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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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絶好機

 徳川家康は今川の出方を伺っています。寿桂尼が死んだ事も武田が駿河に攻め込んだ事も伝わった事でしょう。どう動くか、です。家康は本多忠勝に聞きました。


「忠勝、今川はどうすると思う?」


「わかり申さぬ。それがしなら一気に徳川に攻めかかり殿の首を取った上で駿河へ戻りまする。このまま駿河へ戻っても我らが追撃し武田と挟み撃ちになるだけです」


「氏真という男は自分より弱い者には強気だ。これは臆病者の典型だ。駿河を配下に任せておく事ができない男だ。恐らくは陣を引き上げるであろう。追撃の準備はしておけよ。勿論突っ込んでこられた時の用意もだ」


 このままこっちに攻め込まれては崩されはしないだろうが時間がかかり武田にいいようにされてしまうかもしれない。今川の居留守部隊が武田を食い止めてくれる事を願うだけになってしまう。といってもこちらから仕掛けると数の差が響き勝ったとしても遠江の一部しか取れないだろう。武田信玄は並みの武将ではないのだ。モタモタしているとあっという間に駿河を制圧してしまうかも知れない。


 家康は爪を噛んでいます。これは家康の癖でイライラした時に無意識に出てしまうのです。家臣はこれを見ると家康に近づきません。絶対に動く、動くはずだ、動け氏真!


 そこに伝令が来ました。動いたのか!


「殿、今川氏真は兵四千を連れて移動を始めました。行き先は駿河と思われます」


 家康は立ち上がり、軍配を高高く掲げます。


「全軍突撃する。蜂矢の陣を敷け!山家三方衆、他の国衆にも伝令を出せ、今こそ遠江に徳川の旗を掲げる時ぞ!」


 蜂矢の陣とは中国から伝わった陣形で中央突破型突撃に有効な陣形です。家康は目の前の敵を突き破って今川氏真を追いかけてそのまま遠江を奪おうと考えました。問題は武田とどこでぶつかるかですが今はそんな事を考えている場合ではありません。まずは目の前の今川です。




 徳川の動きも今川陣には見張られています。いよいよ家康が動きました。


「こうなってはここで出来るだけ食い止めるしかあるまい。由比殿、ここに留まり小笠原殿を支援致そう」


 一色の提案に由比は乗りました。由比は武田に通じています。ここで家康をどれだけ食い止めるかで事態は大きく変わるでしょう。由比は出陣前に朝比奈、蒲原と話をし、自分が死んだ後の事を託してあります。1日でも徳川が遅れればそれだけ武田が有利になるはずです。


 当初の作戦は、遠江勢が残り由比と一色は駿河へ戻る事になっていましたが、家康の動きが早すぎました。逆にこれが井伊を助けることになります。


 井伊と小笠原だけでは持ち堪えられず、自領に付くまでに追いつかれ殺されていたでしょう。家康の仕掛けるタイミングは井伊に味方したのです。この時今川陣には五千の兵が、徳川は六千の兵がいました。今川方は一斉に鉄砲を撃ち放ちます。そしてその後は防御に徹しました。前面に盾を構えた部隊を出し、後方からは弓矢を放ちます。そして銃弾を込め終わった鉄砲を再び放つのです。今川陣は必死でした。生き残るにはここを死守しなければならないのです。


 徳川方も必死です。蜂矢の陣はカステラのような長方形の棒のような形をしています。前の兵が倒れても後ろの兵が続いて前進していきます。そして今川の盾を突き破ると槍隊が今川陣に突撃していきます。


 今川の指揮は一色昌典がとっていました。一色氏は元は一世を風靡した名門で、各地の守護も務めていました。今は衰退して全国の殆どの家が絶えてしまいました。この一色昌典は先祖が応仁の乱の後、駿河に流れ着いて焼津の地に小さな領地をもらい細々と暮らしてきたのですが、今川義元に可愛がられ小川城主になる事ができました。義元亡き後も今川に対する忠義を忘れてはおらず、氏真が信じるに値しない主人であっても尽くし続けています。


 一色の采配は見事でした。徳川の攻撃を3日凌いだのです。お互いに疲労がたまり弾薬も乏しくなってきました。家康はまたイライラして爪を噛んでいます。


「誰が指揮を取っているのだ。崩れないではないか?なぜ氏真を追いかけない?ええい、面白くない」


「殿、遅くなりました」


「おお、来たか!」


 石川数正が岡崎城から応援に来たのです。兵二千と弾薬を持って。家康が動員できるほぼ全数の兵がこの地に集結しました。三河はがらんどうですが、西の織田は同盟を結んでおり家康は信長を信じてこの戦に兵を投入したのです。


「これで勝てる!」


 今川方は物見の報告で徳川に応援が来たことを知り、軍議を開いています。そこに伊那の忍びが兵に化けて伝令を伝えてきました。


「武田軍が長篠城、野田城を落としました。そのまま二俣城へ向かっています。氏真様は気賀まで進んで立ち往生しておられます。別働隊が駿河を落とし遠江に向かっているようです」


 一同声が出ません。一色昌典が、


「気賀であれば井伊殿の勢力範囲、お屋形様を保護して武田と一戦つかまつるべし」


 といえば、由比正純が、


「今の話ではすでに駿河は武田の領地に、つまり庵原殿も朝比奈殿ももういないという事ではないか?井伊谷では長くは保ちません。ここは武田か徳川かどちらかに下るべきでは?」


「由比殿、なんと申される。今川を裏切ると言うのか?」


「一色殿。一色殿の采配のお陰でここまで戦えることができました。敵に増援が来た以上、我らは引かねば負けます。ただどこに引けばいいのでしょう?」

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