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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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誤算

「殿のところへ!」


「井伊様のところへ行かせてはならん!」


 兵の声が交錯します。山口宗永は小早川秀秋の傅役を兼ねて小早川家にやってきています。ここで秀秋に何かあってはもう生きてはいられない。身体は疲労しているがそんな事はどこかにいってしまっている。自らが前に出て刀を振り回す。それを見た小野は、


「あれが将だ。囲め!」


 そう言って小野も山口の前に立ち塞がる。小野もここで引くわけにはいかない。お互いに抱えてる事情は非常に重い。兵の数は山口の方が多いが小野の方は全く疲れていない。山口の勢いが止まってしまうが、後ろから山口の兵が追いついて来て山口を護る。


「山口様、無茶はおやめください。ここは我らに」


「殿に何かあってはどのみち大阪へは帰れん!殿下に合わせる顔がない」


「ですが山口様に何かあっては小早川家は………」


「何を言うか、わしは殿を、殿がいてこそのわしだ。いくぞ!」


 山口はそう言って再び前へ出る。そして小野の兵を斬り捨てたところで山口の肩に矢が刺さる。小野の兵が山口を狙っていたのだ。将を狙うのは鉄則なのです。


「くっ、こんなもので」


「お下がり下さい」


 どんどん追いついてきた兵が山口の前へ出て戦っていく。





 直政は真っ赤な顔になって斬って斬って斬りまくっている。その形相はまるで赤鬼のようだ。ぶっちゃけ井伊直政は最近活躍ができていなかった。知らないうちに鬱憤が溜まっていたのです。


「オラオラオラオラ、どけー!」


 あっという間に森田達を追い抜いて逃げる秀秋を追いかける。秀秋の周りには10名の護衛兵がいたが直政の声を聞いて3名が立ち止まり直政を待ち構える。


「殿、お逃げ下さい」


 と止まった叫ぶが秀秋はその前から逃げている。秀秋はなんで自分が逃げているのか、2万の兵がいてこんな状況になったのがなんでなのか全くわかっていない。だが今は逃げるしかなかった。


 直政はあっという間に3人を斬り捨てた。その間に森田が追いついてきた。後方では秀秋の兵と森田の兵が混戦模様だ。秀秋を逃すために踏みとどまっていたはずなのだが、直政は後方から兵達の隙間を縫うように駆け抜けて行ったのだった。森田はそれを見て後を追ってきたのだった。


「井伊様、某も、と言うより某に小早川秀秋を捕えるように命じられたではないですか?」


 森田は秀秋を追いかけながら直政へ言う。直政は、


「そうであったな。まあいいではないか。急ごうではないか」


 と言って足を早める。前をいく秀秋が足がもつれて転ぶのが見えた。普段走ったことがないのだろう。すると護衛兵と思われた連中が秀秋を一瞥してから秀秋を置いて逃げていく。その中には小姓の太郎もいた。


「お、置いていくな。よ、余を護れ!」


 太郎は


「命あってのなんとかと言います。ご武運を」


 振り返り様にそう言って走っていってしまう。へっ?足元に刀が置いてあるのに気がついた。ご武運をってそう言う意味かと気付いた時には井伊直政と森田新右衛門が追いついてきた。秀秋は立ち上がり刀を抜いた。何がご武運をだ、余を誰だと思っている。秀吉様の甥なんだぞ。直政は刀を抜いた戦場には似合わない服を着た男がお目当ての小早川秀秋だとわかった。刀を持つ手が震えているのが見える。直政は秀秋の手前5mのところで立ち止まり刀を抜く。息がゼーゼーいっているがそれは秀秋も同じだった。


「結城信平が一の家臣、井伊直政と申す。小早川秀秋殿とお見受けいたす」


 秀秋を睨みながら大声で叫んだ。森田が追いついてきた。秀秋を睨む。


「お、お前は見たことがあるぞ。余の部下ではないか。そ、その男を斬れ!」


 森田は、


「小早川秀秋、お前のせいで森村様はお討死された。主人の仇、覚悟しろ」


「殺すなよ」


 直政は森田にこの場を譲ることにした。その方が良さそうだ。直政はさっき暴れたのでスッキリしたのか冷静になっている。ところが森田と秀秋はいい勝負だった。秀秋も必死で森田を斬ろうとする。殺すなという命令が足枷になって森田の踏み込みが甘いのだ。これは不味いと直政が小刀を投げた。肩を狙ったのだが秀秋が予想しない動きをしたため額に小刀が刺さってしまう。


「あっ」


 3人が同時に口から言葉が出た。そして秀秋が座り込んだ。森田は、


「殺すなと仰いませんでしたか?」


「すまぬ。こいつが頭を下げるものだから予想外のところに刺さってしまった。秀秋殿、まだ話せるか?」


 秀秋の目は虚だ。やっとの思いで喋り出す。


「余、余はここで死ぬのか」


「そうだな。なんでここを攻めたのだ。真っ直ぐ大阪に行けこんな事にはならなかっただろうに」


「き、きよ………」


 秀秋は息絶えた。森田は秀秋に首を切り、後ろを振り返り大声で叫ぶ。


「小早川秀秋、井伊直政様が討ち取ったりー!」


 それを聞いて秀秋が連れてきていた兵は抵抗をやめた。そしてもう少しでやられそうになっていた小野も山口の兵の攻撃が止んだ事で命拾いした。山口宗永はその場で腹を切った。


 井伊直政は殺してしまって良かったのかわからず、空を見た。真田幸村が嘲笑っている顔が浮かんで固まった。



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