表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

458/471

城へ

 まだ戦は終わってはいない。山の途中では波多野の兵が小早川のしんがり部隊を攻めている。山の中腹には小早川軍の怪我人が大勢残っているのだ。怪我人は油によって落下し骨折したもの、煙を吸って斜面を転がり落ちたものなど戦力外ではあるが油断はできない。現に死んだフリをして突然小刀を投げてくる兵もいる。


 しんがりを護る源左衛門は必死だ。小早川秀秋をなんとかして逃がさねばならない。もう自分の命は捨てている。残った兵を纏めて兵列を作り波多野隊の攻撃をなんとか防いでいる。だが実際は空腹と疲労で限界だった。まさに死にものぐるいの状態だった。そこに、


「波多野殿、追いつきましたぞ」


 朽木兵が合流したのだ。朽木は勢いよく山を降って行った波多野隊が討ち漏らした敵を一人づつ止めを刺しながら降りてきた。そのため時間がかかっていたのだがここで追いついたのだ。朽木が叫ぶ。


「この上の兵は全てこの朽木元綱が討ち取った。武器を捨てて道を開ければ命は助けよう」


 それを聞いて波多野宗永は驚いたがすぐに結城信平の指示だと気づいた。これが武田のやり方なのだろう。それを聞いた小早川軍は動揺する。波多野は一度攻撃をやめて距離を取った。相手の出方を見ようというのだ。その時にこちらが血走っていては話はまとまらない。その様子を見た源左衛門は、もう殿は本陣と合流しているだろう。そこまで逃げれば持ち直せると考えた。ここで降伏するなんてあり得ない。こっちの方が兵は多いはずだ。山口様も合流すれば負ける事はない。


「一気に引けい!」


 掛け声と共に山の下に向かって走り出した。




 波多野は朽木に聞いた。


「どうなされる?」


「彼奴らには下の勝ち鬨が聞こえていないのであろう。結城様はあれは井伊直政様が何かをした声だと仰っていた」


「何か?でござるか」


「左様。井伊様は不思議なお方で行動がよめないそうだ。だがしぶといとそれだけを仰っていた」


「それは………、信頼されているという事ですか」


「おそらく。このまま追いかけよう。小早川秀秋を捕えねばならぬし」


 波多野勢と朽木勢は源左衛門達を追いかけて行った。その様子を見ていた凱は本丸の信平のところへ報告に行った。まだ小早川秀秋をついうっかり殺してしまった事はだーれも知らない。




 山の下では秀秋の首を取った井伊直政が腹を切った山口の屍の横に立ち、戦意を喪失して座り込んでいる敵兵に向かって、


「お主達、よく戦った。本来なら全員ここで首を切るところだが其方達の主人に免じて助けてつかわす。どこへでも行くが良い」


 兵達は動かない。というより動けないのだった。精魂尽き果ててしまっていたのです。その様子を見て直政は森田に、


「その方の知り合いはいるか?」


 と聞いた。森田は、


「いえ、この者達は小早川家の者だと思います。森村様の配下はおりません」


 そうか。さてどうするか?


「おい、他に兵はいないのか?」


 直政の問いに比較的身なりのいい兵が答えた。


「東の山中に怪我をした者が多数おります。お助けいただけるのであれば彼らを連れて行きたいのですが」


「好きにしていいが、どこへ行くつもりだ?」


「廣島に家族がおります。できれば戻りたいと思います」


「であれば二度と武田には刃向かわない事だ。もう戦場では会いたくないものだな」


 そう言って直政は森田達を先頭に八上城へ向かおうと歩き出した。こいつらに武田の強さを広めてもらおう、さすれば………、具体的ではないがいい方向になる気がする。幸村にうまく話さないと自慢できないな、なんて考えていたら山道に差し掛かった。そこに山の上の方から兵が現れた。




 源左衛門は山の下まで行けば小早川秀秋が本陣で待っていると信じていた。それ故に、ただただそれを信じてここまで来た。空腹と疲労でそこに待っているのが味方にしか見えなかった。


「と、殿は何処に」


 それを聞いた直政は小早川秀秋の首を見せた。


「小早川秀秋ならここにいるぞ」


 源左衛門は座り込んでしまった。ここまで怪我人を押し除けてまで前を進んできた。後からゾロゾロと兵が山を降りてくる。それを見た直政は森田に隊列を敷かせ攻撃態勢を取らせた。山を降りてきた兵達は味方でなく敵が待ち構えていた事にショックを受けてしまい、もう攻撃する気力も残っていなかった。そして波多野宗永、朽木元綱が逃げ遅れた兵に止めを刺しながら現れた。直政は、


「指揮官は誰だ?」


 皆が源左衛門を見る。源左衛門はなんとか立ち上がり、


「小早川秀秋の小姓を勤めまする源左衛門と申します。殿は立派な最後でしたでしょうか?」


 ええと、なんて答えよう。


「最後はここにいる森田殿と一騎討ちをされた。一緒にいた小姓は秀秋殿を置いて逃げて行ったぞ」


 太郎の事であろうか?あやつ、許せん。


「山口様は?」


「その者なら腹を切られた。見事な最期であった」


「教えていただきありがとうございます。武田様のご家臣様、某が腹を切りますので、他の者の命は助けていただけませぬか?」


「山口の配下は皆その向こうで休んでおる。山口に免じて殺さぬ事にした。お主は、最後まで抵抗したようだが。波多野殿、殿はなんと申しておりましたか?」


「結城様のご指示で一度降伏の機会を与えたのですが、残念ながら」


 そういう事か。直政は敵から武器を没収し波多野に見張らせ、自分は城へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
細々とメンドクサイ作品でした。もういいです。 ありがとうございました。さようなら
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