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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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奇襲

 中野が戻ってきた。


「百姓に扮した怪しい者が潜んでいました。こちらに気付くと逃げ出し、見失ってしまいました」


「何人だ?」


「一人です」


「お屋形様の警戒をしている連中は?」


「動いておりません。恐らくは陣を崩さないようにしていると思います」


 山道の中で陣という表現を使う中野に感心した。中野が育った井伊谷でそういう訓練をしていたのかもと考えつつ、陣を崩さない指示をしているのはあの天海だろうと思った。普通怪しい動きを見たら追ってしまうものだが、さすがはお屋形様の忍びだ。


「俺の出番は無さそうだ。だが何かあったら直ぐにお屋形様を守れるようにいつでも動けるようにしておけ」


「承知」




 信勝一行を見張っていたのは甲賀の忍びだった。大阪城で開発された双眼鏡なる物を使って遠方から見ていたのだが何故か見つかってしまった。慌てて逃げ出したものの追っては忍びではなく一般兵だった。この山中で忍びでなければ撒くのは簡単だった。この忍びの名は権左といって地龍の配下だ。役目は将軍一行の監視でどこを通過しているかを定期的に連絡することだ。それ故に見晴らしのいいところで距離を取って見張っていたのだ。


 権左はしばらく木上に潜んでいたが気配がないので、再び見晴らしのいい場所に陣取った。味方の忍びとは一日に一回山中で連絡をとっているがまだ待ち合わせには早かった。将軍一行はゆっくりとすすんでいる。先鋒はもう戦になる頃だが何故か歩みは遅い。


 時間になり山の奥へと進むと驚いたことに百名ほどの武装した兵が集まっていた。


「こ、これは?」


「お役目ご苦労であった。貴殿は引き続き見張りを頼む。我らは信勝を襲う」


「無理です。あの護衛を掻い潜るのは。近づくこともできますまい」


「その通り。ならばどうする?まあこの戦いの結果をお主は報告をするのだ。地龍様にな、頼んだぞ」





 信平はどうも腑に落ちない。さっきの奴を逃したのは仕方ないが目的は何なのだろう?我らの進行状況を把握する草の役目なら捨ておけばいい。どうせわかることだからだ。だが、なんか気に入らないのだ。


「やはり兄上に」


 信平は少し後ろにいる信勝の元へ向かった。それに天海が気付く。


「結城殿、どうなされた?」


 天海は信平をあくまでも家臣の一人として扱っている。信平は跪き、


「申し上げたい事がございます」


 信勝の許しを待つ。兄は兄であって兄ではない。かたや将軍、こちらは遠州半国の一大名に過ぎないのだ。天海はさすが信平様だと思いながら信勝の顔を見ると嬉しそうだ。だが信勝は直ぐ真剣な顔に戻った。わざわざ来るのだからそれなりの事だ。武藤喜兵衛の手紙が頭をよぎる。


「信平、許す。申してみよ」


 と将軍として話した。


「はい、先ほど敵の間者らしき者がいたのはご存知かと思いますがどうも腑に落ちないのです。何か起きる予感がします」


「武藤喜兵衛の手紙にもそう書いてあった」


 武藤喜兵衛の手紙には、間違いなく信勝が襲われる。奇襲に気をつけたしと書いてあった。


「そうですか。さすがは武藤殿。天海殿の指示でお屋形様の忍びは陣を崩しておりません。ですが、その外からの攻撃に対しての警戒はされておりますでしょうか?」


 信勝が天海を見た。天海はしまったという顔をしている。


「信平、よくぞ言ってくれた。取り越し苦労ならそれで良し、敵は山の向こうだ。天海、直ぐ様兵を送れ」


 信平は間に合わない事を考え、


「上様、何か防ぐ手立てを」


「真田を呼べ!」


 敵の攻撃は大筒か桜花惨劇を真似した手榴弾か、何にせよ今までに武田の戦法は見られている。以前徳が言っていたように真似するのはそんなに難しくない。今まで見せた物は相手もいずれ使ってくると思っていたほうがいい。




 信平の予感が当たった。甲賀忍びの権左は双眼鏡を使って信勝の位置を把握し、味方の兵に連絡する。味方の兵は大砲を二門用意していた。その大砲を撃つ兵と守る兵に別れて準備している。ここが襲われる事はないだろうがそういう訓練をしてきたようだと実は思った。さすが地龍様だと感心して双眼鏡を見ると、武田の動きが少し変わった。将らしき男が信勝のところへ来て何やら話し込んでいる。


「若狭攻めの軍議だな。腕が若狭の方を指して指示しているみたいだ」


 荷駄が慌しく動き始めた。何だろう?今までにない動きだ。味方の方を見ると準備が完了したようだ。何でも試射訓練を相当行い狙いは外さない自信があるらしい。信勝との位置を正確に指示するのが権左の役目だ。一度監視場所を離れて大砲のところへ報告に行った。


「今が絶好機だと思います」


「わかった。お主は再び監視に戻れ。必ず結果を地龍様に伝えるのだぞ」


「はい」


 その時、どこから現れたのか武田の忍びが攻撃を仕掛けてきた。特殊部隊ゼットのチームAとBだ。総勢30名の手練れがボーガンで攻撃しつつ突っ込んできた。



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