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【コミックス第1巻発売中!】女キャラで異世界転移してチートっぽいけど雑魚キャラなので目立たず平和な庶民を目指します!  作者: TA☆KA
第一章:アムカムの村

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29話 クラウド家の客人(まれびと)

「スージィお姉様!今日は修練場へいらっしゃるんでしょう?」


 今月から7段位へ進級し、高位階へ入ったヘレナ・スレイターがスージィへ問いかけた。


「ウン、今日は、行くよ。夏休みの間、皆どれだけ強くなったか・・・楽しみ・・・よ?」

「え?スー姉様来られるの!?ヤッター!!」


 そう歓声を上げるのは、ヴィクターの妹の一人で、ヘレナと同じ7段位のメアリー・フランクだ。

 メアリーは、そのままスージィへ抱き付いて来た。


「あ!なんでアナタはそうやって直ぐ抱き付くの!ズルいわ!」


 そう言って、ヘレナもスージィに、ひしっと抱き付く。


 スージィの入校当初は、彼女への拒否反応を示していたヘレナだったが、学期最後の手合せを経て、今では、すっかりスージィの崇拝者へと変わってしまった。


 これこそが、『強い者を尊ぶ』と言うアムカムの村人の本質なのか……。と、困った様に笑いながらも、二人に手を添えるスージィだった。


「スーちゃんが行くなら、わたしも……」

「ミアは駄目よ!アナタは下級生たちに指導しないといけないんだから!」


 コリンが腕を胸元で組んだまま、メガネをクイっと持ち上げて冷たい目でミアに告げる。



「そ、そんなのコリンもビビちゃんも居るのに……」

「アローズが卒業して、オフェンスが得意な高位階はアナタだけでしょ?私もビビもディフェンス専門だもの。特に、今期から高位のカールには、今日こそは指導してあげないと!」

