幕間1 光るうちゅ
「あれは、憎しみの光だぁ!」
じゃなくて!
〇ーくあくす、放送楽しみですね!
でもなくて!!
本編からカットしたエピソードその1にございます。
それはカレンやコーディを、理事長様やボルトスナン頭首キャスパー卿に引き渡した後の事だ。
疲れ切った2人を部屋で休ませる為に送り出した後、わたし達は小さな会議室に案内された。
その中では見知った相手がわたしを待っていた。
「スージィ! 元気そうじゃないか!!」
「まみゅギュっ!」
部屋に入った瞬間、大柄でダイナマイトなボディがわたしを抱き締めた。
そこに備えられた大きな2つの塊に、わたしの身体が沈み込む。
「ちょっと見ない間に、また可愛くなっちゃったか?! むふ――♪」
「あみょ! みゅむむン」
「またアリアは――――ッ!」
「ばゃヒュ……むゅン!!」
そう言って埋まるわたしをミアが強引に引き抜き、そのままわたしを抱え込んだ。
どっちにしてもズブズブと埋まるわたしとは一体……。
「お嬢さん、お疲れ様ね」
「ご苦労様で御座います! お嬢様!」
「ン! お嬢さま、お疲れ様」
「イルタさん、ミリーさん、ケティさん。お久しぶり、です!」
イルタさん、ミリーさん、ケティさん。チームアリアの皆さんが順にご挨拶をしてくれた。
それに対してキチンと順に返事を返して行くわたし。
まあその身体は、駄肉トラップに埋まったままなんだけどね!
「今回の依頼達成報告だ。理事長」
アリアが、わたしの後ろに向けて声を上げた。
「ありがとう。……うん、確かに」
わたし達の後ろ、つまりこの部屋の扉前には理事長と、キャスパー卿が立っておられる。
その理事長にアリアが書類を手渡した。
「詳細な報告書は、後日提出させて頂く」
「ああ、よろしく頼むよ。……それにしても、今回は本当に助かった。改めて礼を言わせて欲しい」
「ドルトンの言う通りだ。御助力誠に痛み入る。感謝の言葉も無い」
そう言って理事長とキャスパー卿のお二人が揃って頭を下げられた。
「アタシらは仕事をしただけだ。それより、まだ残っている小物はどうする? それなりの数が溢れているハズだ」
「既に我々の方で掃討作業に入っている。現状、衛士、郡騎士だけでも対応可能な見込みだ」
「手が足りなければいつでも言ってくれ。協力は惜しむなと言付かっている」
「有り難いお言葉だ。感謝に堪えない」
溢れた魔獣のうち脅威値の高い危険な奴は、バウンサーやアムカムのメンツで既に掃討済みだ。
程度の低い奴らを無視して、高脅威値の魔獣を優先的に潰して行った結果、小物は未だ溢れているという話なのだ。
「ひとつ、前線で活動していた諸君に確認したい事があるのだが……良いだろうか?」
キャスパー卿は、なにやら聞きたい事があると、わたし達に向かって問いかけて来た。
なんだろ? ちょっと改まったご様子だぞ。
「数時間前に確認された光の柱について、何か知っている事があれば報告して欲しい」
「はみゅうぅんン?!!」
変な声出た。
「光が発したと思われる雷鳴のような轟音は、マグナムトル市内に大きく響き渡った。幸い怪我人は出ていないが、多くの窓ガラスが割れたそうだ」
「恐らく学園でもあの光は見えているだろうね。ひょっとしたら音も届いているかも……」
「あわ、あわわ……」
あ、あれは! チョットした手違いで御座いまして! あわわわわわわわ……。
背中に、盛大に嫌な汗が流れていく。
こ、これは、大変な騒ぎになっているにょでしょうかっ?!
「何か情報があるのなら提供して欲しい。これは明らかにただ事では無い。迅速な対応が求められる」
あわ、あわ、あわわわわ……。
視線があちこち彷徨ってしまう! グルグル目玉になっているに違い無ゃい!
滝のように流れる汗が止まらにゃいぃ!
と、そんなワタ付いてるわたしを、ミアが更に抱え込んで来る。
みゅむむ?! 身体が駄肉トラップに、深く深く沈められてしまうにゅにゅっ!
「実はあれは、わたし達の展開した新型精霊式広域結界装置の暴走が原因なの」
「なんだと?!」
なんだと?!
突然イルタさんがおかしな事を言い出したにょっ?
「スタンピードを抑え込む為に使用した大型結界よ。風精霊を主軸に広域に展開する予定だったのだけれど、この土地の火精霊との相性が良すぎたのね。おかげで強力な魔獣も容易に処理出来たものの、火の神のお膝元であった事も要因の一つだったのでしょう。危うく精霊暴走を起こすところだったわ」
「なんと?!」
なんと?!
え? アレってわたしがやらかしたヤツでは?
