表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/37

赤白VS田中勇者

 アーシャが二刀を構える。先ほどまでの頼りない幼女はどこへやら……身を引き裂くような闘気を放ち、赤白の名に恥じない四天王振りだった。


 ジリジリと空気が張り詰めていく。立っているだけでも体力を奪われているみたいに息苦しい。対峙しただけで解る。


 ……こいつは強い。武道の心得がないオレでも、直感的にそう判断した。


 だが、オレには魔法がある。伝説級だかなんだかの、トンデモパワーが。


 マニア受けしそうなジジイ言葉の幼女相手に、負けるかよ。


 この世界を守るって決めたんだ。オレが相手になってやるぜ!


「ただの幼女じゃないってワケか……いいぜ、オレがお前をやってやる……! 楽しませてくれよ? アリス、きらり。お前達は下がっていろ」


「陶冶くん陶冶くん」


 魔法を使おうと集中しかけたとき、アリスが後ろからオレの肩をポンポン叩いてきた。


「ん? 何だ、今いいとこなんだ、邪魔するな」


『ただの幼女じゃないってワケか……いいぜ、オレがお前をやってやる……! 楽しませてくれよ?』 


 アリスはスマホを印籠のようにオレの目の前に突き出し、どこかの危ない人の妄言を再生している。


「ひゃあああああああああああ!! やめて! いますぐ消して! それ割りとガチで犯罪者のセリフだから! おまわりさんこっちですだから! ちゃんと状況を補足して! 目の前に凶器持った危ない幼女いるんだから!」


 どこの性犯罪者だよ! これじゃオレが幼女を襲うみたいじゃないか! しかも『何が楽しませてくれよ?』だよ! 楽しめねーよ! セリフだけってマジやばい。ていうかこの状況だと、オレがロリコーンじゃね!?


「あはは。大丈夫大丈夫。さすがにこれはやばいから、消しとくね!」


「うん。ありがとう……」


 アリスはスマホを操作すると、オレの前に出た。


 ……よかった。オレ、社会的に殺されるところだった。さすがに連続再生とかされたら、オレのライフは0よ。


「陶冶くん。ここは、このアリスさんに任せて欲しいの。アーシャちゃんとは……私がやる」


 アリスは不敵に笑うと、大剣を装備して構えた。


「ほう?」


 それを見たアーシャも、唇を歪ませて笑う。


「丸腰の陶冶くんじゃ、相性が悪いんじゃないかな? 接近戦になれば、魔法は不利だよ。だから、私がやるよ」


「そうか……そうだな」


 アリスはオレの手をそっと握り、可愛らしい笑顔を浮かべた。


「陶冶くんばかりに、危ないことを押し付けたりしないから。同じ田中同士なんだから、ね?」


 オレのことを心配してくれているのか。アリス……。


「ああ。わかった。……けど、無理はするなよ? お前はオレの大切な……友達だ」


「ん……友達か。まだまだ私は陶冶くんルートに入る手前、共通ルートっていうわけだ。大丈夫、私は死なないよ。陶冶くんルートに入って、エンディングを迎えるまで」


「は? 何言ってんだお前」


「それじゃ、行って来るね!」


 アリスはりりしく笑うと、背中を見せ闘気をみなぎらせる。セーラー服姿の女子高生に巨大な剣。そのミスマッチな光景は、力強く、美しかった。


 アリス……負けるなよ。


「行くよ、アーシャちゃん! 正々堂々、一対一で勝負!」


「ほう? よかろう。ワシとお前の一対一。ワシも武人だ。この勝負。誰にも手は出させん……来い、小娘!」


「小娘じゃないよ、アリスさんだよ!」


 一気に間合いを詰めたアリスは、アーシャに切りかかった。


「む!?」


 巨大な鉄の塊が、アーシャの小さな体に襲い掛かる。


 アーシャはそれを正面から受け止めようとせず、横に飛んで回避した。


「この小娘……できる! さすがは異世界の者」


「まだまだぁー!」


 第一撃をかわされたアリスは、今度は体を一回転して横に薙いだ。凄まじい物理エネルギーを内包したその一撃は、威力、スピードともにさっきの攻撃の比ではなく、アーシャに直撃する。


「むう!?」


 勝った。だが、そう思った一瞬の気の緩みが、アリスにスキを作った。


「きゃ!?」


 さっきの一撃はアーシャに確実にダメージを与えていたものの、致命傷じゃない。


 魔族は人間よりも頑強な体を持つのか、常人であれば死んでいたであろう一撃を食らいながらも、アーシャは二刀でアリスを突き、反撃を仕掛けてきたのだ。


 そして、土ほこりにまみれながらも、嬉しそうに笑う。


「やりおる! これほどまでに血湧き肉躍るのはまっこと、1000年振り! 久方ぶりに赤龍白龍を血で汚すに相応しい相手と、見えることができた!! この時ばかりは神とやらに感謝してやってもよい!」


 幼く小さな体を震わせ、豪快に笑うアーシャ。


 アリスのほうはかすり傷で済んだようだが、動揺が激しい。四天王の1人が本気を出した。つまり、ここからが本番ってわけだ。


「そうか。つまりヤツは……」


「そんな。それじゃあの子……」


 オレとアリスは同時にその事実に気付くと、声を上げた。


「今まで本気じゃなかった……のか!?」


「合法ロリ……ていうこと!?」


 うん、確かにそうだね。1000年振りだとか言ってたから、きっと1000歳は越えてるよね。けどそんなこと今はどうでもいいでしょ、アリスさんよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