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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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三雄 逝く

 武田勝頼は何かを感じた。この感覚はなんだろう。なんとなく遠くで誰かが死んだような気がしたが今はそれを気にしている場合ではなかった。そして空を見て逝ったのか、と思い拳を強く握り締めた。



 三雄の娘、寧々は諏訪原城跡の諏訪神社にいる。二礼二拍一礼してから勝頼に話しかけるが返事がない。


「お父さんみたいにはいかないのかな。勝頼さん、お父さんからの伝言を言いますね。本当は繋がればよかったんだけど。秀吉を倒した後の事よ。鎖国しろって。理由は私にもわかるから今度繋がったら説明しますね」


 東北に行っているからいないと思って念のために来てみただけだった。久しぶりに諏訪原城跡に来るとかなりのレベルで様子が変わっている。市が観光名所にしようとしているのか、綺麗に整備されているし発掘もしているようだ。良くテレビで見かける芸能人が写っているポスターも掲示されている。いつもは裏から諏訪神社へ直行してしまうので正面に来るのは何年ぶりだろう。門をくぐり歩いていくと道ができていて案内板もある。


「こんなんだったっけ、おう丸馬出だ。多分ここのは日本一大きいのよね」


 そこには武田家の城に使われている丸馬出があった。丸馬出とは簡単に言えば堀の一種だが、この城の丸馬出は敵が進んでくると城側からの攻撃の餌食になるように作られている。城へ入るには橋を渡るしかないがその橋に近づく事ができないのだ。


「うまく作ってあるのよね。でも私の説だとこの丸馬出は馬場美濃守が作ったのを徳川が城を奪った後に改修したんだと思ってる。勝頼さんに聞いてみたいけど、勝頼さんの世界では諏訪原城は徳川が獲ってないからなあ」


 その丸馬出を上杉が今作っているとは思いもよらず。





 黒田官兵衛、死んではいなかった。瀬戸内海で海に放り出された後、海岸に流れ着き地元の漁師に助けられた。回復に時間がかかったが廣島へ行くとすでに加藤清正が大軍を連れて大阪へ向かったという。官兵衛は播磨国衆出身だ。地元へ帰りそのまま何もしないで様子を見ることも考えた。元々隠居した身だし死んだ事になっているのだからそれでもいいと思ったのだが、悔しかった。武田の船に攻撃される夢を見て魘される夜が続いていたのだ。


 地元で情報を集めているとどこから聞きつけたのか兵が集まってきた。小早川、毛利、吉川、そして小寺ゆかりの者達だ。そして官兵衛は集まった連中の説得を受け、一度死んだと思えばいいだろうともう一度やってみる気になった。兵は二万にもなった。


 進んでいるうちに八上城で小早川秀秋が死んだ事を聞いた。小さな山城を大軍で攻めて敵にいいようにやられたと聞き、武田の戦略だと感じた。おかしな武器もあったらしい。官兵衛の目的は武田信勝だった。武田に一泡吹かせられればそれでいいと思っている。加藤清正も亀山にいる信勝を攻めるために進軍しているというしならば合流を急ぎたい気持ちもあって八上城は無視した。そもそもこの周辺には小さな城や砦が無数にある。一々相手にしていては進軍が遅れるだけだ。


 だが、八上城には誰がいるのか?興味深かった。また加藤清正が亀山の手前で引き返したという報告もあり、進軍を緩めた。さあどう出てくる?


 一日待った。ここは街道だが周囲の山中には十を超える敵の砦がある。そいつらもひっそりと息を潜めている。


「使者を出せ。こちらに味方しろと言ってこい」


 官兵衛は様子伺いの意味で使者を各砦に出した。各々五百の兵を付けてだ。そのまま砦を落とすようにも見えるようにだ。丹波の衆はどう出るのか?特に八上城にいる武田中枢の人物はどう動く?





「申し上げます。敵は井ノ上に陣を取り周辺の砦を五百の兵で囲み降伏を促しています」


 物見の報告を山を降りながら聞いた。横に居る直政は、


「殿、敵二万のうち数千は山を登ったという事。こちらは二千、波多野殿に八上城周辺の城からも兵を出すように伝えておる故、三千にはなりましょう」


「数では勝てん。しかも敵は黒田官兵衛。波多野殿、各砦に繋ぎはつけられるか?」


「囲まれていては。ですがどの砦も抜け道がありますので可能なところもあるかと」


「無理はせぬように繋ぎを。合図とともに砦を捨てゲリラ戦法に切り替えだ。無理なところはひたすら籠城し機会を待て、と」


「はっ」


 波多野は山を降りたところで伝令係を集め指示を出した。直政と朽木は千名を連れて井ノ上に向けて先に進んだ。信平は、


「凱、俺の勘だが………」


「そんな事が。あのお方ならばありえます」


「俺はそれに賭ける」


 そう言った時に何かを感じた。空から誰かに見られているような気がする。空を仰いだが青い空に白い雲しか見えない。感じたのは優しい視線だ。なにか応援されているような、なんだろう、これ。


「信平様、どうかされましたか?」


「いや、なんでもない。それより波多野殿の伝令を間に合わせたい。ゼットの連中で黒田軍を撹乱してくれ」


「そんな事もあろうかと山上に待機させております。二十名ですが」


「十分だ。死なせぬようにな。お前達は兄上からの預かり者だ」


「ゼットの面々はゼットになった瞬間から死んでいます。皆その考えですからお気にせずに」


 そうだったな。だが、いや俺が弱気でどうする。



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