表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/37

赤白の真の姿+真打ち登場

「体は幼女。頭脳は大人!? すごい……本物の合法ロリだ! これは……燃えてきたよ? アリスさん、やらかしちゃいますよ!」


「何をやらかす気だ……アリス?」


「本気を出していないのは、私も同じだもん。……行くよ!」


 アリスは地面に大剣を突き刺すと、瞳を閉じて叫んだ。


「オーバードライブ!」


 アリスの体が赤い光に包まれると同時だった。


 身体能力を強化する魔法……それはおそらく、自己治癒能力も強化されるのであろう。先ほどアーシャによって付けられたアリスの傷が、みるみる塞がっていく。


「限界っていうのは、超えるためにあるんだよね……! えへへ。一度言ってみたかったんだ、このセリフ。さて、それじゃ始めるようか、アーシャちゃん?」


「面白い……異世界の勇者、アリス。斬り甲斐はありそうだ……!」


 どちらから仕掛けたのかは解らない。ただ、気が付いたときには鉄と鉄がこすれ合う音が聞こえていた。


 飛び散る火花。早すぎる2つの影。疾風迅雷って言葉は、まさにこの戦いを示すものだろう。


「は!」


「やぁ!!」


 気合のこもった2人の声が村にこだまする。一体どちらが優勢なのだろうか。ハイレベル過ぎる剣戟に、周囲はただ見守ることしかできない。


「アリス……!」


 加勢するべきか? いや。一対一を受け入れて助かったのはこちらだ。


 周囲のオークたちが一斉にかかってきても、なんとか乗り切れる自信はある。いざとなれば、指輪を外して全力で魔法を放てばいい。そうすれば、オレだけは助かるかもしれない。


 けれどたぶん、爆発の余波やらで、村人すらも巻き込んでしまうだろう。


 このままアリスがアーシャを倒し、指揮官を失ったことで退却してくれればいいのだが……。


 さらに一際大きな打撃音がしたかと思うと、2人はつばぜり合いのまま、一進一退の攻防を繰り広げていた。


 アーシャの二刀とアリスの大剣が、ギリギリと音を立て、力の拮抗を示している。


「やるな」


「アーシャちゃんこそ!」


 ――互角。


 2人は刃を弾き後退する。ゼエゼエ、と荒い息を吐きながらも瞳に闘志を秘めたまま。


「……スピードはある。ここぞという場面の勝負勘もいい。敵に回せば恐ろしい使い手と言わざるえん……だが」


 アーシャはニヤリと笑うと、天を突くように刀を掲げた。


「圧倒的にパワー不足! 見せてやろう。我が刀、赤龍と白龍の……真の姿を!」


 アーシャには、もう一段階上があったのか……?


 アーシャの刀が……刀身が、まるで生き物のように柔らかく伸び、彼女の体を覆っていく。


「鎧!?」


 刀の刀身がそれぞれ右半分、左半分の鎧を形成し、ハーフプレートアーマーになった。


「これが、ワシが赤白と呼ばれる所以である」


 赤と白のコントラストの鎧。右半分が赤で、左半分が白。赤白とは二刀ではなく、この鎧の状態のことだったのか。


「この姿で闘うのは、魔王様以外ではお前が初めてだ。……光栄に思うがいい、小娘!」


 ズシリ、と重そうな音を立て、アーシャは一歩踏み出した。防御力を向上させた代わりに、スピードを犠牲にしているようだが……。


「遅いよ! それじゃ、斬りかかってくださいって、言ってるようなものだよ!」


 アリスが大剣を構え、駆ける。


 一瞬姿が消えたかと思うと、アーシャの背後に回りこんでおり、剣を大きく振りかぶった。


 アーシャは無防備だ、やれる! 直撃コースだ!!

 

「いっけえええええ!!」


 フルスマッシュ。全力で叩き斬った。示現流のような二の太刀要らずの一撃必殺が、アーシャの鎧にクリティカルヒットする!


「赤白の絶対防御を破れるとでも思っているのか? 愚かな」


 だが。


「そんな……」


 アリスの剣が……真っ二つに折れていた。


 当然ながら、アーシャの鎧は無傷だ。


「この鎧を破壊し、ワシを負かすことができたのは過去に1人だけ……魔王様以外にはおらん。ワシに勝つこともできぬ非力な輩が、魔王様を倒そうだなどと……異世界人は笑いにも長けているのか! フハハハハ!」


「まだ、まだ負けてないもん!」


 アリスは申し訳程度に刃がくっ付いた剣の柄を拾うと、再びアーシャに切りかかった。


「愚かな小娘だ」


「きゃ!?」


 アーシャの右手の手甲が、ムチのような刃を形成し、アリスを貫いた。


 貫い、た?


「ぁ……」


 アリスはひざまづくと、そのままうつ伏せに倒れてしまう。


「アリスーーーー!」


 急いでアリスに駆け寄り、抱き起こす。


「大丈夫か、アリス!?」


「ん。……うん、大丈夫。このくらいの傷……すぐふさがるよ」


 力なく笑うアリス。言葉通りすぐに自己治癒能力が活性化され、傷口が塞がっていく……が、やはり重症の為か治りが遅い。


「ごめんね、陶冶くん。誘った私が、こんなので。ごめん……ね」


「もういい、しゃべるな。お前はそこで回復を待て」


「陶冶……くん?」


「後はオレがやる。あいつを倒してお前のカタキをとって、レリアを取り戻す。見た目なんかにだまされるもんか。やってやるさ」


 オレはアリスの頬をなでると、アーシャを見た。


「所詮は異世界人。魔王様の寵愛を理解できぬ野蛮猿。そこの小娘は、さらに頭の悪いガラクタではないか。お前も――」


「黙れよ」


「何?」


「教えてやるぜ合法ロリ。オレを怒らせた今この瞬間が……お前の死亡フラグだ!」


 オレは、指輪を抜き取った。


 まるで重い荷物を降ろした後のように、体が軽い。力が溢れてくる。


 今なら神でも悪魔でも魔王でも、何だってぶっ飛ばせそうだ……!


「その魔力は……魔王様と同じ……いや、それ以上の!?」


 アーシャが震えている。強いからこそ、相手の力量が解るのだろう。


 だけど、相手の力量がどうとか、今はそんなのどうでもいい。


 高校に入って初めて出来た大切な友達なんだ。性格はヘンだけど……可愛くて明るくて良い子なんだ。


 そんなアリスを傷付けたんだ。相応の返礼をさせてもらうぜ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