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異世界トリケラロード  作者: 島地 雷夢
箱庭の森
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卵と魂、異世界へ

 人類が生まれる遥か昔。

 古代の地球の覇者として君臨していたのは恐竜だった。

 その巨体を持って大地を揺らし、我が物顔で闊歩していた。

 大空には翼竜が飛びまわり、大海には魚竜が自在に泳ぎ回っていた。

 恐竜が地球に存在していたのはおよそ二億五千万年前から六千六百万年前までの中生代と呼ばれる時代だ。

 中生代は三畳紀、ジュラ紀、白亜紀と更に三つの時代に区分される。

 三畳紀には爬虫類が巨大化して恐竜が出現し、シダ植物や裸子植物が分布を広げた。

 ジュラ紀では恐竜はその数と種類を更に増やしていき、鳥類の祖とも呼べる存在が現れ、被子植物が出現した。

 白亜紀は恐竜最後の栄華の時代であり、天からの災厄――隕石の激突により地表から恐竜の姿は消えて行った。

 古代の地球に隕石が衝突し、大地が盛り上がり土砂が降り注ぐ中、ある恐竜の卵は偶然にも、絶滅の危機から逃れた。

 隕石の衝突により次元が歪み現れた亀裂へと、大地が揺れた振動により転がり落ちたのだ。

 恐竜の卵が向かった先は地球とは全く異なる別世界。

 それは生態系はもとより、生物としての根幹が地球とは全く異なる場所だ。

 その世界にいたある一柱の神は別世界からの来訪者を見付けた。神は卵の中にいる生命の肉体をその世界に対応したものへと作り変えた。

 しかし、卵の中の赤子は肉体の変化に耐えきれず、変化が終わった時には外の世界を知らないまま絶命してしまった。

 神は特に憐れんだりはしなかった。この程度で死ぬようではどの道この世界では生き残れはしない。ならば今ここで死んだ方がマシだろう、と。

 別世界から迷い込んで来た卵への興味が失せ、神は元いた場所へと戻って行った。

 神がいなくなって直ぐの事だ。

 ある魂が卵の中にいる死した恐竜の身体に入り込んだ。

 それは恐竜が繁栄していた時代よりも遥か未来。地球に大量に存在する人間と言う種族の魂だ。

 幸か不幸か、地球で死んで直ぐに魂は輪廻転生へと組み込まれる前に恐竜の卵と同様に次元の歪みに呑まれ、この世界へとやって来た。

 人間の魂は自然と近くにあった恐竜の卵へと吸い寄せられ、中へと入り込み死してあまり時間が経っていない肉体へと取り込まれた。

 それは恐竜の肉体に残った外の世界を見たかったと言う未練の残滓が為せた技か。

 はたまた人間の魂に残ったもっと生きたかったと言う生への執着心が為せた技か。

 魂が肉体へと取り込まれた瞬間、肉体と魂は一つとなった。

 死した肉体に脈動が戻り、息を吹き返した。

 異世界に適応した身体に作り変わった恐竜は、卵内部にある栄養を取り込んで着々と成長していく。


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