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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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井伊谷

 由比の言葉は現実的でした。一色家は苦労してきた家系です。今川に忠義を尽くすつもりでここまでやってきましたが確かに戻るところがないのかもしれません。


「由比殿。もっともである。だが、それで主君を裏切るというには武士としてふさわしくないのではないか?」


 一色は由緒ある家柄です。落ちぶれたとはいえプライドがありました。


「一色殿。それがしもここにいる井伊殿も小笠原殿もみな、これまで必死に戦ってきた。決して死を恐れているわけではない。だがこのままでは………」


 由比はうまく一色を説得できずに困っていました。井伊直虎は由比が仲間だと聞いています。一色、小笠原には調略の手が伸びていない事も。その上である考えが浮かびました。


「まず、ここにいては徳川にやられてしまいます。まずはお屋形様のいる気賀まで下がりましょう。しんがりは井伊が務めますので皆は急いでくだされ」


「いいや、気賀は井伊谷のすぐ近くではないか?井伊殿が先に行き国衆とともにお屋形様を守り、追ってくる徳川を抑えるべき。しんがりはこの小笠原が務めましょうぞ」


 直虎の思った通りの展開になりました。まずはここから離れるのが先決です。ここにいても死ぬだけです。後は気賀まで行ってみないとわかりません。


 徳川は援軍を得て攻めかかろうとしています。小笠原は作っておいた馬防柵で道を塞ぎ徳川の勢いを消そうとし、下がりながらも鉄砲や弓矢を打ちかけて必死に抵抗しています。皆が逃げる時間稼ぎですが、徳川の攻撃も強く長くは持ちそうもありません。一色は小笠原の奮戦を見て由比、井伊を先に行かせました。小笠原隊は奮戦虚しく全滅してしまいました。


「ここで家が絶えるのか。この一色昌典、ただでは死なんぞ!」


 一色は必死の抵抗をし、井伊、由比を逃す事に成功しました。徳川家康は一色の戦いぶりに感動し、生け捕りにするよう命じました。


「よくやった。酒井、忠勝、数正は先に行け!氏真の首を取るのだ。さて、お主、名は何という」


「今川の人質風情が立派になったものよのう。会った事はなかったか?一色昌典という」


「一色?もしや三河守護の家系か?」


「いかにも。一色家は全国に散らばっておるが、それがしは三河守護の直系。三河を追われて祖父が駿河へ住みついたのだ。今では今川氏真公の家臣だ」


「ほう、一色殿。見事な戦いぶりであった。どうだ、俺に仕えんか?あの氏真に未来は無かろうに。働き次第では三河に領地を与えても良いぞ」


「戯言を、斬れ! 主君を支えるのが家臣の役目である」


「立派な心がけだ。だが、三河を追われたのは家臣に裏切られたからではないのか?」


「知らないのか?松平が裏切ったのだ。そうだ、思い出したぞ、それがしの祖先が松平に嫁いだそうだ。まあ今更どうでもいい事だが」


「我が祖先がか? うーむ、俺はそこまでは知らん。長く人質だったせいで松平の昔の事は知らんのだ。一色殿、これもなにかの縁かもしれん。殺すのは惜しい。しばらく同行せい、氏真の最後を見せてやろう」


 一色は、よく考えれぼこいつは親戚なんだなと思い、氏真のその後も気にはなっていたので同意しました。


「好きにしろ」



 一色は縛られた状態で徳川と共に気賀へ向かう事になりました。


 徳川家康は全軍を率いて追いかけます。三ケ日を越え西気賀まで来た時に前方に十字の形をした木が立っておりそこに男の死骸が吊るされていました。


「あ、あれは」


「今川氏真ではないか?」


「殿に報告を、急げ!」


 家康は一色を連れて今川氏真の死体を見上げています。どういう事だ?一色は震えが止まりません。氏真には、正面から斬られたような傷が見えます。


「一体何があったのだ?岡部殿は、井伊殿はどうしたのだ?」


 一色は途方にくれています。家康が調査に出した物見が戻ってきました。


「何かわかったか?」


「この先、井伊谷に向かう途中に武田と思われる兵が陣を敷いております。兵の数はおおよそ五千」


「五千だと!すでに武田がここまで来ていると言うのか?将は誰だ?約定では大井川を境に領地を分けるはず」


 石川数正が追いついて来ました。


「殿、それがしが使者として参ります。このまま攻め入るよりも状況を確認した方が得かと」


 家康は石川数正を使者として派遣しました。一色はまだ呆然としています。





 井伊谷にいた武田軍は秋山信友の軍勢でした。二俣城を攻略した後、曳馬城へ行かずに井伊谷へ向かったのです。これは武藤喜兵衛の判断でした。喜兵衛は真田の忍びを使って他の武田軍の動きを逐次掴んでいました。高天神城を落とした馬場隊、掛川城を出た山県隊が曳馬城へ向かっていると聞き、そこに行くよりも家康の進軍を抑えるべきだと考えたのです。自分の考えを秋山に伝えたところ、


「お屋形様からは曳馬城で味方と合流するように言われている。軍監には従うが、本当にそれで良いのか?」


「はい。この場合命令違反にはなりません。お屋形様より徳川の動きを見張るように言われており、勝頼様からもそれがしの判断にまかせると伊那の忍びを借りて今川氏真の兵に間者として紛れ込ませておりました。氏真は我らが駿河に攻め入ったと知り駿河へ戻ろうとしています。となれば、家康は追ってくるでしょう。それをここで抑えます」



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