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異世界トリケラロード  作者: 島地 雷夢
箱庭の森
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ここは何処?

 ……にしても、だ。

 俺は日光浴をしながら池の一角に視線を向ける。

 そこには俺が池ポチャしても微動だにせず未だに水を飲んでいた兎っぽい奴と鹿っぽい奴が佇んでいる。今では満足したのか、池のほとりで座り込んで陽の光を浴びているけど。

 そいつらをっぽいと表現したのは俺の知ってる兎とか鹿と明らかに違う部位が存在するからだ。

 まず、兎。額に立派な角が生えている。俺の知っている兎はあんな殺傷能力が高い武器を備えていない。

 次に、鹿。何か肩からごつい突起を出してる。見るからにあれでタックルされたらタダじゃすまなそうにごつごつとしていて、固そうだ。

 うん、こんなの日本にいない。と言うか、地球上に存在しない。

 そもそも、だ。トリケラトプスの生息していた白亜紀には兎も鹿もまだ生まれていない。

 その時代にいた哺乳類は、確か鼠のように小さなものだけだった筈。

 なので、兎と鹿が目の前にいる事が不思議でならない。あ、いや。違ったわ、兎っぽい奴と鹿っぽい奴な。

 何故だ? 何故恐竜と哺乳類が一緒にいる? と思考を巡らせた俺は一つの可能性に至る。

 それは、ここは地球ではなく全く別の世界ではないか? というものだ。

 俺がまだ人間だった頃は、異世界を題材としたゲームや漫画、小説があった。それらは元の動物に何らかのアレンジが加えられた生き物がいたり、地球上では太古の昔に絶滅した生物が普通に闊歩していたり、と常識では考えられないような世界観を有していた。

 安直ではあるが、ここが地球ではない異世界だとすると色々と納得出来る。

 恐竜とある程度進化した哺乳類が一緒にいる事。そしてその哺乳類も地球上に生息しているものと様相が異なっている事。

 異世界だと決めつけて思考を停止させるのはいけないと思うけど。俺ではここが限界だ。大穴として、遥か未来の地球と言う可能性もあるけど……。

 まぁ、どちらにしろ。言える事は一つだ。

 ここは俺の生きていた時代ではないし、トリケラトプスが生きていた頃の地球でもない、人間の時代を生きた俺にとって未知なる世界、という事だ。

 未知の世界という事で、異世界という言い方はあながち間違いではないよな。何せ、俺が生きていた時代の世界とは全く異なっているんだから。

 兎にも角にも、俺はこの世界に恐竜トリケラトプスとして生まれたんだ。人生……じゃない。恐竜生を謳歌して行こうではないか。

 さしあたっては、まずは食料確保に身を乗り出そう。

 水を飲んで喉は潤い、日光浴によって体に熱が溜まって動きやすくはなったけど、少し腹が空いてきた。

 腹が減っては戦は出来ぬと言う。まぁ、別に戦をしようとは思ってはいないけど、辺りを散策する為には身体を動かす為のエネルギーが必要になってくる。

 と言う訳で、俺は体を起こして食料を探しに行く。


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