「でも、でもそれじゃスーちゃんと……」

「ミア頑張って!ミアに優しく、教えて貰えれば、みんなも頑張れると思う・・・の!」


 ミアの手を両手で包みながら、そう励ます様に言葉を掛けるスージィ。


「終わったら、一緒に帰ろう、ね?」


 と、包んでいたミアの手をギュッと握りながら、ミアの目を見詰めるスージィ。


「!スーちゃん……うン、分ったよ。頑張ってみんなに教えて来るから、待っててね?」

「ン!」


 スージィとミアは笑顔で頷き合った。

 それを眺めながら、呆れた様にベアトリスとコリンが言葉を交わす。


「ときどき保護者が逆転するわよね!」

「まあ、基本的にスーの方が精神年齢高いモノね。しょうがないわよ」

「な、何言ってるの?!スーちゃんはわたしが居ないとダメなの!ダメなのっ!」

「あーハイハイ、そーですね。じゃ行くわよ、みんな待ってるんですからね」

「ンもぉーーー!」

「じゃねスー!修練場はよろしくお願いね!また後で!」


 ベアトリスの肩口から、齧歯目もキキュっとスージィへ鳴きかける。


 手をヒラヒラと振り、三人と一匹を見送っていると、ヘレナに手を掴まれた。


「お姉様!早く行きましょう!」


 と修練場へ手を引かれて進んで行く。



 修練場では今、此処で一番の年長者、ロンバート・ブロウクが下級生たちの鍛練の面倒見ていた。

 本来、最上級生であるダーナと、彼と同級生のアーヴィンの姿はココには無い。


 二人は今、スージィの提案で毎日出来るだけの時間、走り込みをやっているのだ。



 元々はスージィが夏休み前の手合せの時に、卒業生の二人に比べて、ダーナとアーヴィンの『氣』の纏いが弱い事を指摘した事に始まる。


 これは未だに二人が、魔力操作がまともに出来ていない事に由来するのだが……。


 魔力操作は、前衛職でも重要な必須技術だ。

 装備に魔力を籠める事で、装備性能を底上げし、自らに強化をも施す事が出来るからだ。

 カーラが使用した分身も、魔力操作によるものだ。



 ダーナは、今まで瞑想に対する苦手意識で、魔力操作の鍛練を避け続けて来た。

 しかし今はもう最上級生だ。

 来年に控えるデケンベルの高等校への入学は、魔力操作が出来る事が必須条件だ。

 このままでは、進学する事が出来なくなってしまう。

 もう後が無いのだ。


 アーヴィンも他人ごとでは無い。

 高段位で魔力操作が出来ないのは、この二人だけなのだから。


「そー言われてもなー。瞑想しないと先進めないだろ?瞑想してると寝ちゃうんだよなぁ……」

「そうそう!あたしも寝ちゃう!どうにもジッとしてるの苦手なのよねー……」

「それなら、動きながら、すれば良いと思う・・・の」

「「え?」」


 スージィの言葉に思わず二人が揃って聞き返す。


「何も考えず、走りながら、身体の中に、意識を向ける・・・の。体重の移動。重心の位置。身体の何処に、力が入っているか。何処の力が抜けているか。感じ取りながら、走るです。歩きながらでも、良いの・・・よ?」

