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 ヤンに対する申し訳なさから勇者アロイスが泣きながら酒を飲んでしまい、そのまま酔いつぶれてしまった。

 こういう追放物で、勇者がこれだけ申し訳なさそうなのって見たことないな。とハンナは思う。

「明日の戦闘に備えて、今日はもう寝るぞ」

 ゲオルクがアロイスを担ぎながらそう言った。これで今夜はお開きである。

「アロイスお酒弱いよねえー」

「そうそう。だから、夜も健全そのもの」

「がっかりだよね」

 女二人が明け透けなことを言っている。ハンナはそれを黙殺した。仲間の女二人が彼のことを狙っているのは隠しもしていないので、みんなが知っている。

 彼女達はもう一人の女であるハンナに見せつけるようにアロイスに接近しているが、アロイスはわかっているのかいないのか。鈍感気取りなのか、女達のアプローチは空振りに終わっている。


 ハンナはアロイスと同郷の出身だ。二人は幼馴染で、アロイスの最初の仲間がハンナである。今の二人はただのパーティー仲間でいい仲などではない。ハンナ以外の女達はハンナに出し抜かれてはいけないとハンナを敵視する。だが、元々二人は幼馴染で気安い仲なので、アロイスはハンナに気軽に声をかける。レーニ達はそれがおもしろくないらしく、どうにかしてハンナをハブにしようとがんばっている。


 ハンナは内心で勝手にしてくれ、と思っている。


 ハンナは最初はただの村娘だった。それが、アロイスと旅に出たことで女戦士となった。そして、旅の途中で女神の鎧を手に入れた結果、彼女はビキニアーマーの女戦士となった。


 そう。女神の鎧はビキニアーマーなのだった。どういうわけか、この鎧、他に服が身に着けられない。強さと引き換えに一種の呪いがかかっているのではないか、とハンナは思う。一応、下着とマントは身に着けることができる。だが、鎧の下に衣服を着こんだり、上から着込んだりなどができないのだ。

 鎧の下に着込んだ場合は鎧の形に服が破れ、上に着込んだ場合は服が吹っ飛ぶ。どういう原理なのか、さっぱりわからない。


 この女神の鎧を手に入れてから、ハンナはずっと半裸の生活だ。


 こんな格好の女が勇者の本命になるわけないだろうが!


 転生前のメタな視点を持つハンナは内心でそうツッコミを入れているのだ。




 転生前のハンナは20代の日本人女性だった。家族は弟一人。両親は数年前に事故で亡くしていた。弟はかつては将来を渇望されたアスリートだったが、両親を亡くした当時の事故の影響で足を悪くしていた。

 弟のメンタルはとても強いものだった。事故当初は未来を断たれて表情を無くし、何も手がつかない様子であったが、気づけばまた明るく笑うようになっていた。アスリートだった彼が新たに見つけた趣味はサブカルチャーだ。それまで見なかった映画、アニメ、漫画、小説、それらをスポンジが水を吸うように履修していった。

 そして、新たな友人を見つけ、また外の世界へと羽ばたいていった。


 ハンナの知識は彼譲りのものだ。ハンナ自身はそれ程小説も漫画も読まない。弟がはまっている作品の感想をべらべらとしゃべるのをただ聞いていただけだ。楽しそうに話す彼を見て、元気になって良かった。とこちらまで楽しい気分になっていたのだった。




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