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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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激突?

 山口宗永はやっと山を降り切った。兵は疲労しきっている。昨日から何も食べていないのだ。全員が山を降りたところでとりあえず兵を整列させた。すると直ぐに西側遠くから声が聞こえて来た。最初この東側から攻めた兵は五千名、山口が加わった時には死傷者が多く二千まで減っていた。そして今はまともに動けるのは八百名に程だ。怪我人も連れて来てはいるが一部は休みながら下山してくることになっている。まずは食糧と秀秋だ。


 小早川秀秋からの連絡はなくこちらからの伝令も返ってこない。例の勝ち鬨がなんだったのかは未だにわからないが本丸を秀秋が落としたなら東側からも本丸へ上がれるはず、それがないという事は撤退したか敵のはったりかだが、この状況では山中にとどまる事はできず下山した。本陣には荷駄があり食糧がある。そこへ向かおうとした時に戦の音がしたのだ。


「皆の者、怪我人はここで待機。動けるものは西へ向かう。何が起きているかはわからんがそのまま敵に突っ込むと考えて進め!」


 山口と一緒にいる兵は元々は小早川隆景に仕えていた兵だが、これまでの山口の采配を見て信頼している。もうヘトヘトだが指示に従って小走りに西へ向かい始めた。兵達も今戦況がどうなっているのか知りたいのだ。




 声、それは森田が率いる兵達が小早川秀秋の隊に突っ込んでいく時に放った声だった。秀秋のせいで友人が死んだ。戦だから仕方ないといえばそうなのだが無謀な戦、無謀な策による価値のない死に方だった。今では小早川秀秋は友人の敵なのです。森田は待機している時にこう話していました。


「我らは森村様に仕えていた。だが森村様は小早川秀秋に従ったがために無謀な死を遂げられた。我らはこの丹波で生き残るために小早川を選んだがそれは間違いだった。あの小早川を継いだ秀秋は友の仇にすぎない。わしは小早川秀秋を討ちたい。そしてこの丹波で家族と共に生き残るために武田に仕える事を決めた以上、先鋒として成果を出さねばならん。みんな、わしに力を貸してくれ。ここにいる者は皆何かしら森村様にお世話になった者だと思う。主の、友の仇を討つのだ」


 そこまで言って涙が溢れ、喋れなくなってしまった。ここにいる兵達も同じ気持ちだった。この後小早川秀秋と戦うのなら死んでもいいと思ってしまった。それ故に捕らえよ、という命令にそれならばどういたぶってくれようか、という若干捻じ曲がった気持ちになっている。そこに小早川秀秋の隊が近づいて来たのだから大声も出ようってものです。


「かかれー!」


「突っ込めー!」


「秀秋、かくごー!」


 全力で走りこんで斬りまくります。ここは平地です。山道の戦で思うように進めなかった斜面とは違います。森田達は今までの鬱憤を晴らすように暴れまくります。


 突然斬り込まれた小早川秀秋の隊は斬りかかって来たのがついさっきまで味方だった者だったので最初は混乱しましたが我に返ったように抵抗を始めます。


「殿を護れー!」


 空腹と疲労で動きが鈍いとはいえ火事場の馬鹿力でしょうか、必死になって戦っています。ですが、休憩して少しとはいえ腹に食物を入れた森田達とではスタミナの差がありました。少しすると森田達は小早川秀秋に迫ります。


「お、お前達、前へ出ろ」


 と言って兵の壁を作り秀秋は後方へ逃げ出します。それを察した森田は


「秀秋を逃すなー!」


 と大声で叫びさらに勢いを増していきます。そこに背後から駆け寄る者達がありました。山口宗永の兵達が散り散りになって追いついて来たのです。足取りは重く縦に大きく広がっています。それを見た井伊直政は、


「小野殿、頼む」


「承知!」


 山口達の兵は八百、直政のところは森田達を除くと小野率いる三百と直政の五十しかいないのだが疲弊している山口の兵は列を作れずにただ駆け寄って来ているだけに見えた。小野は向かってくる兵を1人づつ確実に仕留めていったが、


「止まれ!」


 山口が叫ぶと兵は立ち止まり息を整え始める。バラバラに進んでは敵の餌食になってしまう。小野ところから200mほどのところで徐々に兵が集まって来ていて列を作ろうとしている。小野は敵の数を数えようとしたがそれでは不味いと気づきそこに突っ込んでいく。小野も森田達と変わらない、成果を出さないと生き残れないのだ。丹波国衆は皆必死だった。


 小早川秀秋を攻める森田達も疲れてきました。小早川隊も秀秋を護ろうと必死なので手こずっています。井伊直政は背後の敵を小野に任せて森田達に加わりました。目指す秀秋は兵の一番後ろまで下がりさらに逃げ出しました。


「蹴散らせー!」


 直政が叫び小早川兵を倒していく。その様子は山口のところからも見えた。あそこに殿がいるのか?ならばここに止まった判断は間違いか?だがそこに小野の兵が突っ込んできた。


「あそこに殿がおられる。こいつらを蹴散らして殿のところへ急げ!」


「井伊様のところへ行かせてはならん。ここでこいつらを倒す」


 お互いの指揮官の声が飛んだ。








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