「そんなんで……良いのか?」


 アーヴィンが、目を丸くして聞いてくる。


「重要なのは、余計な事を、考えない事。何も考えないで、ひたすら自分の、身体の中を観察する事・・・なの」

「何にも考えないで走るのは大得意だよ!そんなんでイイの!?よーーーし!あたしちょっと走って来る!!」

「あ!待てよダーナ!オレも行く!!」


 目から鱗だとばかりに喜び、外へ飛び出して行く二人。


「さすがねぇ……走りながら。とか私達からは出ない発想よねぇ」

「むかし散々、歩いてたり、立ってたりしながら、身体の中へ意識向ける、トレーニングしてた、です。日常的に、意識する事が、重要なの・・・です!」


 と言ったやり取りがあったのが、新学期初日だ。

 それから毎日、二人は走り込みを続けているのだ。




「あ、スージィ。今日はコッチなのか?」


 子供達の相手をするロンバートは、修練場へ入って来たスージィに気が付き、言葉をかけて来た。


「ン!ロンバート、お疲れ様!」


 そのロンバートに、スージィは小首を傾げながら微笑んで答える。


「あ、あぁ、は、早く着替えて来いよ。折角だから今日は俺とも一手頼む」


 スージィの笑みに当てられ、視線をずらして頬を指先で掻きながら、手合せを申し出た。


「フフ、良いよ?ちょっとだけ、待ってて・・・ね?」

「……うん、慌てなくて……いいからな」


 スージィの更なる笑みの重ね掛けに、顔を赤らめてしまうロンバート。



 ロンバート・ブロウクは、スージィやアーヴィンと同い年だが、13歳にして身長は既に170センチを超える大柄な少年だ。

 筋肉質な腕が握るのは、武骨な戦斧。

 見た目通りのパワーファイターだ。


 肩口まである、キャロットオレンジの切りっぱなしの髪がワイルドで、鼻筋が通った掘りの深い眼元は、優しげに澄んだブルーだ。


 そんな、心優しき大男を絵に描いた様な彼が、はにかむ様が なんとも可愛い♪ とか思ってしまうスージィだった。


 フフッと口元を押え、笑みを堪えるスージィを、横からヘレナが訝しげに首を傾げて見上げいた。



「あ!スー姉!!」


 練場の中で、息を荒くして倒れ込んでいたステファンが、スージィに気が付きガバリと起き上がり声を上げた。


「スー姉!コッチでやんの?ならオレと!オレとっ!!早く!早く着替えて!」

「おいおいステファン。お前今、もうダメだって言ってたばかりだろ?」

「!い、言ってないし!ぜんぜん出来るし!!スー姉!ロン嘘ついてる!オレぜんぜん平気だし!!」


 ロンバートが右手を額に当て、溜息を吐きながら……。


「……お前、スージィの事好きすぎ……」


 と呟くと。


「ち!ちげーーしっ!!そんなんじゃ無ぇーしっ!!もういいよ!ロン!どいて!スー姉来るんだから早くどいて!!」


 ステファンが真っ赤になってロンバートに喰ってかかる。

 スージィは堪らずクスクスと笑いを漏らしてしまった。


「わかったよステファン。ちゃんと可愛がって、あげるよ?だから、ちょっとだけ待ってて・・・ね?」


 スージィが、イタズラにウインクを飛ばし、小首を傾げて微笑んだ。


 ステファンは あぐっ! と、真っ赤になってその場で硬直してしまった。


「スージィ……からかい過ぎだ」


 そう言って、頭が痛そうに額に手を当て首を振るロンバート。


「アハハ♪ごめん、ね?」


 とテヘペロするスージィ。


「もう!スージィお姉様は私の相手をして下さるのよ!アナタたちの相手はその後ですからね!」


 ヘレナがスージィにしがみ付きながら、威嚇する様に険しい視線を周りに向けながら宣言した。

 それを受けたステファンが再起動する。


「ヘ、ヘレナなんか5秒も持たないんだから!いつだって一緒ジャン!!」

「そう言うアナタは1秒持ちませんものね?」


 ヘレナが腰に手を付き、睥睨する様にステファンに言い放つ。


「も!持つし!ぜんぜん持つし!!!」


「ね?スー姉様、早く着替えましょ?」


 メアリーに促され更衣室へと手を引かれた。

 進みながらスージィは修練場の中をサッと見回し、中に居る子供たちを確認する。


 言い争いをしているヘレナとステファンを、呆れた様に見るロンバート。


 ステファンと一緒に転がっていた、クラークとアシュトンの双子も起き出した。


 スージィに気が付いた、今期から4段位に上がったイルマ・アトリーと、ジャニス・カーロフがキャアキャアと喜んでいる。


 学校初日にレイラ、メイベルと、一緒に机を並べた二人の男子、デヴィット・ブレイクとチャールズ・ボーマントが、一つ上のフランク・ジーライトに剣の型を教わっていたが、3人とも此方を見て嬉しそうだ。


 入口にヘレナ達と同じく今期から高位階へ上がったベルナップ・ロングとカーラの弟アラン・エドガーラが、入学したてのベアトリスの弟、エドワード・クロキと、エヴァとヴァレット・アヴァンズの二卵性双生児の姉弟を連れてきた。

 3人ともワクワクした顔をしている。

 

 更衣室の入り口前で、昨日まで研究会に一緒に居た、3段位のフィービー・カイツと、4段位デニス・ホートリィも修練場に居る事に気が付いた。

 二人とも、走って更衣室に向かって来ている。


「あれ?二人とも、今日は、コッチ?」

「ウン、スージィおねえちゃんがコッチって聞いたからコッチ来たの!」


 とフィービーが言えば、デニスも黙って頷いた。


「そか、じゃ早く着替えよ?」


 と二人の頭を撫で、更衣室へ入って行く。 やっぱりみんな元気で可愛いなぁ 賑やかな子供たちに囲まれているとそれだけで嬉しくなってしまう。

 ささやかな幸せを感じてしまうスージィだった。





     ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 帰宅すると厩にレグルスを連れて行く人影が見えた。


(ジルベルトさんだ。ハワードさん今日馬車使ったんだ。特に何も聞いて無かったけどお出かけしてたのね)


