の帰りに寄った神殿でも、ヘンリー先生がお忙しそうに怪我をされた方の治療を、先頭に立ってされていた。
そのお顔には、昨日見せたお辛そうな影は何処にも無かった。
神殿から出る時に、裏手から出て来られたライダーさんを見かけた。
ずっとあった眉間の皺が消え、とても穏やかなお顔をしてる様に見えた。
お家に帰れば、やはり何時もの様にジルベルトさんが真っ先にお帰りと言ってくれた。
家に入ればエルローズさんも。
そして勿論ソニアママの微笑みが、ハワードパパの笑顔がわたしを迎えてくれる。
この世界の神様が何処に居るのかは知らないけれど、アムカムの村とクラウド家は、今日も事も無し!なのだ。
これにて第一章終了です。お付き合い、ありがとう御座いました!
楽しんで頂けたでしょうか?ご感想なんぞ頂けると嬉しゅうございますー^0^
明日『第一章登場人物』を投下して一章の最後に致します。
翌週から何話か幕間を投稿していきますので宜しければご覧下さい。
第二章はまた書き溜めた後、連続投稿しようと思っています。又お付き合い頂ければ幸いで御座います<(_ _)>





