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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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小田原城

 世間話が続きます。そのうちに蒲原の話になり、菅原の話になりました。勝頼はこの男を気に入っています。


「菅原殿はご出身はどちらかな?」


「遠江の菅山というところです」


 えっ! そんな事ってある?菅山には石油という黒い油が取れるので今のうちに占拠しとくように三雄に言われていて、すでに村の半分は伊那の人間が移民しています。まさかあそこの出身とは、縁という物は面白いと言いますがさすがに驚きました。


「そうですか。菅原殿とはご縁がありそうだ」


「伊那様。菅山をご存知なのですか?街道からも離れた何もないところですが?」


菅山、現在の静岡県牧之原市です。そこは日本での数少ない石油が取れた場所なのです。その石油は優秀でそのままガソリンの代わりに車に入れても走ったとか。勝頼はすでに黒い油を少しずつ汲み上げ始めていました。


「菅山で黒い水を見た事がなかったか?」


「はい。うちの裏手の山の中に黒沼と呼んでいるドロドロした水が溜まっているところがありましたが、それの事でしょうか?」


「そうかもしれんな。俺はまだ見た事がないが、そうか。あそこに家がな。どうして遠江から駿河へ移ったのだ?」


「菅山内で相続争いがありまして、長男が家を継ぐ時に叔父に殺されました。次男の私は大井川を渡って逃げ出したのです」


「そんな事が」


「逃げてたどり着いたのが能満寺という寺で、そこのご住職に蒲原様を紹介されたのです。その時に蒲原様から原の字を頂いて菅山から菅原に姓を変えたのです」


人に歴史ありですね。勝頼は菅原の賢さが気に入っていて取り立てたいと思っていました。さて気になるのはその叔父とやらですが、


「吾郎」


勝頼は伊那忍びの棟梁を呼びます。


「菅山村は今どうなっている?」


「はい、村は閑散としていて土地が余っていましたので、買い上げて村民を増やしています。黒い水が出る山も買い上げました」


「誰に金を払ったのだ?」


「長と名乗った菅山という男にです。菅山はもらった金で働きもせず酒ばかり飲んでいる怠け者です」


「菅原殿。実はな、俺は黒い水が欲しかったのだ。それでお主の家の物であった山ごと買い上げた。どうであろう、俺に仕えないか?菅山を治めてくれ」


菅原は、話が進みすぎてついていけてませんでしたが、やはり頭がいいようですぐに整理できたようです。


「伊那様。それがしは蒲原様にご恩があります。それに菅山に未練はありません。何卒ご容赦を」


それを聞いた蒲原隆則は真っ青になって、


「菅原、なんて事を。伊那様に対して失礼であろう」


「いや、すまん。俺が無理を言ったのだ。だが菅山は俺が手に入れているし、その叔父も場合によってはそのままにしてはおかない。それに何より俺は菅原殿を気に入っているのだ。蒲原殿、いい家臣を持たれて羨ましいぞ」


勝頼は吾郎に菅山にいる菅原の親族を調べるように指示しました。蒲原は菅原の忠誠心は嬉しいものの冷や汗が止まりません。小山田が助け舟を出しました。


「蒲原、気にせずとも良い。伊那殿は無理な事をいうお方ではない。それにお主の配下であれば伊那殿の配下という事だ」


「小山田殿。それがしは武田の棟梁ではありませんぞ」


「いずれはなるお方。この小山田、伊那殿を主君と思ってお仕え申す」


なんでそうなった?小山田は小山田なりに勝頼を見ていました。主人として申し分ないと思ったのです。武田の重臣達は決して仲がいいわけではありません。信玄への忠義でまとまっているだけなのです。そしてこの小山田は重臣達の中では冷遇されてきたという思いが心底にはあります。今のうちに取り入ろうとしているのかもしれません。





そうこうしているうちに一行は小田原城下に入りました。一行の中央には籠に乗った氏真の元妻、楓が乗っています。籠の周辺には北条家の紋が飾られており、この一行がVIPだとわかるようになっています。勝頼は事前に北条氏康に娘を保護したので連れて行く事を連絡していましたので、スムーズに城へ入る事ができました。城の中には勝頼、小山田の2名が通されました。通された部屋は広間のようで30畳はあり、上座には掛け軸がかかっています。来客用の部屋かもしれません。そこに北条氏康、氏政親子が入ってきました。


「よく楓を送り届けてくれた。礼を申す。余が北条氏康だ」


貫禄のあるおっさんが偉そうに話します。なんだろう、強い後光のようなものが見えます。これが戦国武将とでもいうような感じです。


「伊那勝頼でございます。武田信玄の名代として楓様を送って参りました」


「小山田信茂でござる」


伊那勝頼?信玄の子か、そうか、わざわざこいつをな。信玄め。


「勝頼殿、お父上は壮健か?」


「はい。お屋形様はこの度の戦でも指揮をとられ勝利を得る事が出来ました。北条様におかれましても富士川までご領地を広げられた事、お喜び申し上げます」


「何をいうか。何もしないで転がり込んできたようなものだ。今川家がなくなっては仕える主人を変えざるを得まい。だが、この戦、終わってみれば武田の一人勝ちではないか。信玄め、相変わらず小狡いやつよ」


勝頼はそれを聞いて、やはりな、と思いました。


「この度の戦は徳川がのんびりとしていたため遠江まで出る事が出来ました。徳川とは現状の領地を境とし争わぬ事で了承を得ております。さて、氏康様。信玄公より北条様とも争うつもりはないとお伝えするよう言付かってきております。今回の楓様をお連れしたのも北条様と争いたくないためでございます」


「それについては礼を言うしかあるまい。だがな、三国同盟は切れた。お主は今川の嫁を貰っていながら今川を滅ぼした。のう、氏政」






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