 ジルベルトというのは、クラウド家の、主に馬の世話や。外回りの仕事をこなす通いの使用人だ。


 齢70を超える右目にアイパッチをした隻眼の小柄な老人だが、矍鑠(かくしゃく)とし実に快活な人物だ。

 スージィの事を お嬢 お嬢 と呼び、見かけると良く飴玉をくれる。


 ジルベルトもスージィの帰宅に気が付いた様なので ただいま と手を振ると嬉しそうに手を振り返してきた。


 手を振りながら家の中へ入るとリビングから話し声が聞こえる。

 ハワードとソニア以外にもう一人聞いた事の無い声、若い男性の声だ。

 気配を探ると、力強く若々しい穏やかな気質が見て取れる。

 リビングの雰囲気はとても楽しげだ。


「・・・ただいま、帰り、ました」


 スージィがリビングへ顔を出し、帰宅の挨拶をすると ウム、おかえり おかえりなさいスージィ お嬢様おかえりなさいませ と大人たちが直ぐに挨拶を返してくる。


 そしてもう一人、こちらに背を向けハワードやソニアと談笑していた若者もスージィに気が付き、ユックリと振り向く。


「!……ラ、ラヴィ姉!なんで!?どうして?ラヴィね……あ」


 スージィを見た瞬間目を見開き立ち上がり、驚きの声を上げた。

 しかし、目の前に居る人物が今名前を呼んだ人物とは別人であると即座に気付き、目線を落とす。


「あ、あの、スージィです。はじめまして・・・」

「あ……申し訳ない。はじめまして、自分はウィリアム・クラウド。君の事はお二人から聞いていた。突然、不躾で失礼した」

「・・・お気に、なさらないで、下さい」


 ハワードとソニアが辛そうな表情でスージィを見ている。


(あ、またこの目……。お二人のこんなお顔、あんまり見たくない……な)


「えと、部屋で、着替えてきます、失礼、します」

「あ……」


 ウィリアムが引き留めようと口を開けかけるが、それより早くスージィは2階へと上がって行ってしまった。


「ウィル、私がお話しして来ます。貴方はハワードと此処へ居て?」

「伯母様、申し訳ありませんでした。自分の浅薄な発言が皆様に不快な思いをさせてしまいました」


 ウィリアムが深々と二人に頭を下げる。

 ソニアが笑顔で 大丈夫よ と告げリビングを出て行った。

 ハワードがその後を継ぐ様にウィリアムに話かけた。


「気に病まないでくれウィル。これは我々が臆病になっていた事が悪いのだ。本来ならもっと早くにあの子とは話し合って居なくてはならなかった。これは丁度良い機会なのだよ」

「しかし、伯父上。私は…」

「座ってくれウィル。後はソニアに任せよう。エルローズ、お茶のお代わりを貰えないか」





     ******************************





「うにゃ~~・・・ちょっと失礼だった、かなぁ?」


 今スージィは、生地の軽い室内着に着替え、ブーツを脱ぎ、室内履きに足を突っ込んだまま、ベッドに仰向けに倒れ込んでいる。


(さっき逃げる様に退出してしまって、お客様、気を悪くしてないかな?)


 と考えて、少し落ち込んでいる。


(でも、あんなお顔を、お二人にさせたままでは居られなかったし……)


 『ラヴィ』という名前がまた出てきた。

  わたしを見て、その人の事を連想させてしまうなら、取敢えず顔を引っ込めないと と考えて、直ぐ様2階へ上がったのだが……。


「ちょっと、素っ気なさすぎ?・・・もうちょっと、言い様あったよ、ねぇ・・・」


 と反省していた。

  少し時間を置いて、お二人が落ち着いた頃に下に降りる様にしよう……。と考えている所だった。


 そこへ、ドアをノックする軽い音が響いた。


(あれ?エルローズさんかな?なんだろ?急ぎの用事?)


「はーい、今、開けます」(あれ?でもこの気配?)


