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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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春の笑顔

「というわけだ。北条へ氏康の娘を送っていったら姉が出てきた」


 古府中に戻ったところに話を進めます。勝頼は正室の彩と話をしています。


「姉上様ですか?三国同盟の時の。お達者で何よりでございます。殿、今のお話で気になった事があるのですが申してもよろしいですか?」


「たまに育ちの良さが出るな、彩は。いうてみよ」


「まずは私の正室としての立場です。もう今川家はありません。私が正室でいる意味がなくなってしまっています。殿は離縁したりはしないとし、ん、じ、て! おりますが武田の跡取りの妻には相応しく無くなってしまいました」


「それは気にしなくてもいい。この後、どこかの有力大名が話を持ちかけてくるかも知れんが、彩を捨てたりはしないよ」


「その場合でも正室、正妻、どちらでもいいです。格を少しでいいので上げてくださいませ。そうでないと私は徳さんに勝てるところがなくなってしまいます」


「ええ、ええと、ね。勝つとか負けるとかじゃない、よ、ね?」


「いいえ、これは女の戦なのです。殿の側室は皆、いい方ばかりで普段は仲が良いのですがそれとこれとは話が別です。私にもお子をお授けくださいませ」


 なんだこの勢いは!


「わかった。しばらく伽はお前とにするよ」


 彩は急に笑顔になり、


「それでは次です。上杉の件ですが、今回、武田の領地が膨れ上がりました。上杉が北条と組んで武田を攻めることはありませんか?」


 勝頼の危惧もそこにありました。上杉、北条、徳川、織田が組んで武田に対抗してきたらどうなるかです。すでに各地へ忍びを派遣して情報収集に力を入れています。特に、上杉と織田の動きにです。


「可能性は他にもある。今出来ることは駿河、遠江の国衆を武田の力にする事でだ。反武田派を駆逐し、優秀な武将は取り立てていく」


 諏訪、高遠で行ったような士と農を分けるのはすぐには難しそうです。勝頼は信玄に箕輪城で見せた勝頼の兵の強さの秘密を説明したところ、一部の武将に同じように武士と農民をわけて訓練をやらせ始めました。山県昌景、武田信豊の軍がそれです。ただ、新しい領地では他にやることも多くそこまではまだ手が回っていません。


「2年あればかなり整うがそこまでは待てないだろう。いや待ってくれないというのが正しいか」


「殿。夜はまたきていただくとして、春の顔を見に行ってやってくださいまし。待っていますよ」


 話長かったのお前のせいじゃなかった? と思いながら勝頼は側室のしおの部屋に入りました。部屋の中には寝ている赤子を見つめているしおがいました。勝頼に気づくと、しーっと指を口にあててから小さな声で、


「お帰りなさいませ。お待ちしておりました。春は今寝ておりますので起きたら抱いてやってくださいまし」


 しおは徳が見つけてきた娘です。徳は、勝頼には子が沢山いた方がいいと思い、あちこちの町や村から綺麗所を集めて自分の待女として勝頼に好きな時に手を出すよう頼んでいました。それで目にかなったのがしおと華名なのです。しおは妊娠当初は高遠にいましたが安定期に入った頃、古府中へ引っ越しました。彩が面倒見ると言って頑張ったようです。


「しばらくは戦もないはずだからゆっくりできると思うぞ。おう、本当に小さいな、ほれ、ほれ」


 勝頼は春の頬をツンツンします。


「オギャー、オギャー」


「殿、いけません。せっかく寝たところでしたのに。抱いて泣き止ませてくださいまし」


「おう、そうか。これ、泣き止むのだ、ほれ」


 一向に泣きやみません。それを聞いて華名も部屋にやってきました。勝頼を見るなり、


「殿、何をなさっておるのです。そんな抱き方では泣きやみませんよ」


 と、冷たい目線で見てきます。勝頼は最近女難の相でも出てるのかな?と思いながら春をしおに預けて部屋を出ました。華名の部屋に行き話をして春が泣き止んだ頃、しおの部屋に戻ると、春が勝頼の方をを見ています。


「ほれ、父じゃ、父だぞ、わかるか?」


「アー、ブー」


「そうだ、わかるか。春は良い子だ」


 春は勝頼を見て笑っています。何やら嬉しそうです。勝頼は、この子の笑顔を見て絶対に戦に負けてはならぬと思いました。以前、三雄にどうしたいか聞かれた時に、民を守りたい、信玄を上洛させたい、といいましたが、


「次の定例会ではっきり言おう。戦のない世を作りたいと。それが俺の望みだ」





 今川が滅んでから一年が過ぎ、1567年、永禄10年になりました。この間、武田は駿河に城を設け確固たる体制を築き上げています。安倍金山は信玄の弟、河窪信実が管理し順調に金を産みだしています。そして勝頼は三雄との定例会をこの一年で10回も行ないました。教科書を写すのもついに中学三年生まで完了し、その教科書は徳、竹中半兵衛が熱心に読んでおり知識を深めています。当然書き写した勝頼もその2人には負けるものの、現代人の一般教養レベルの知識を持つ事になります。


「三雄殿。教科書はここまでか?」


「手に入ったのはね。ただ、これ以上は教科書よりも専門書の方がいいだろう。何が知りたいか教えてくれれば用意するぞ」


 勝頼は、2つの要求を出しました。三雄は目を輝かせながら、


「そんな物を戦国時代に出したら反則だな。敵がかわいそうだ」


「三雄殿。俺は父上を上洛させたいという気持ちは変わっていないが、もう一つやりたい事が出来た。戦のない世の中にするにはどうしたらいい?」




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