秀吉怒る
豊臣秀吉は大阪城で怒鳴り散らしている。相手は立花宗茂だ。
「利家のバカが死ななくてもいい戦で死におった。前田家は利政に継がせる。お主が清正が戻るまで仕切れ!全く官兵衛まで死んだとは、ブツブツ………」
立花は平伏したままだ。立花宗茂は大友家が滅んだ後、加藤清正預かりとなりその後の活躍で秀吉にも目通りを許され清正の推挙もあり秀吉に呼び出されるようになった。
石田三成が居なくなり黒田官兵衛が居なくなり前田利家も居なくなった。秀吉は機嫌が悪い。こいつらは味方ではなくただの駒だ。死ぬのは悲しくはないが武田と戦うのには官兵衛と利家は必要だった。
立花は動けない。勝手に話すとまた何かとうるさいのだ。少し前までは怒鳴られ役は細川幽斎だった。その細川も坂本城へ戻ってしまっている。加藤清正が戻るまでの辛抱と耐えるしかなかった。
翌日、再び立花は呼び出された。
「宗茂、いい知らせだ。本多正信が文を寄越しおったぞ」
立花は久しぶりに機嫌のいい秀吉を見た。
「殿下、なんと書いてあるのでしょうか?」
「勝頼は当分戻れない、今のうちに片付けられたし」
「そ、それは」
秀吉がニヤッと笑った。
「草によると信勝めは琵琶の海の制圧をしている。将軍自ら帝の領地を攻めるとは言語道断。武田討伐令は既に出ている。何をすべきかはわかるな?」
「はい。ですが将軍の兵は多く、尾張には武田信豊が死んだとはいえ未だに戦力が残っております。お味方の戦力は西に多く………」
「だから、だ」
秀吉は話を最後まで聞かなかった。そして自分の考えた策を立花宗茂に授けた。
大阪城には重臣でさえも立ち入りできない謎のエリアが存在する。そこに魔神2号が運び込まれていた。
「これが例の電池だな。武田の船にも使われているやつだ」
「この中に力を貯められるのですか?」
「そうだ。武田の気球に使われていたゼンマイで羽を回すやつがあったろう。あれは人力で貯めた力を解放する仕組みだがこれは違う。この間、冬に火花が飛んだ事があるだろう。あの痛いやつだ」
「パチってやつですか?」
「そう、そのパチってやつをこの中に溜め込んでいてその力でこの人形、からくり人形と皆は呼んでいるがこれは人形というより機械だな。この機械を動かしているんだ」
「どうやってですか?人は側にいなかったと聞いています」
「妖術の類か、と重臣達はいうであろうがそんなものではない。何か理屈があって外から操っていたのだろう。この大きな箱を開けてみよう」
そこには受信器が入っていた。ここに魔神2号を持ち込んだのは地龍だった。武田が戦没者の葬儀で意識が離れている隙を狙って運び込んだのだ。この大阪城の秘密の場所では飛龍、地龍が持ち込んだ武田の武器の情報から日々対策を練っているのだ。以前ハンググライダーや銃を作ったのもこの場所だ。小早川水軍のスクリュークラッシャー砲もどきの大筒も設計はここで行われた。
魔神2号を分析しているのは所長の福島政宗と部下の冷泉貞宗だ。福島政宗は福島正則の縁者で、正則と違い武芸がダメで家中では活躍ができていなく、政則が何かないかと考えていたところ秀吉から鍛治や自然現象に詳しい者を集めるように言われ差し出したところ、才覚を表し、政宗の名は秀吉から賜った。ゆえに政宗は秀吉のためなら死ぬまで働く気になっている。
冷泉家はその昔は公家の大勢力だったが、足利時代に輝きを失い冷泉の名はもう残ってはいない。貞宗は山科を名乗ってはいたが秀吉から冷泉の姓を復活させてもらった。そのために貞宗も必死に働いている。
秀吉は人を使うのがうまかった。最後はただの捨て駒だとわかるのだがそれがわかる時には………。
そして飛龍が怒崙改を持ち込んできた。利家の死んだ辺りで拾ったという。勝手に空を飛び矢を放つ武器と言っていた。冷泉が、
「これは例のやつの小さいものでは?飛龍殿、これはどのように動きましたか?」
「わしはその場を見ておらん。だが、関ヶ原でも同じような武器を武田が使ったのだがその時は、そうだな。蜂のように自由に飛んでおった。あの時は見るだけしか出来なかったが今回は幸運だった。冷泉殿、わしはもう行かねばならん。後のことは地龍に」
「承知しました」
秀吉は甲賀の出だからか飛龍と地龍の扱いは重臣並みだった。この時代、忍びは格下とされていていたのだが、高待遇を受けている飛龍達を見て冷泉は自分も頑張らねばと思ってしまう。これも全て秀吉の掌の上の話なのだが本人は秀吉を信仰しているので仕事が出来るだけで幸せなのだ。
早速冷泉は怒崙改を分解し始めた。
そして飛龍は大阪から姿を消した。それと時を同じくして福島正則を大将とし、立花宗茂を軍監とする兵三万が京へ向かった。そのなかには後藤信尹も千の兵を連れて同行している。




