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きらりチルドレンが世界を統べる日

 体が暖かい。まるで、子供の頃母親に抱かれていたような……母性に溢れた優しさがオレを包み込んでいた。


 夢のような心地よさが全身に広がっている。ずっと、ここにいたい。けれど、現実が嫌でもオレをそこから引き剥がそうとする。


 やがて光が少しずつ目の前に広がっていき……オレは目覚めた。


「朝、か」


 目の前にはテントの天井がある。


「そっかオレ……今、異世界なんだ」


 テントの中にはオレ以外誰もいない。このテントは2人用の代物だ。それが合計3つ。


 アリスときらり、レリアとアーシャ、そしてオレの3グループでそれぞれ使用している。


 ラヴィーは馬車の荷台がいいと自分から申し出たので、悪いけどそこで寝てもらっている。


 それにしても……すごく気持ちのいい夢だった。何であんな夢を見たんだろう?


 もしかして、このテントには安眠効果のある魔法がかけられているとか?


 ていうか、今もあったかくて気持ちがいい。なんだか毛布の中が窮屈だけど。


 まあいいや。とにかく起きよう。そう思って毛布から抜け出ようとしたとき、目が合った。


 え。目が合った?


「おはようございます、陶冶さん」


「きゃあああああああああああああああああ!! 出た!」


 毛布の中から、きらりがあらわれた!


「何で!? 何でお前がそこにいるの!?」


 朝から大パニックだ。何がなんだか解らない。


「いえ、陶冶さんと赤ちゃんを作ろうと思って」


 きらりはオレのお腹に顔を乗せて、そう言った。


「どストレートにそんなこと言うんじゃない!」


 ていうか、赤ちゃんって……朝っぱらから何言い出すんだこいつ。とにかく急いできらりから離れないと。


 オレは毛布から抜け出ると、出口を背にきらりと向き合った。


 きらりも毛布から出てくると、恍惚の笑みを浮かべて自分の腹をさする。


「ふふ、これで陶冶さんの赤ちゃんを授かることができるんですね……私、お母さんになるんだ……」


「はあ!?」


 きらりの着衣に乱れはない。可愛らしいピンクのネグリジェを着たきらりは、かなり似合っていた。


 正直な話、かなりくらくらクル光景だ。きらりを抱きしめたくなる衝動に駆られるが、本能を理性で縛りつけ、現状把握に努めることにする。


 そうだ、落ち着け。まずは落ち着いて、きらりから情報を引き出すんだ。


 落ち着きかけたオレの心を揺さぶるように、きらりの口から核爆弾並のトンデモ発言が飛び出す。


「とっても気持ちよかったです。陶冶さん。私、男の子とこんなことしたの初めてです……」


「でええええええ!?」


 ま、まさか。寝ている間にオレはきらりと……あんなことを!?


「ちょっと待て、きらり。お前……その、具体的にオレに何をした?」


「何って。寝ている陶冶さんのお布団に潜り込んで一緒に寝たんです。大好きな男の子と一緒に1つのお布団でおねんねしたら、赤ちゃんができる……お母さんに言われたとおりに」


 ん? 


「それって……ただオレと一緒に毛布で寝た……だけ?」


「はい。とっても気持ちのいい睡眠でした」


 きらりは大真面目な顔をしてうなずいた。


「いや、あのさ。一応確認するけど、それって冗談、だよな。まさか高校生にもなって、そんなことで子供ができるとか考えてないよな?」


「え? 違うんですか?」


 きらりは無垢な瞳でオレに質問してきた。


「ああ。ただ一緒に寝ただけで子供ができたら、とんでもないよ」


「じゃあ、じゃあ。どうやったら赤ちゃんができるんですか!? 教えてください、陶冶さん……!」


 半泣きになってきらりがオレに抱きついてくる。


「お、おい」


 途端にオレのビッグマグナムがギガマグナムへと変貌しそうになった。ただでさえも、起き抜けの状態だってのに!


「落ち着けよ、きらり。何でいきなりこんなことするんだ。めっちゃ嬉しい……ああ、いやいや! 混乱するんだけど」


「よく芸能人ができちゃった婚で結ばれているので、これだと思って……陶冶さんの赤ちゃんを妊娠すれば、陶冶さんと結婚できるんじゃないかと……」


「いやいやいや! もっと段階踏もうよ。遊園地とかでデートしてさ、指先が触れるだけでドキっとしたり、砂浜で追いかけっこして、つかまえてごらんなさ~いとか、思い出を積み重ねようよ!」


 乙女か、オレは。


「段階……ですか。そうですね。少し急ぎすぎたのかもしれません。できちゃった婚は諦めることにします。当初の計画通り、陶冶さんの心をジワジワと侵食していくことにします」


 侵食って……何気に怖いことを言うなこいつは。


「そ、そうか。ていうか、きらり。そんなに子供が欲しいの?」


「はい。たくさん欲しいです」


「たくさんっていうと……野球チームができるくらいに?」


「うふふ、陶冶さん。それじゃスケールが小さすぎますよ。この世界を私達の子孫で埋め尽くすぐらいです。戸波頭、琉美威、月姫、星姫、璃緋斗、玲音、優愛、大明神(ライト)……もっともっと欲しいです」


 きらりチルドレン勢ぞろいじゃないか。いや、最後の大明神はお初か。大明神でライトって……絶対いじめられるぞ。


「すごいスケールだね。まあ、頑張って」


「はい! 頑張ります! それじゃ私、着替えてきますね」


 意味を理解して返事しているのかわからないが、きらりは笑顔でテントを去って行った。


 にしても、この世界を私達の子孫で埋め尽くすぐらいって……いったいどれくらいなんだか。まあ、オレには関係ない。確かにきらりは可愛いし、家庭的だが存在がホラーだ。


 選ぶならやっぱり……お姫様みたいにおしとやかで、可愛い子がいいなあ。聖王の娘……亡国の姫君。


 オレが勇者としてランドールを取り戻したら、もしかするとお姫様とお近づきになれるかも。どんな子なんだろう、お姫様……。


 ま、今は考えても仕方が無いな。旅を続けて、ランドールに行かないと。オレは考えをまとめると、テントから抜け出した。

PCぶっこわれたので、次回更新は22日ごろになります。

ごめんなさい。。

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