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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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北条氏政

 北条氏政。氏康の次男でしたが長男が亡くなり後継として勝頼の異母姉を正室としています。これは三国同盟によるものです。三国同盟とは北条、今川、武田間で婚姻関係を結びお互いが親戚となって共同で事を行うとしたもので、北条の娘が今川へ、今川の娘が武田へ、武田の娘が北条へと嫁いで行きました。今は亡き雪斎さんが頑張って実現した平和同盟です。なのですが、それは3家が同じくらいの強さがあって成立していた、さらに今川義元という巨大看板があってのものでした。


 今川義元が亡くなって三国同盟がいずれ終わる事は北条氏康もわかっていました。ただ、ここまで素早く決着し、今川が滅ぶとは思っていませんでした。元々北条と武田は仲がいいわけではありません。北条氏康は勝頼に嫁の実家を攻めた事に嫌味をつけてきました。それを聞いた北条氏政は、


「勝頼殿は義弟になるのだな。氏政である。お主の姉はいい嫁だぞ。だが、だからといって戦にならないとは限らないのがこの戦国の世だ。いずれ武田を攻める日が来るかもしれない。武田が今川を滅ぼしたようにな。ですが勝頼殿、今回は妹を助けていただいて感謝しています」


 氏政の口調は最初はトゲトゲしかったが途中から和やかになった。本来は和やかな性格なのだろう。勝頼はそれを聞いて最初は氏康と打ち合わせしていた事を言っていて、途中から自が出てきたのだと推察しました。


「義兄上、お初にお目にかかります。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません。重ねて申し上げますが武田は北条家と争う気はありません。今回、後継候補のそれがし、それと国境を守るこの小山田を連れて参ったのも敵意のない事を示すためでございます」


 小山田は黙って聞いていたがここで口を開きました。


「武田は西を見ております。北条様の邪魔はいたしません。それに上杉という共通の敵もおりますゆえ、よしなにお願い申します」


 氏政が口を滑らせた。


「その上杉が使者を……」


「氏政、余計な事を申すな! 勝頼殿、上杉も一向一揆の相手で大変らしい。休戦の依頼が来ているのだ。本願寺の顕如上人が裏で糸を引いているというが、顕如上人と信玄が義理の兄弟であったな。信玄は親戚を都合のいいように利用して、場合によっては切り捨てる、これは言い過ぎか。だが勝頼殿。北条を甘く見ない事だ。信玄にはそう伝えてくれ」


「承知いたしました」


 話が終わりました。上杉ねえ、なんか怪しい、とそこに氏政が思いもよらぬ事を言いだしました。


「勝頼殿。梅に会って行かぬか?久しぶりであろう」


 梅というのは氏政夫人であり、勝頼の異母姉の事です。梅は三条夫人の子で、死んだ太郎義信の血の繋がった妹にあたります。勝頼には姉が2人います。1人がこの梅で、もう1人の姉、ふくは穴山信君に嫁ぎました。


「義兄上、よろしければぜひに」


 断る理由はなかった。会話は盗み聞きされるだろうが構うまい。





 氏康、氏政は退席し、小山田は先に城外へ出ました。そのまましばらく待っていると綺麗な着物を着飾った姉が部屋に入ってきました。


「四郎!久しぶりですね。立派になって!」


「姉上。ご健勝でなりよりでございます。お会いするのは10年ぶりくらいですかね」


 勝頼は古府中へ行く事が少なかったので梅と会うことは少なかったのですが、梅はこの弟を可愛がっていました。その時はまだ太郎義信が家を継ぎ、この弟はいずれ家臣になると思っていて行く末を心配していたのです。


「兄上の事があってずっと心配しておりました。氏政殿に聞いても的を得た答えはいただけず。ここで会えるということは北条と武田は安泰と言うことですね、そうでなくては困ります。私はそのためにここへ嫁いだのですから」


「姉上。父上は北条家と争う気はありませんよ。それがしが使者で来れるくらいですから」


「勝頼は武田の跡取りですから軽はずみな真似はしてはいけませんよ。そういえば結婚したのですね」


「はい。今川の娘を正室に、側室も何人かおります。子も産まれました」


「そうなのですか?それはおめでたい、何かお祝いをしなければいけませんね。男子ですか?」


「それが女子なのです。まだ会えていないのですが」


「なんですって! 男というのは本当にダメですね。父親がそばにいない出産がどれだけ不安か、勝頼!そなたはおわかりか?」


「いや、姉上。それがしは戦に出ておりましたゆえ仕方なく」


「それに側室に先に産ませたのですか?全く、見境のない。そういうところは父親譲りなんですね」


「いや、姉上。勘弁してください」


 流石の勝頼もタジタジである。しばらく説教が続いた後、ほかの弟妹の話になりました。


「ふくは穴山殿に嫁いで幸せそうですよ。よく手紙が来るのです。菊や松はどうしていますか?」


「古府中で元気に過ごしています。まだまだ子供ですよ」


「そうですが、いずれは縁談の話が出ましょう。女はそのためにいるのですから」


 梅はボソッと本音を言っている。この時代の武将の娘は戦略結婚の道具でしかない。


「姉上。いい嫁ぎ先になるよう尽力いたします。それと盛信ですが、織田の養女を娶る事になりました」


 この会話は聞かれている、それを承知で何気なく情報を流した。さっきの上杉の話が気になっているのでジャブを打ってみた。北条がどう出てくるか?


「そうなのですか?いつですか?」


「まだ具体的には決まっていません。織田の方から話があったのですよ。戦も終わりましたので甲斐に戻れば進展が起きているかもしれません」


 しばらく世間話をした後、勝頼は退席した。城下に宿を取っていたが城へ泊まるように言われ、小山田、蒲原、菅原とともに宴に参加し、翌朝小田原を出て古府中へ向かった。行きよりも帰りの方が荷物が増えてしまった。ほとんどが姉からのお土産である。



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