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【コミックス第1巻発売中!】女キャラで異世界転移してチートっぽいけど雑魚キャラなので目立たず平和な庶民を目指します!  作者: TA☆KA
幕間

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幕間7 トールとスズカの夏休み

2人が転移して半年ほどの事。

まだ勇者だなんだとか言われる前のお話。

「いやー、結構この世界の夏も暑いんだねー」

「コッチに来た時は結構寒かったんだけどな。あれからもう半年経ってる。村に保護されたのが、ついこの前みたいな感覚なんだけどな」

「確かに!」

「時間が経つのがあっという間だよな。……ってか、言い草が何かオヤジっぽいか」

「あはは! そうかも!」

「……否定しろよ。ま、いいけどさ!」

「ふふふ。…………ねぇ、それよりトール君」

「なんだ?」

「返事は……決めた?」

「卿からの申し出の事か?」

「うん。養子にならないかって言われたヤツ」

「辺境伯は強制じゃ無いって言ってるだろ?」

「うん」

「オレは……構わないと思ってる」

「そうなの?!」

「オレ達二人とも言って見ればこの世界じゃ根無し草だ。後ろ盾はあった方が良い」

「……そうなんだけど」

「元の名前を変えるのがイヤなんだろ?」

「まあ……うん、そう」

「だけど辺境伯は、無理にアムカムを名乗る必要は無いと言っていたよ」

「そうなの?」

「まあ、公式の場とか必要のある時は止むを得ないかもしれないけど、普段は別に良いって」

「そう……なの?」

「正式な記録に養子として留めておけば、後ろ盾として力になれる……という事らしい」

「……そっか」

「スズは、あんまり乗り気じゃのか?」

「……ぅん。なんかさ、家族との繋がりが切れちゃうみたいで……でも、トール君は納得してるんでしょ?」

「この世界で活動して行くなら、あった方が良いと思ってる」

「そっかぁ。すごいなぁトール君は。わたしは何か割り切れないよ」

「気持ちは分からなくも無いけどな。でも、これで元の戸籍が変わる訳でもないだろ?」

「……え?」

「ここ異世界なんだし。元の世界の戸籍や住民票から抜くとか成らないし」

「あ、それは……そう」

「ネトゲのハンドルネームとかと思っておけば良いんじゃないのかな? オレはそう思ってる」

「あは! あはははは」

「なんだ? どうしたイキナリ?」

「やっぱりトール君はすごいなぁ。そんな事考えもしなかったよ」

「そうか?」

「そうかー、これはゲームキャラなのかぁ」

「あくまで名前な。コレは生きている人間。SNSとかで付けるのと一緒」

「なるほどー」

「割り切れそうか?」

「うん! もうちょっと考えてみるよ。ありがとうトール君!」

「ああ」


「うふふふ。あ、そろそろこの辺じゃ無いかな?」

「そうだな。森のこの辺で出る筈だ。索敵頼む」

「了解! こっからはシッカリ警戒して進もう」

「……森に入った時から警戒はしようぜ?」

「してるしてる! ちゃんとしてました!」

「……お願いしますよ」

「あ! トール君! 出た、出たよ! あそこ! イケる?!」

「ぅお?! 早ッ! よし任せろ! よっ! それ!」

「うわぁ、相変わらず上手いねぇ。わたしには無理だなぁ」

「そうかな? それより、スズは他の魔獣の警戒よろしくな! よッと、ほッ!」

「了解! でも、よくそんな綺麗にまとめられるよねぇ。まるで綿菓子作ってるみたい」

「綿菓子かぁ……。そういや昔良く作ってたかも、なっ!」

「そんな事してたんだ? ねぇ、いつ頃?」

「うーん、多分小学校上がる前? 近所の商業施設のゲーセンにあった綿飴機。それっ! 良くみんなに作ってたと思う」

「ああ! ひょっとして、一ノ谷(いちのたに)君と江戸川(えどがわ)さん?」

「……スズって、2人のこと知ってたっけか?」

夏海(なつみ)ちゃんとは中1の時クラス一緒だったし、他にも……」

「それは知らんかった、なッ!」

「小学校の3〜4年生まで、3人は悪ガキトリオだったんでしよ?」

「誰がそんな事を」

「えーと、夜の学校に潜り込むとか、運動会の応援マスコットに過剰装飾したとか、遠足で行った夢のランドの楽屋裏でかくれんぼをしたとか、とか?」

「……誰がそんな事を」

一ノ谷(いちのたに)江戸川(えどがわ)万城目(まんじょうめ)の3人が揃うとヤバいって、聞いた事あったかな?」

「酷い風評被害だ、なっ! と」

「えーー? そうかなぁ?」

「大体はユウが……一ノ谷(いちのたに) (ゆう)が突っ走って、オレとナツミがそれを止めてたんだ、よっ!」

「トール君も充分突っ走るタイプだよね?」

「……そんな事はない、ゾっ! と」

「トール君の事はよく知ってるしぃ」

「……酷い風評被害だ」

「ナツミちゃん……江戸川(えどがわ)さんって言えばさ、実はわたしと同じ道場だったんだよねぇ」

「そうなのか?! 成る程、道理で……よっ!」

「なんか思い当たるの?」

「よく暴走し過ぎたユウをぶん殴って止めてた、なっ! と」

「なるほどぉ〜。(とおる)君も良く殴られていた、と?」

「…………」

「図星かぁー」

「酷い風評被害だ」


「まあ、それよりも江戸川さんなんだけどさ」

「ナツミが何か? なっ! と」

「いや、『江戸川』って名前……」

「江戸川?」

「村にいるエドガーラさん? ……あれってさ、忍者だよね?」

「あーー、そうかもな」

