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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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策略

 於津禰の方、武田義信の正妻です。義信は側女を作りません。義信は女を知らぬままに政略結婚となり、骨抜きにされてしまいました。信玄も家臣も側女を作るよう何度も進めましたが頑なに拒みました。元々頭が堅いのですが、それにうまく於津禰がつけ込んだのです。

 今川家は京の公家とも交流が深く、於津禰も文学や都に詳しかったので、田舎者の義信には於津禰は天使のように見えています。もうメロメロメロンになっています。於津禰は今川義元の娘であり、現当主である氏真の妹です。今川からすればこの政略結婚は武田を乗っ取る為の策略です。


 当然、信玄もそんな事はわかっています。戦国の結婚はお家の事情で決まりますので。ただ於津禰がここまでしたたかだとは想像していませんでした。まさか義信がここまで操り人形になってしまうとは想定外です。


 於津禰は今川家と頻繁に文のやり取りをしていますし、今川家からの客もやってきます。それは当然、信玄にも伝わりますが正式な使者である以上どうしようもありません。信玄は嫡男の義信に家督を継がせるつもりです。家督を継がなければ家臣が納得しない事をわかっていまし、最初からそのつもりでした。義信を育てるために、最も信頼している飯富兄弟の兄、兵部を傅役につけたのもその為です。ところが意見が合わないのです。



 勝頼は駿河から戻ると古府中に寄らずに信玄が療養している隠し湯へ赴きました。報告する事は山程ありますが、まずはなによりも寿桂尼との話です。


「お屋形様。ただいま戻りました」


「おう、少し見ないうちに逞しくなったではないか。旅の成果はあったか?」


「はい。お屋形様も顔色がよろしいようで何よりです」


「お前が用意した卵を里美が料理してくれるのだ。目玉焼きというやつだ」


 そうなのです。勝頼は信玄が療養すると聞いて豚肉に加えて鶏の卵を用意しました。この時代、鶏はいましたが鶏を食べたり卵を食したりという文化はありませんでした。仏教の教えで殺生に当たるというものです。牛、豚、鶏を食べるとバチが当たるというものですが、その割にイノシシや鹿は食べていました。


「お前が用意した卵は雛にならないというではないか。それなら殺生にはならん」


 無精子卵、詭弁のようですが物事には理由がいるのです。考えたのは三雄ですが。食中毒が怖いので火を通す事は怠らないように言われています。


「この分なら復帰は早くなりそうですね。ですが労咳はしつこい病ですのでこの際完治するまで静養なされては?」


「そうも言ってられん。で、どうであった?」


「寿桂尼に会いました。氏真にも」


 勝頼はその場で見た事を事細かく説明しました。その上で、


「寿桂尼はなにかを仕掛けてきます。死ぬ前になんとかせねばという焦りを感じました」


「なにを仕掛けてくると思う」


「兄上を使って、いや流石にそこまでは」


「なんだ」


「最悪の場合ですが、父上がやった事をそのまま」


「なんだと!」


 勝頼が想定した最悪とは、晴信が父、信虎を家臣と手を組んで追い出し家督を継いだのを真似するのではないかという事です。


「ですが追放ではなく父上のお命を狙ってくると思われます」


「わかった。頭には入れておこう。旅の疲れもあろう、しばらくお前もここに滞在していけ。他に話もあるしな」


 勝頼は信玄の指示でしばらく滞在する事になりました。翌日、一緒に風呂に浸かりながら、


「父上。考えたのですが、兄上をここへ呼んではいかがでしょう。父上は忙しく兄上とじっくり腹を割って話をした事がないのではないでしょうか?父上のお考えを伝えればきっと兄上も理解していただけます」


 信玄はそういえばと考えた。兵部に任せっきりでじっくりと親子で語り合った事がなかったと。義信と意見が合わないのを一方的に悪いと決めつけていたのかもしれない。


「それがしも父上とはあまり話しした事がありませんがね」


「勝頼、あんまり余をいじめるな。わかった、確かに勝頼の言う通りだな。義信とゆっくり話をしてみようではないか」





 ところが、その話を聞いた三条の方、於津禰は焦りました。ここで義信を呼び出すのは意味があると、例えば闇討ちです。信玄の言う事を聞かない、今川と通じていると殺されてしまうのではないかと考えたのです。

 信玄、勝頼ともそんな事は考えていません。今川と通じているといってもそんなに緊急性はないと思っていました。ところが、寿桂尼が於津禰に渡した手紙には信玄抹殺計画を検討するように書かれていたのです。それを見た後でしたので、勝手に悪い方へ想像してしまったのです。


 手紙は三条の方と於津禰しか見ていません。この2人はグルになって義信を早く後継者にしようとしていた仲間です。


「お方様。いかがいたしましょう。寿桂尼様から手紙をいただいた後にこの呼び出しとは、罠でしょうか?」


「わかりませぬ。ですがお屋形様なら手紙の中身を見る事など簡単でしょう。もし手紙を見たならば、やられるまえにやる位は平気で行うお方です」


 実際は封印がされていて中を見る事は出来ません。ですがこの時の2人は被害妄想になっています。女の浅はかさがもろに出てしまいました。


「こういう時は、そうです。兵部殿に相談しましょう。兵部殿ならばいいお知恵を出してくださるでしょう」


 そして飯富兵部が新屋形に呼び出されました。


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