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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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どうする 金吾

 しばらく敵の陣があったところに座っていると山から兵が逃げるように降りてくるのが見えた。


 山を降りた敵兵は慌てて走っていく。ここにいる直政達に気付いて向かってくるのかと思えば、それどころではないようでどんどん離れて行っている。どういう事だ?直政は逃げる兵を捕まえるよう指示を出した。するとこちらに向かって歩いてくる兵がいた。さっき小早川秀秋に報告をしていた偵察員だった。


 兵は直政に近づくと手に持っていた槍を地面に置き跪いた。敵意が無い事を示している。そして直政に聞こえるように、


「武田様の部隊とお見受けいたす。某は丹波の国衆、森村左衛門介に仕えていた森田新右衛門と申します」


 逃げてきていきなりそれか。命が惜しいと見える。


「結城信平様の一の家臣、井伊直政だ。森田とやら、森村というのは我らの敵だな」


 直政は我らの敵というのを強調した。味方にはこの男はいなかった。ならば敵兵だろう。さて、意地悪な聞き方をしてしまったがなんて答えるのだろう。森田は直政の問いの意味を考えようとしたがさっきの秀秋を思い出しあれよりはマシであろうとそのまま答えることにした。


「森村はここ八上城の波多野様とは長年争ってきた国衆でございます。小早川秀秋様に付いて城攻めをしておりましたが、森村は戦死いたしました」


「それで?」


「敵対していたのは事実でございます。ただ、森村は小早川秀秋という無能に乗せられて戦に加わってしまった事を恥じておりました。某は今日初めて小早川秀秋と話をし、森村の言っていた事がわかりました。あの者のために死ぬのは嫌でございます。今、山から降りてきているのは皆森村に仕えていたものばかり。某が実情を説明し逃したのです。戦線離脱は罪という事はわかっておりますが、できれば某以外は見逃していただきたく」


 そこまで話して森田は深々と頭を下げた。正直言って都合のいい話だ。ただ直政はこういう人情に弱い。


「森田とやら。その話を信じろと?」


「某が腹を切ります。それでご信じていただきたい」


 直政は悩んだ。ここまで言うのなら信じてもいい気がする。だが気になる事もあった。


「お主、風魔というのを知っているか?」


「存じませぬ。丹波の者ですか?」


 小山での事件、直政にとっては嫌な思い出だ。知らない者に警戒心を抱くのは当然だが、風魔なら知っている者に変装しそうだと気がついた。


「森田、逃げた連中をここに集めて来い。小早川を攻める覚悟はあるか?」


「当然先鋒ですな。あやつの無様な策で多くの仲間が死にました。友の敵、是非お願いいたします」






 結城信平は城の監視台から直政の様子を望遠鏡 見えるんです を使って見ていた。そのまま山を登ってきたらどうしようかと思ったがそれは無さそうだ。まだ敵の数の方が多い。戦意は無くしているだろうが風向きは時に変わるものだ。


 一夜が明けた。八上城には兵糧は十分にあり兵は交代で食事や睡眠を取っている。東側の攻撃が止んだ。凱に見に行かせると、


「兵糧が不足していて昨日から何も食べていない様子。山を降り始めています」


 東側は小早川の家老 山口宗永が率いていてもう少しで本丸へ突入されるところまで攻め込まれていた。西側の方が敵兵が多いため防御が西側に寄っていたせいもあったが、攻手の将が優秀だったのだ。山口は秀吉が秀秋の目付兼お守り役に任命しただけはあって、非凡な才能を持っていたのだ。このままでは不味いと撤退を決断したのだろう。


 山口は信平の予想通り苦渋の決断をして撤退を始めた。こんな筈ではなかったのだ。八上城をよく知る森村が物量で西側から仕掛ける。こちらは敵兵を分散するための陽動であわよくば本丸へというつもりだった。ところがいつまで経ってもいい知らせが来ない。挙げ句の果てが勝鬨の声だった。当然味方が勝ったと思った。森村が本丸を占拠しこちら側へ合図が来ると思っていた。ところがいつまで経っても本丸の守備が固い。


「まさか、あの勝鬨の声は。それはあるまい」


 山口はあの勝鬨は敵の陽動でまだ戦の最中なのだろうと考えた。だが音が途絶えた。昼夜関係なく物量で攻め続けるはずが静かになった。本当に負けたのか?ならばここにいる我らは?食糧も尽きた。戻るしかなかった。





 小早川秀秋は本陣で暴れている。偵察に出した兵が帰って来ない。気付けば兵の数が減っているように見え怪我人ばかりが目立つ。


「ええい、誰かおらぬか」


 秀秋の護衛兵が寄ってきた。


「なんでございましょう」


「なんでではない。もう煙は無くなったであろう。仕掛けるぞ」


「殿、恐れながら申し上げます」


「なんだ」


「味方の犠牲が多く、森村様も討死しているのが確認できました。いつのまにか森村様が連れてきた丹波衆は姿を消しております。まともに戦えるのは三千ばかりにございます」


「二万の兵を連れてきたのだぞ!三千のわけが無かろう」


「山口様が千名連れて東側から攻めておられます。それと山の下で荷駄の番をしているものが五百は健在かと思われますが山口様の方はこちらのように犠牲を出しているかもしれません。ここは諦めて大阪へ向かうのがいいかと」


「そ、それでは戦に負けた事になろう」


 どうする金吾?




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