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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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秀吉とお市

「お市に会いたいだと。木下殿、お市はあまりお主の事を好んではおらぬようで会いたくないと申しておった。すまんが諦めてもらえぬか?」


「浅井様。それがしは信長様よりお市様へ渡すようお預かりした物がございます。それを直接渡せなければ美濃へ戻る事が出来ません」


 秀吉はニヤっと笑いながら言いました。会わずに帰るわけなかろう。長政め、今に見ていろ!


「義兄上からか。仕方あるまい、ここで待て」


 長政は面白くなさそうに部屋を出て行きました。秀吉はお供に蜂須賀小六を連れてきています。小六はその隙に従者を呼び寄せ指示を出します。小六の従者は忍びでした。指示は場内のどこかにいる足利義昭を探せ!です。

 しばらく部屋で待っているとお市が侍女を連れて部屋に入ってきました。お腹の大きいお市を見て、


「お市様、なんと、孕んでおいでか?いやいやこれは、ん、んーーーー、おめでとうご、ございます」


 秀吉はお市の懐妊を知らなかった。好きな女が別の男の子を孕んでいるのを見て動揺している。それを見た蜂須賀小六は刀の鞘で秀吉を叩いた。


「しっかりしろ、情けない。お市様、お久しゅうございます」


「秀吉に小六か。久しいの。まあ、秀吉には二度と会いたくはなかったが兄上の土産を持参したとなれば仕方あるまい。さっさと出しなさい」


 秀吉は憎っくき長政め、と腹わたが煮えくりかえっている。小六が再び鞘で叩く。


「痛いであろう、主人の頭を叩く部下がどこにおる!」


「うるさい、しゃんとせいや。全く」


 小六は一時期秀吉の上司でした。今は立場は逆転していますがお互いに遠慮のないいい関係なのです。秀吉は、オッホンと軽く咳き込んでから、


「お市様。信長様よりこちらの品をお預かりして参りました。お納めください」


 秀吉が持ってきたのは綺麗な絹の袋でした。お市はそれを手に取り、何だろうと中をみると、


「こ、これは!」


 その表情を見て秀吉は、やはりお市は足利義昭の行方を知っていると確信しました。袋の中には九つの棒が入っていました。


「お市様、それを見てそんなに驚かれるとはやはりご存知なのですな?この城の中にいると見ましたがそうなのでしょう?」


お市は普段通りの対応で、


「秀吉。何のことですか?私が驚いたのは中に入っていたのがただの木の棒だったからです。兄上が土産によこした物と聞いてどんなに良いものかと思っていたらただの棒なので驚いたのです。本当にこれを持ってきたのですか?」


「そうです。公方の居場所を教えてくれと信長様がおっしゃっているのですよ。先程の驚きよう、この秀吉の目はごまかせませんぞ、この城にいるのでしょう」


「私は知りません。話はそれだけのようですね。兄によろしくお伝えください」


 お市は部屋から出て行った。小六と秀吉は顔を見合わせて、あれはやはり知っていると同時に呟きました。秀吉達は小谷城下の宿に腰を据えて城を調べる事にしました。ところが調べても何も出てきません。忍びの従者は一週間に渡り城の中に潜り込み周辺込みで調べましたが足利義昭一行の姿を見つける事が出来ませんでした。


「おかしい。あのお市様の驚きようは間違いない。あの九本の棒で公方と浮かばないお人ではないはずだ」


「秀吉よ、そうは言うがこれだけ探していないのだから。それにお市様が賢いのは俺も知っているが妊婦だろう。そっちに神経が行っていて頭が回らないのではないか?本当にただの棒で驚いたのかも知れんぞ」


「いいや、お市様はそんなお方ではない。きっといるぞ、もう一度探させろ。このままでは帰れない」


 ところが、秀吉に帰還命令が出ました。新たな使者がやってきたのです。その名も佐々成政、この男は秀吉が嫌いでした。ひょっと現れた秀吉がどんどん偉くなっていくのが気に入らないのです。


 成政は宿に着くと、一方的に


「木下殿、殿より帰還しろと命令だ。六角を攻めることになった」


 六角氏は近江の大名で、元々は浅井家の主筋に当たるが今は敵対している。


「佐々殿。もう少しで足利義昭様の足取りが掴めそうなのだ。ここは何とか上手いことできな……」


「何を申す。殿の命令は絶対だ。それにこの戦には浅井様にもご出馬いただく」


「そういう事か。わかり申した。すぐに戻って準備いたす」


 秀吉は小六を連れて引き上げて行った。成政は面白くない。何で殿はこんな男を使うのだろうか。そう思いながら城に向かい、浅井長政に信長の書状を届けに行った。出馬要請を届けに。




 3日後、浅井長政は兵三千と共に琵琶湖沿いに観音寺城へ向かいました。長政はこの観音寺城で産まれました。城主の六角義賢に長政の父、久政が仕えていたからです。その後色々あって今は敵対していてその城を攻めることに何の躊躇いもありません。


 信長がこのタイミングで六角氏を攻めたのには理由があります。美濃からの上洛の途中にある六角家の領地が目障りで服従するよう申し出たところ反発してきたのです。足利義昭の行方は知れませんが、すぐに見つかるだろうと見つかった後の事を考えていたのですが。

 それともう一つ、浅井長政のところに義昭がいるかはっきりしない、この出馬命令に長政がどう応じるかの反応を見るためでした。


 長政は普通に出陣してきました。何事もなかったかのように。


 その頃、小谷城下にあの男が到着しました。そう、勝頼です。

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