そう言おうと口を開きかけたら……。更にミアにトラップに深く沈み込まされた! ンみゅみゅみュ……。
「それでも何とかケティの力を借りて精霊の力を制御し、溢れた魔力を上方へと逃して事なきを得た。それが今回の顛末というワケ」
や、やっぱりにゃにを仰っておられるにょら? イルタのおねえさんはっ?!
あれを仕出かしたのはわらしのハズらのよ? なして結界装置の暴走とはっ?!
にゃむむ……?
「成程、あの光は膨大な属性の違う精霊力が圧縮された事で発生した、『雷轟槍』と言う事かな?」
理事長様が「なるほど!」と手を打ちながらそんな事を仰った。
にゅむむ……?
「そうね。大規模な『雷轟槍』放つ事で、精霊暴発を発生させずに済んだわ」
「今回の件に関しては、完全にこちらの落ち度だ。謝罪させてくれ」
「何を言われる! 魔獣制圧に使われた結果ではないか! スタンピード被害を考えれば恐ろしく軽微だ!」
「そう言って頂けると大変有難い」
ケティさんの説明にアリアが謝罪を口にして、キャスパー卿が気にするなと言われた?
一体何がどゆ事にゅ?
にょむむ……?
「既にこの件は、超速ハトでアムカムには報告済みだ。御頭首は出来る限りの補償はすると仰っている。結界装置の復旧にも技術支援を含め、全面的に協力するとの事だ」
「アムカムのクラウド卿が?! なんと有り難い話か! アムカムの結界技術は国随一だからな!」
キャスパー卿が、感極まったような声を上げておられる。
ハワードパパまでもがこの件に絡んでおられりゅ?
みゅんむむ……?
そうこうする内、騎士の方が部屋までキャスパー卿を呼びに来た。
残った小物掃討の為の準備が出来たとの事。
卿は、陣頭指揮を取る為向かわれるそうだ。
アリア達も一緒に行くと申し出ると、キャスパー卿は「よろしく頼む!」と嬉しそうに答えていた。
卿と一緒に部屋を出る時、わたしを見たアリアが盛大にニヤリと笑って見せた。
続けてイルタさん、ケティさん、ミリーさんも笑顔で手を振りながら出て行った。
最後に残った理事長様も、わたしにむけて思いっきりウインクをしてから扉を閉めた。
「こ、こりは……。にょ、にょういう事……にょ?」
「全く! 被害が無かったことが救いよね!」
「アリアたちが結界装置を持って来ていて助かったねー」
「ヘクサゴムでの砦の崩壊も、『巨大魔獣の魔力暴走で、倉庫に積まれた盗難品の小型霊力炉が暴発した結果』って、ロデリックさんが証言してくれたしねー」
「アムカムだけだったらまだしも! 他所様の山を削るとか、これ以上は勘弁して欲しい物よね!」
「ホントだよスーちゃん。もう少し自重しないとダメだよ?」
「あ? ……は、はひゃい……はい?」
「デイパーラの事以外は、御頭首を始め護民団皆で火消しに回る事になってるから! でもだからと言って、くれぐれも慎重さを欠く行動は慎む事! 良い?!」
「あ、は、はぃ……はい?」
え? デイパーラ? え? え?
何コレ? え?
「今では『歴史の象徴』とか皆んな言ってるしねー」
「そう言ってしまえるのは、やっぱりアムカムだからって事を忘れないで欲しいわ!」
ば、バレて……りゅ?
……わ、わたしが、デイパーラを削り飛ばした事が……バレてーら?!!
うにゃにゃにゃにゃにゃにゃ――――――――――ッッッ!
なして――――――――?!!
「……あ! あにょ……!」
「さ! アタシ達も掃討作業に参加するわよ!」
「あの……です、ね?!」
「アーヴィンとロンバートはもう向かってるよね……。2人には負けられないね!」
「お聞きしたい……こと、が?」
いつから気付いていたにょ?!
ってかハワードパパも? アムカムの皆も???
一体全体いつからにょぉ――――?!
「さあ! 急いで向かうわよスー!」
「……あ、ハイ。 ……じゃにゃく、て!」
「適度にがんばろうね! スーちゃん!」
「……くれぐれも程々に! ね!」
「どー云う事にょぉおぉ――――?! ぅにゃぁあぁあぁぁぁ――――――――ッッ!!!」
ビビとミアは諫める様な顔でわたしに一言かけ、そのままアリアたちを追う様に部屋を出て行った。
後にはわたしの叫びだけ、虚しく室内に響き渡ったのであった!
うにゃっ!!
デイパーラの話が出るたび、大汗かいて挙動不審になるスージィさん。
「あ、コイツやりやがったな」周りが気づかない筈ないんですよ!
2章が始まる前には村の首脳陣は皆気付いています。3章始まる前には子供達にも周知の事実。
バレていないと思っているのはスージィさんだけ。
というお話でした!
コミックスの第1巻が5月7日に発売予定でございます。
各サイト様では既に予約も始まっているとか。
どうか皆さま、何卒! 何卒よしなに!!





