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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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家康の使者

 秋山は軍勢を2つに分けました。曳馬城へは跡部、長坂に山家三方衆を付けて向かわさせ、井伊谷には秋山、武藤、そして二俣城の松井他の国衆が従っています。井伊谷に入ると、お寺の坊さんが迎えてくれました。


「次郎から聞いております。武田様の軍勢が来たらお味方するように言付かっております」


 秋山は坊さんに尋ねます。


「ここには兵は残っているのか?」


「戦えるものは50名ほどです。後は次郎について出ております」


 次郎というのは井伊直虎の事です。女性なのに次郎なのです。さて、秋山は井伊谷の兵を加えて気賀方面へゆっくりと進み始めました。武藤喜兵衛は、物見を出し状況を探っています。気賀まで1kmのところで兵を止めます。


「秋山様、今川氏真が岡部正綱とこちらへ向かって来ています。ここで待ち受けましょう」


「武藤殿。ここで待つ理由を聞かせてくれ。そのまま氏真を討って仕舞えば手柄であろう?」


「はい。ですが、氏真と一緒にいる岡部正綱殿は勝頼様が調略され武田に付くことになっております。この後引き上げてくる軍勢の中にも味方がおりまする。ここで攻めかかっては味方も攻撃する事に、ここは今川勢にとどめを刺させるのがいいかと思います」


「主君を殺させるのか?鬼だな」


「そのくらい出来なければ、というより覚悟を見たいのです。井伊谷の当主、井伊直虎殿は氏真に許嫁を殺されています。できれば井伊殿の手にかかるようにしたいのです」


 その今川氏真は前方の軍を見て味方の増援かと喜んだのもつかの間、武田軍と気付き途方に暮れています。前方の武田、後方の徳川です。


「岡部よ、本当に武田は裏切ったのか?」


「何を今更。ご覚悟を決めなされ。もはやここまで」


「余は死にとうない。なぜ、なぜじゃ。父上が死んだだけでなぜこんなに早く今川が滅ぶのだ?我は源氏真なんだぞ!」


「ご覚悟を!」


 何が源だ、源氏と言うならもっと立派であって欲しかった、と岡部が考えていると、そこに井伊直虎と由比正純が追いついてきました。


「お屋形様。徳川に増援が来て小笠原殿は討ち死にされました。今は一色殿が抑えておりますが時間の問題です」


「井伊か。そうだ、なぜ井伊谷に武田軍がいるのだ?」


「私は井伊が用意できる全兵を率いてこの戦に出ております。武田がくれば井伊谷は保ちません。それに、」


「それに、なんだ? うわぁ、な、なにを」


 井伊直虎が刀を抜いて氏真の胸を袈裟斬りに斬ったのです。その瞬間、岡部正綱はやっちまったと思いましたが直ぐに冷静になり、


「皆のもの、よおく聞け!これより岡部正綱、由比殿、井伊殿は武田に投降する。武田と組んで徳川を迎え撃つ。良いか!今川家は今、ここに滅んだのだ。これからは駿河、遠江の領主である武田信玄公にお仕えする。逆らう者は何処へでも行くがよい、止めはせぬ。止めはせぬが次に出会った時は容赦せぬ」


 兵は大変な事になったと動揺しています。そこに井伊直虎が、興奮冷めやらぬ顔で、


「私は許嫁の仇をとった。今川氏真に直親殿を殺されたのだ。これで心置きなく武田の家臣になれる」


 と言えば、由比正純は、


「由比正純である。すでに由比の領地には、そして駿府にも武田軍が入ったそうだ。すでに今川の領地はどこにもない。だが我らは安泰だ。国へ帰れば今まで通り、いや、今まで以上の暮らしができるであろう」


 と説明する。主人に従って戦に出たら、目の前であんなに強大だった今川家が滅んだなんてそりゃ混乱しますよね。兵はそうこうしているうちに直虎の部下が今川氏真を木に吊るし、いわゆる磔状態にしました。徳川がやってくる方へ向けて。


 旧今川軍は秋山、武藤の前に出て跪き武田に忠誠を誓いました。そのまま先鋒となり徳川に向かおうとしたところ武藤喜兵衛に止められます。


「そこもとらはやっと逃げてきたのであろう。長期に渡る戦でお疲れのご様子。そこで見てて下されば結構。なあに、徳川は仕掛けては来ません」


 武藤喜兵衛は徳川の到着を待つ事にしたのです。





 しばらくして徳川の使者がやってきました。使者は石川数正と名乗りました。武田側は秋山信友と武藤喜兵衛が相手をします。


「以前の約定では大井川を境に領地を分け合うはず。なぜこの遠江の、しかも三河に近いところに武田軍がいるのです?これは約定違反、すぐに軍を引いていただきたい」


「秋山信友と申す。はて、石川殿は何を言っているのか?武田は今川を攻めると徳川殿に連絡をいたしました。そして約定というのは双方が今川領に攻め入ってぶつかるのが大井川であろうという意味です。ぶつかったところで我らが争うことの無いように事前に取り決めをしたと聞いております」


「であればすぐに駿河まで引き上げていただきたい」


「それはできません。すでに遠江の城はほとんど武田が落としています。徳川殿の足が遅いのでこうなったのですよ」


「何ですと?秋山殿は信濃から下ってきたのではないのか?」


「その通りです。お屋形様率いる別働隊が駿河を制圧し、そのまま曳馬城まで来ています。浜名の湖の東側はすでに武田の領地でございます」


「それが約定違反と申しておるのです」


「武田は徳川殿と戦って城を奪ったのではありません。今川の城を攻め落としたのです。どうしてその城を徳川殿にくれてやらねばならぬのです?」


 石川数正は真っ赤な顔をして頭から湯気が出そうです。武藤喜兵衛は、とどめの一言を放ちます。


「それでは一戦交えますか?お引き取り下されば徳川殿への攻撃は控えましょう」



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