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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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ここであったが百年目

 突然現れたのはお市でした。取るものもとらずに慌ててやってきたようです。お市は勝頼を見つけて、


「なんであなたがここに?義昭様の忍びだったのですね、伊那勝頼などと嘘の名前を使って」


「それがしは伊那勝頼です。義昭様と一緒にいるのは偶然ですので気にしないで下さい」


「嘘、何が正しいの?何を信じたらいいの?義昭様、義昭様は一体何をするためにやってこられたのですか?おきかせください」


 お市は物凄い見幕でしたが、言葉が丁寧なのはさすが大名の息女。お市の質問に誰がどう答えるのか、勝頼は黙っています。今は口を開かない方が良さそうですが、何が起きたのでしょう。その時、吾郎の配下がやってきて勝頼に耳打ちをしました。おっと、それは一大事。


「お市様、何があったのですか?先にそちらをお聞かせくださいませんか?」


 冷静だな明智十兵衛。こいつ何か知ってるとか?


「明智殿でしたね。長政様がお亡くなりに…………、あなた達さえ来なければこんな事には。どう責任を取るおつもりですか?」


 そこまで話してからお市は座り込んでワンワン泣きだしました。勝頼が目配せすると、徳と親衛隊のゆず、はな、かながお市を労わりつつ家の外へ連れて行きました。


 さっき勝頼が耳打ちされたのも同じ話でした。勝頼は外に出ていた忍びをもう一度呼んで詳しい話をさせました。義昭一行にも聞かせたかったのです。





 織田信長、浅井長政、徳川家康の連合軍は、六角義賢の観音寺城をあっという間に制圧しました。六角義賢は多勢に無勢とわかると城を放棄して逃げ出したのです。ただ、支城の日野城を守る蒲生賢秀は抵抗し続けています。信長は、


「主人が逃げたのにここまで抵抗するとは敵ながらあっぱれ。余が使ってやるから誰か連れて参れ」


 こういう時にでしゃばるのが木下秀吉です。いつものようにしゃしゃり出て日野城を開城させ、蒲生親子を本陣まで連れてきました。


「殿、連れてきました。蒲生というそうです」


「織田信長である。蒲生と申したな、見事な闘いぶりであった。そのまま領地を安堵するゆえ、余に仕えんか?」


「信長様、蒲生賢秀でござる。こちらに控えるは鶴千代と申し、それがしの嫡男にございます。是非お側に置いていただきたいと」


「いい面構えだ。人質にするにはもったいないな。わかった、預かろう」


 蒲生賢秀は許されて織田信長の配下となりました。これにてこの戦は完了し、美濃から近江を通って京へ出る道筋が確保できたのです。




 戦が終われば次は足利義昭を手に入れなければなりません。信長は、秀吉と浅井長政を呼び出しました。


「猿、お前は義昭の居所を掴めなかった。そうだな?」


「それがしはも、もう必死に、それはもう探し探し探しまくりました。小谷城の中も外も城下町も近隣の村までしらも潰しに探しましたが、見つけられませんせした。今も部下を小谷城下に置いて調べておりますが見つかっておりません」


「そうか、長政よ。義昭はお前のところを訪ねなかったか?」


「来ておりませぬ」


「そうか、猿、お前は下がれ。長政、酒でも飲もう」




 翌日、秀吉は再び信長に呼び出されました。今度はどの件だ?受け答えを間違える酷い目にあってしまう。秀吉は色々と考えましたがわかりませんでした。正直にぶつかるしかあるまいて。


「来たか猿、遅いぞ」


「木下秀吉、お呼びにより参上仕りました。で、なんでございましょう?」


「このたわけが! 今まで何をしておったのだ。昨日長政が義昭の居所を白状したぞ」


「なんですと。それがしが何度聞いても答えず、お市様にも聞いたのですが答えていただけませんでした」


「この役立たずめ、役に立ちそうだから取り立ててやったのにその程度の事しかできんのか!すぐにお市の許へ行け。長政も匿っている場所はしらないそうだ。お市が手配したらしい」


「それで浅井は腹を切りましたか」


「このたわけが! 何で長政が腹を切らねばならん。この件はあいつは被害者だ。義昭が突然訪ねてきて処置に困っていたそうだ」


「すぐにここを発ち小谷城へ参ります。必ずや義昭を連れて参ります」


「失礼のないようにな。相手は将軍様だ」


 秀吉は、信長のところから離れてから、


「なーがーまーさーー、許さんぞ」


 と言いながら周囲に当たり散らします。この戦に同行していた秀吉の弟、小一郎は、


「兄者、どうしたのだ」


「おお、小一郎、いいところにおった。知恵を貸してくれ。次は失敗できん」


 秀吉は現状を小一郎に説明して色々な手配を済ませた後、小谷城へ向けて旅立ちました。




 肝心の浅井長政ですが、信長と2人になった瞬間、土下座です。


「兄上。申し訳ありませぬ」


 かくかくしかじかこういう事で……………、長政は全て正直に話しました。敵対する気はないし、もう重臣を無視してでも連れてくるつもりだと。それを聞いた信長は自分の予想とだいたい合っていたので気にもせず、


「わかった。戻って連れて参れ」


 とだけ言って料理を運ばせ昼間から酒を呑み始めました。長政は信長に付き合うために軍を先に自領へ戻しました。自領の事も心配なのです。長政は翌朝、一部の兵と後から追いかけることにしました。




 秀吉は選りすぐりの二百名とすぐに出発しました。小一郎は後から来ることになっています。目指すは小谷城、今度こそお市にいいところを見せないと、とすでに秀吉のポイントがずれています。そして急いで進む秀吉の視界に浅井長政達が映りました。道は一本道、かなり遠くまで見渡せます。


「ここであったが百年目、ただでは済まさん!」





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