「なんて言うかさ……あの人達の足運びとか体捌き? 妙に()()のに近い感じがするんだよねー」

()()の? スズの道場の? スズのトコの流派なんて言うんだっけ?」

「『白神賢流(びゃくしんけんりゅう)』」

「って言うか、江戸川の家って忍びの家系っだったの?」

「忍びかどうかは知らないけどさ、ウチの一門だから……何とも言えないんだよねぇ」

「なんだそりゃ? 侮りがたいな白神賢流。それで、エドガーラさんの流派名とかと似てるのか?」

「そう言うワケでも無いんだけどさぁ……」

「何が引っ掛かってるんだ?」

「うーーーん。()()()さんが()()()()()さんに成ったのかもと考えるとさ、実は夏海ちゃんもコッチの世界に来てたんじゃ無いかな……っとか想像しちゃってさ」

「いやいや、仮に来てたとしても何百年も前の話になるぞ」

「そうだよねー。やっぱあり得ないよねー」

「あー、でもオレ達世界を超えているんだから、時間も同じに流れてるとか考える方がむしろ不自然?」

「どういう事?」

「空間を次元を超えて移動しているんだから、時間も超えていたっておかしくないって事」

「フン、ふん?」

「100年や200年どころか、1,000年くらい転移する時間がズレていたって、実は何ら不思議は無いのかも」

「ほう、ほう? つまり……どういう事?」

「可能性が無い訳じゃ無いって事」

「そーなのか! それじゃやっぱり夏海ちゃんも……」

「いや、でも時間を超える可能性はあったとしても、こんなに身近な人間がポンポン次々と異世界転移するとかの方が、可能性あり得なくない無いか?」

「うーーん、確かに?」

「でも逆に、違う世界線から……ってのは有るかもしれないよな」

「え? どういう事? 世界線ってナニ?」

「ちょっとだけ違う可能性から生まれる沢山の世界。多元宇宙とかパラレルワールドとか、マルチバースとか? そもそも異世界っての自体が、マルチバースのひとつなんだろうし」

「うーん?」

「ほら、前に転移者の遺品とか言うの、見せてもらった事あるじゃん?」

「うん、あったね」

「書かれていた文字がさ、日本語なのに所々鏡文字みたいに逆向きなのがあっただろ?」

「ああ! うん、あったあった! 気持ち悪かったよね」

「あと五百円玉」

「ああ」

「あんなデザインの五百円玉知らないよな」

「うん、なんかの記念メダルかと思ったけど、そうでもなさそうだったし……」

「大体にして刻印されていた年号がおかしい。『昭和67年』だよ?」

「あ、また気持ち悪くなって来た」

「多分あれの持ち主は、オレ達が居た日本とは違う日本から来たんだ」

「そう言う事もあるのか……」

「だから違う可能性の世界の江戸川(えどがわ) 夏美(なつみ)か、その近しい人間がこの世界の過去に転移した……って言うのはあるのかも?」

「違う可能性の世界……」

「そう、無数にあるのかもしれない世界」


「それじゃ、もしかしたら……わたしとトール君と出会っていない世界とかも……あるのかな?」

「あるかもね」

「トール君と出会っていても、一緒に居られない世界も……あるのかな?」

「……あるかもね」

「……嫌だな」

「……うん」

「そんな世界はイヤだ」

「うん」

「ね、トール君……」

「うん?」

「居なくならないでね」

「ならないよ」

「ずっと一緒に居てね」

「当たり前だ」

「約束して」

「約束するよ」

「うん……」

「心配しなくてもオレはずっとスズと一緒だ」

「うん、ありがとう……」


「……さて、そろそろ帰ろう」

「……うん、そうだね。って言うか! いつの間にか収穫終わってる?!」

「とっくに済んでるが?」

「……いつの間に」

「ブラウンクロウラーの二匹や三匹、オレ一人でも何とでもなるって!」

「そっかー、そうだよねー。話に夢中で気付かなかったよ……」

「おまえなぁ」

「あははははー! まあ帰ろうよ!」

「ったく、しょうがないな。……ン? どうした?」

「手、つないで」

「お? おぅ」

「ずっと一緒だからね」

「ああ」

「約束だからね!」

「ああ、約束だ」

「うん! ふふ、約束だよ? 絶対だからね!」

お読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字のご指摘、ありがとうございます!

ブクマ、ご評価もありがとうございます!いつも励みになっております!!


11月からオープンした新サイト『竹コミ!』様でコミカライズ好評連載中です。

https://takecomic.jp/series/b178efcf47d34

何卒よしなに!

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第1巻発売予告
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― 新着の感想 ―
あー、最新話まで読み終わってしまったぁ(涙) 暫くは周回しながら待たせて貰います。 シーナとスズ、これからスージィと絡むんだろうか? 私、ほのぼの大好き侍。 死闘を繰り広げるような間柄にならないとい…
無事最新話まで読みました...! だんだんと百合展開が少なくなるのは寂しいですが、戦闘描写が主人公以外のも細かく見れてとても楽しかったです..! 他の人が言っているようにまさかスズはスーの平行世界の同…
まさかスズはスーの平行世界の同位体なのか?
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