 そう言って、エプロンを身に付けながら扉の前まで行き、ドアノブに手をかけ、ユックリと扉を開いた。


「!ソニアさん!?」


 扉の前にはソニアが立って居た。


「どうして?!ソニアさん?階段登って?」


 スージィが慌ててソニアに手を伸ばす


「大丈夫よスージィ。このくらい平気だから」

「でも脚が!息切れてます!ソニアさん疲れてる!」


 ソニアは少し息が乱れ、頬も気持ち赤味を帯びていた。


「そう?それじゃ少し座らせて貰おうかしら?」

「もちろんです!」


 椅子を用意しようとしたスージィを制し、ソニアはベッドに座る事を望んだ。


 ベッドに腰を下ろしたソニアに、コップに注いだ水差しの水を手渡し、ソニアはそれでユックリ喉を潤す。

 ソニアが落ち着いた事を確認して、スージィも一心地着いた。


 ソニアはコップをスージィに返すと、自らの左側をポンポンと叩き、スージィに自分の横へ座る様に促した。


「ソニアさん、どうしてこんな・・・」

「スージィとね、お話がしたかったの。……駄目かしら?」


 ソニアがスージィの問いかけを制し、柔らかい眼差しで自らの希望を伝える。


「ううん、駄目じゃないです。わたしも、ソニアさんの、お話聞きたい」


 スージィは、ソニアの瞳中に穏やかだが確固たる意志が宿る事を見て取り、静かに頷き返した。


「本当はね、もっと早くにお話ししなくてはいけなかったの。貴女が、この家に一緒に住んでくれると決めてくれた時、ちゃんとお話しすべきだったの」

「・・・ソニアさん」



     ◇



「ワシらは怖かったのだよ。ラヴィの事を知った時、あの子はこの家を出て行ってしまうのではないか?と。ワシらから離れてしまうのではないか?……とな」

「……伯父上、彼女はそんな……、そんな薄情な事をする娘なのですか?」

「違う!そうではない。……違うのだよウィル。あの子はとても聡明で思慮深く、そして唯々優しい子なのだよ」


「それならば何故、伯父上たちを捨て行く様な事をすると?」

「恐らくあの子は、既にラヴィの事に気付いている筈なのだ」

「それは、誰かが彼女に教えたと云う事でしょうか?」

「いや、言ってはおらんはずだ。ソニアを始め、先程のお前と同じ様に、あの子を見た者が初見でラヴィの名を口にした。そんな者が何人か居るだけだ」


「そ、それは、返す返すも申し訳ない事を……」

「気にしないでくれ。それはそのままあの子を……、ラヴィを、それだけ愛していたと云う事を示しているのだからな」

「…………」


「今までスージィからラヴィの事を聞かれたのは、ライダー・ハッガード只一人だ。彼は、スージィに尋ねられ、答えることが出来なかった……と。不用意にラヴィの名を、スージィの前で呼んでしまった事を、家までワザワザ謝罪をしに来てくれたよ」

「……それは、……自分も、ライダーさんのお気持ちが分ります。本当に申し訳ありません」

「だから良いと言うのに、フフ。お前もライダーも実直な漢だな?騎士団に関わる者はみなそんな物かも知れんがな、フフフ」

「い、いや、それは……、ど、どうなのでしょうか?」


「スージィは、ライダーに問うた一度だけで、他の誰にもラヴィの事は聞いていないのだよ。あの子は気付いている筈だ、ラヴィの名を口にした者が皆、辛そうにする様を」



     ◇



「……スージィは、……ラヴィの事を、知っているのでしょう?」


 ソニアの目が僅かに揺れた。

 スージィはそれに気付き、膝の上で握るソニアの手に自分の手を重ねる。


「ありがとうスージィ……。やっぱり知っているのね?」


 スージィはソニアの目を見ながら頷いた。


「多分、昔、このお家に、いらっしゃった方・・・だと思い、ます」

「どうしてそう思うの?」

「初めてお家に来た時、出してくれたお洋服。下着も、小物も。同じくらいの女の子が・・・いたのかな?て、でももう何年も居ない、と」

「そう……、そうね」


「ときどき、わたしを、その方と見間違えて、呼ぶ方がいます。わたし・・・似てます、か?」


「フフ、そうね、身長は今の貴女と同じくらいだったかしら?赤い髪を、いつも一本の三つ編みにして背中に垂らせていたわ。目は私と同じ灰味がかったグリーンで、ときどきキラリとエメラルドみたいに光るのよ。額が広いのをあの子は気にしてたけど、私は好きだったわ。いつも元気に外を走り回ってて、男の子にも負けて無かった」


 嬉しそうに話しながら、ソニアの目に涙が溜って行く。


「ソニアさんソニアさん!泣かないで!ごめんなさい。もういいです・・・ごめんなさい、泣かないで!」

「ううん、違うの、大丈夫よ?ありがとうスージィ。悲しいんじゃないの。違うのよ?こんなに、こんなに楽しくラヴィの事が話せるなんて思って居なくて、……嬉しいの」

「・・・ソニアさん」

「だから、最後まで聞いてね?」

「・・・はい」


「ラヴィは、ラヴィニア・クラウドは私達の娘。10年前に14歳で亡くなった私とハワードが愛した、たった一人の愛しい娘よ」

これは家族のお話し。

次回「ソニア・クラウドの昔語り」

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第1巻発売予告
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― 新着の感想 ―
めっちゃいまさらなんだが ソニママの足ってスージーの魔法(気合い付き)で治らないのかな なんでもありあり感あるから治るんじゃない
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