予感
万兵衛が半兵衛を連れて外へ出て行った。半兵衛の鼓膜は大ダメージを受けてしまった。しばらくは耳が聞こえないだろう。
兵が念の為建物の中を隅から隅まで探し、生き残りがいないかを確認している。別の兵が敵で一人生き残った者の手足を銃で撃ち動けないことを確認してから縄で縛っている。半兵衛の教えだろうか、なかなか手厳しい。
「さすが半兵衛殿の部下は教育されてるだわさ。戦に出たことがない軍師だけど侮れないわね。さて、と。佐々木だったわね、あんた?」
生かされて捉えられたのは武田を裏切った佐々木道誉だった。佐々木はあちこちが痛くて呻いている。それはそうだ。手足が動かないのだから。返事をしない佐々木を見て徳は、
「あっそうか、あんたも耳が聞こえなくなってるんだわさ。そりゃ返事できないわね。生かす気もないし、そのまま海に投げ捨ててきて」
最初は話を聞こうと捉えたもののこれでは仕方がない。耳を聞こえなくしたのは徳様ではないですか、と言ってきそうな竹中半兵衛もいないしさっさと処分することにした。徳はこの造船所に火をつける様指示して新型空母に戻った。
「逃げた船がいたわね?中駿河改の補給が終わり次第追って」
3時間後、皆が船に戻り補給も完了したので逃げた船を追いかけ始めた。もう見つからないとは思うが四国を一周すれば反対側からくる馬場と合流できる。
加藤清正は、逃げてきた軍船 呉の乗組員から話を聞いた。質問は清水が行い清正はただ聞いているだけだ。
「武田に間違いないのか?」
「はい。他には考えられませぬ。風魔の村も焼かれ我らも応戦はしたのですが敵の火力が強く、一方的にやられてしまいました」
「他の船はどうした?」
「おそらく全滅かと」
清水の質問は続いたが有益な情報はなくただやられたとしかわからなかった。清正は一つだけ質問した。
「佐々木何某はどうなった?」
「造船所におりましたゆえ、おそらく」
そこまで聞いてから兵の尋問を終えた。生きてはいまい、もう造船所は敵に取られたと思うべきだ。この戦は偶然なのだろうか?中納言が廣島に戻る際に敵と遭遇して戦になった。中納言は佐々木何某のおかげで勝ったというがこの有り様は一体なんだ?新たな水軍がこの短期間でやってきたのなら、敵の戦力が不明では勝負にはならない。こちらには敵を攻撃する船もない。清正はさっさと城へ引き上げた。そしてそれは正解だった。
少ししてから武田海軍が現れて、停泊してある船や陸地に近いところにいる兵達を攻撃し始めた。せっかく逃げてきた軍船 呉も沈められてしまう。不思議なことに武田の攻撃は一般の人を避けて行われた。ただ、漁船は沈められている。
その報告を受けた清正は小早川秀秋に、水軍を放棄する様伝えて自国の肥後に戻った。結局黒田官兵衛の行方はわからなかったと秀吉に文を書いて。
半月後、四国沖に武田海軍が集結していた。戦艦駿河マーク2に幹部が集まっている。
「そっちはどうだったの?」
徳が馬場美濃守に聞いた。馬場は
「別動態を指揮し徳様と反対周りで四国を一周しました。元は長宗我部の物と思われる軍船が多数停泊しておりました。全て破壊しています。それと、南蛮船と戦になりました」
「ありゃ、それは想定外。向こうから仕掛けてきたのね?」
「はい。いきなり大筒を撃ってきました。事前に気がついてはいたのですが、こちらから攻撃もできず櫻を一隻失ってしまいました。申し訳ありません」
「それはしかたないだわさ。あたいの指示だし。乗組員は?」
「全員無事です。その南蛮船ですが、3隻とも軍船でした」
「ふうん、秀吉はキリシタンを認めて無かったわよね。切羽詰まったかな?どこへ向かっていたの?」
「おそらくは九州かと」
九州か。島津か加藤か。確か教科書では島津は独自の取引があったわね。徳はしばらく考え込んだ。四国、小早川の水軍は潰した。となると次にすべきことは………。
「半兵衛殿、聞こえる!」
徳は突然大声を出した。
「そんな大声でなくてももうだいぶ回復しました。なんでございますか?」
「西の情報が足りない。秀吉との決戦に邪魔を入れたくないのよ」
半兵衛は少し考えてから、
「万兵衛。空母を輸送艦として、ここに固定。他の輸送船と護衛の櫻、楓を一隻づつ組み合わせ高天神城と空母の間を行き来させろ」
「承知」
「馬場様、駿河マーク2と初倉、残りの楓、櫻、中駿河改は空母を拠点に四国、九州の監視を。軍船は全て沈めてくだされ」
半兵衛はこれでいいかと、徳の顔を見た。徳はそれでいいと言って新型空母へ戻って行った。半兵衛も徳と一緒に足を引き摺りながら戻った。徳の顔は冴えない。
「どうされたのです?」
「なんか気持ち悪い。何かを見落としている気がするのよ。それが何かがわからない」
徳は昔からそういう勘というか感覚的にしか理解できない何かを感じる力がある。半兵衛は徳の勘を信じているが、何のことかわからず、新型空母を尾張へ向けた。陸地の情報を得るために。




