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新たな魔法の習得

「さて、そろそろだな」


 午後4時33分。買い物を済ませ各々の準備が完了し、オレ達5人はセーブポイントの前に集合した。


 結局母さんと顔を合わせることはできなかったが、仕方が無い。できれば、25年前の戦いの話やアドバイスを求めようと思ったけど、まだ時間はある。次の機会にしよう。


「短い間でしたけど、すっごく楽しかったです! お姉さまの娘さん達とも、とっても仲良くなれました!」


 レリアは母さんに会えなくて不満かと思っていたが、姉ちゃんと妹の顔を見て満足したみたいだ。2人とも母さんの若い頃に似てるらしい。


「異世界は天国のようだった……ワシ、もう死んでもいい」


 アーシャは空いた時間で姉ちゃんと秋葉原に行ってきたようで、戦利品の同人誌を抱えてほくほく顔だ。


「2人とも、異世界ライフをエンジョイできたみたいだな。アリス、きらり。お前達のほうはどうだ?」


 アリスを見ると、嬉々とした様子でデカイ旅行カバンの中身をぶちまけた。


「準備万端ですよ、陶冶くん! ちゃんと14型の液晶テレビとPS3持ってきたし! やっぱグランド・セフ○・オート5は外せないよね~。無双とバトルフィー○ドで悩んだけど、アサシンク○ード持って来ちゃった!」


「ちょっと待て。お前は今から一体どこへ行って、何をするつもりなんだ。あえて言うぞ? そんな装備で大丈夫か?」


 オレは、アリスのカバンからはみ出ていたエルシャダ○の箱を片手に、そう言ってやった。


「だいたい、電源はどうするんだ? 携帯ゲーム機ならまだしも……」


 一番の疑問を口にすると、アリスはその答えを待っていたのか、レリアに抱きつく。


 そういえば昨日、レリアは自己紹介で雷系統の魔法が得意とか言ってたが、まさか?


「レリアはね、雷系統の魔法が得意なんだよね~! だから、ちょっとこのプラグを持ってみて?」


「はい? 別に構いませんが……」


 そう言ってアリスは、レリアにPS3の電源コードとテレビの電源コードを、それぞれ両手に持たせた。


 あ、やっぱりか。


「そしてお次はお待ちかね。雷魔法を発動させようね、レリア!」


「は、はい!」


 レリアの足元に魔方陣が描かれる。すると、テレビの電源が付いてゲーム画面が表示された。


「やったー! 大成功! これで電源供給はいつでも可能だね! レリアありがとー! 大好きだよ!」


「わたくし、こんな使われ方嫌です!」


 レリアは電源コードを両手に持ち、しくしくと泣いた。


 魔法にこんな使い方があるだなんて……。まさに自家発電だな。


 けれど、一言いってやらねば気がすまない。


「……アリス。とりあえずだな」


「うんうん! 何かな陶冶くん。アリスさんのナイスすぎるアイデアに、びびって声も出ないかね?」


「あとでエルシャダ○やらせてくれ」


「いいよー!」


 これはこれで、ありだろう。うん。


「で? お前まさか、ゲームだけじゃないだろうな?」


「冗談はよし子さんだよ! いくら私でも、ちゃんとお着替えやお菓子は持ってきてるよ! ほら!」


 と、アリスはもう1つの旅行カバンをオレの目の前に突き出し、中身をチラッと見せてきた。あ、今なんか白い布が見えたような……。


「まあいいや。きらりも着替えは持ってきてるし、食料品は一緒に選んだから……じゃあこれで準備は万端と。あとは……」


 携帯を見ると、4時38分。世界が交わるまで、あと少し。


 あと少しで、当分ここには戻って来れない。いや、もしかしたらもう二度と……。


「ごめん、ちょっとジュース買って来る。すぐ戻るよ」


 皆にそういい残すと、学食前の自販機までダッシュしてコーラを買い一気飲みした。心地よい刺激が喉を通過し、わずかに残った甘味が舌の上で踊る。


 さて、行くか。


 急いでセーブポイントに戻ると、ちょうどいい時間になっていた。


「行くぞ、皆」


 答えは無い。けれども皆同じことを考えているのは、目を見れば解る。


「世界を救う旅へ」


 扉を開き、三度目の異世界へ。


 エルフの森に出ると、空気を思いっきり吸い込んだ。そして、思い切り吐き出して、村へ向う。


 村ではすでに馬車の準備がされており、入り口には見送りにエルフ村の人々がたくさん集まっていた。


「よし。それじゃ皆、荷物を詰め込んで。今のうちにトイレも忘れるなよ? オレはちょっと別に用事がある」


 大勢の村人の中から紋章師のお姉さんを探し出すと、紋章を刻んでもらうように頼む。


 馬車の幌の部分に乗り込み、前回と同様下着一枚になって紋章を刻んでもらった。


「ありがとう、お姉さん」


「いいのよ、勇者さま。私にできることはこれぐらいだもの。レリアのこと、守ってやってあげてね。あの子は、この村で最年少のエルフだから、本当は行かせたくないのだけど……25年前のこともあるし、なにより勇者さまのことが大好きみたいだから、仕方がないわね」


「うん、大丈夫。レリアのことは、オレに任せてください」


 お姉さんは頭を下げると、馬車から降りて村の中へ戻って行った。


 レリアは村人から可愛がられているんだな。この村にとっては、村人一人一人が家族同然なのかもしれない。


「あ、レリア。ちょっとこの電源ケーブル握ってて……お、ドライヤーもいけるね。きらりちゃん、貸してあげるね!」


「うう……わたくし、こういう扱いはなんだか嫌です」


 ……今は自家発電機になってるけど。


 オレが紋章を刻んでもらっている間に、馬車の外で色々家電の動作確認をしていたようだ。


 雷系統って、なんか便利そうだな。


 ともあれ。オレも新たな紋章を刻んでもらった。


 この旅の間に使いこなしてみせる。氷属性の魔法を。

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