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世界を半分やろうとか言われても、答えは決まっている!

 お姉さんを森に残すと、オレとアリスときらりの3人でエルフ村へ向った。


 魔王軍四天王赤白のロリコーン……一体、どんなヤツなのか。お姉さんの話では二刀使いの剣士らしいが……たくさんいるエルフの中からレリアを選んだのだ。


 きっと名前の通り、ロリコン野郎なのだろう。そう考えれば、四天王だかなんだか知らないが、大したことなさそうに思える。


 だが……その考えが間違いであった事に、オレはすぐ気付かされたのだ。


「貴様が異世界の勇者とやらか? 何だ、女子供ではないか。その程度でワシら魔王軍に楯突こうとは……笑止!」


 エルフ村に到着したオレたちが見たのは、焼き払われた家々と、囚われたエルフ村の人々。そして、処刑寸前のレリアだった。


 村中央に建てられた柱にレリアはくくりつけられており、気を失っているのか、瞳を閉じてうつむいている。ケガらしいケガは見当たらないので、ひとまず安心だが……。


「お前が……魔王軍四天王の1人、ロリコーンか?」


 そう問いかけると、ロリコーンは嫌そうな顔をして答えた。


「いかにも。異世界人にまで名を知られているとは、光栄だな」


 レリアの横に仁王立ちしていたロリコーンが、オレを見据える。


 汗が額を滑り落ちていく。呼吸が激しい。それほどまでに、ロリコーンの存在は圧倒的だった。


「可愛い~!」


 そう口走ったのは、きらり……ではなくアリスだった。


 アリスの視線は、ロリコーンのフリルが付いたスカートに注がれている。


 そう、オレの考えは間違いだったのだ。なぜならロリコーンは……。


「か、かわいいだと!? 勇者どもめ、ワシを動揺させる作戦か!? そんなことを言われても、ぜんぜん嬉しくないからな!」


 ――ロリコーンは、10歳くらいの幼女だったのだ。しかもツンデレっぽいぞこいつ。


 ふわふわしたフリル付きのスカートと、赤髪ツインテールを揺らし、真っ白なほっぺたを真っ赤にして叫ぶ。


「我が双刀。赤龍と白龍のサビにしてやりたいところではあるが……勇者よ。お前達に魔王様からありがたいお言葉がある。心して聞け!!」


 赤白の二つ名がごとく、赤い刀身の刀と白い刀身の刀を小さな体で振り回し、彼女はそう言った。


 なんだか見ていて危なっかしい。ちっちゃい子が無理して刀を振ってるように見える。もっと小さいサイズのほうがいいんじゃないか?


 これじゃ別の意味で、そんな装備で大丈夫か? と問いかけたくなる。


「あ、あと! ワシの名前はロリコーンでは無い。その名前で呼ばれるのは好かん。アーシャだ。アーシャ・ロリコーンである。だから、アーシャと呼べ!」


「わかったよ、ロリコーン」


 あえてその名前で呼んでみる。ていうか、ロリにロリコン言うのもヘンな気分だ。


「ぐぬぬ……なんという精神攻撃だ……勇者め、やりおる」


 よほど名字で呼ばれるのが嫌いなのか、ロリコ……アーシャは頭を抱えて膝を付いた。


 というか魔王よ。こんな四天王で大丈夫か? と、問いかけたくなる。


 オレは幼女好きの汚らしいおっさんを想像していたのだが、現物がこれでは戦う気も失せてくるぞ。ちょっと叩いただけで泣き出しそうじゃないか。


 いや? まさか……これが狙いなのか? だとしたら――魔王恐るべし。そしてツンデレ+ツインテールとは、よくわかっていらっしゃる。


 好敵手と認めてやってもいい。


「ワシは魔王軍四天王が1人、赤白……。うん、がんばらなきゃ。がんばって魔王様のお言葉を伝えなければ!」


 ファイトよ、アーシャ! みたいな感じで健気に立ち上がると、不敵な笑みを浮かべて刀をオレに向けてくる。狙ってやっているのか、こいつ?


 だとしたならば――手強い。


 そして、コホンと咳払いをするとこう言ったのだ。


「魔王様はこうおっしゃった。『もし私の部下になるならば、世界を半分お前にやろう』、とな」


「な、何!?」


「素晴らしい提案だろう、勇者よ。元々お前達はこの世界の人間ではないのだ。歩み寄るべき友は、他にもいる。魔王様と共に覇道を歩むことを許されるのだ。これほど光栄なことはあるまい」


 その場にいた全員が生唾を飲み込んだ。


 オレたちの答えを待っているのだ。


 この世界の救世主となるか、破壊者となるか。だが、その答えは決まっている。


 オレは振り返ると、2人の顔を見た。アリスもきらりもこくりと頷き、オレもまた頷く。


 どうやら、全員同じ意見らしい。そうだ。オレ達は……勇者だ。


「よし、じゃあ全員で言うぞ。アリス、きらり!」


 オレたちの心は1つ! だから、答えも1つだ。


 オレ達は、同時にアーシャの質問に答えた。


「だが断る」


「世界半分よりも、アーシャちゃんが欲しいでーす!」


「世界なんかに興味は無いわ。私が欲しいのは、田中さんの遺伝子を受け継いだ子供だけ。田中さんの心を操る呪いと引き換えならば、仲間になってやってもいいけど。ただし魔王(あんた)はただのパシリ」


 見事にバラバラだった。いや、当然だけど。一応皆答えはノーってことで……いいんだよな?


「な!? 魔王様の心を踏みにじるとは……愚かな。愚かなり異世界人ども」


 アーシャは以外だったのか、信じられない物を見るような目でオレ達を見る。信じられないのはこちらも同じだ。


 誰がはいそうですね、と。魔王の手下になるっていうんだ。世の中そんなに甘くないことくらい高校生だって解るさ。


「器が小さ過ぎるんだよ。よこすなら全部よこせってんだ」


 オレは顔を真っ赤にして憤慨するアーシャへ言い返した。


「アリスさんは、アーシャちゃんのスカートの下以外に興味はありません!」


「この世界はもともと私と田中さんの物なのよ。それを上から半分やるとか何? 今すぐ死んで詫びなさいよ。このヘタレが!」


 と、アリスときらりも言い返す。


「よかろう。ならばよし。このワシが切り伏せるまで。赤百の剣技を身に刻みながら、魔王様を貶めたこと、後悔するがいい!」

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