優しき男 武田信豊
前田利家は前進中に奥村助右衛門を見つけた。奥村のところへ合流しようとしたが、その瞬間奥村が倒れるのが見えた。
「奥村が!何があった?おい、行くぞ」
護衛の兵に声をかけて走り出す。ところが奥村の近くまで進んだところで桜花惨劇改により巻き散らかされたマキビシに足を取られ転んでしまう。
「い、イタタ。なんだこれは?」
利家は武田の武器について話に聞いたことはあるが実際に喰らったことがない。兵に聞いてそうかと思い立ち止まった。あちこちに鉄片が刺さって無茶苦茶痛いが我慢している。無様な姿は見せられない、ここは戦場なのだ。改めて前を見ると前方におかしな物体がある。さらによくみると背中に砲台がありこっちを向いている。護衛の兵がそれを見つけて大声で叫ぶ。
「殿、お逃げください」
慌てて逃げようとする兵を抑えてその物体を睨んだ。機械に殺気を飛ばしても無意味なのだが利家の知ったことではない。それは動きを止めていて周りに武田兵もいない。無人なのか?おかしな物体の比較的近くにいる兵に、
「あれは何だ?動くのか?」
と声をかけるが、その兵は近づいて殺された者達を見ていたので動けなくなっている。仕方なく砲門が向いていない方へ迂回しながら味方兵に近づいて状況を聞くことにした。
「おい、あれは何なのだ。奥村が倒れたのはあれにやられたのか?」
兵は話しかけてきたのが前田利家だったのでさらに震えている。普段話などできるお方ではない。催促されやっとの思いで見た事を説明し始めた。
「あの人形が進んできまして近づいた兵は人形の腕が動いて殺されました。奥村の殿はあの背中の砲門らしきものから何かが飛んできて爆発して、それで」
利家はその話を面白いと思った。この男も若い頃は無茶をした歌舞伎者である。ニヤッと笑みを浮かべたあと、
「あの人形を持って帰るぞ!」
武田陣では戦が続いている。敵の進行速度は魔神2号の活躍?で遅くなり後続の味方兵も徐々に追いついてきた。上杉がいないとはいえ兵の数は武田側の方が多いのだ。なんだかんだ言っても最後は物量である。魔神2号の動きが止まっている。敵は恐れをなして近づけないようだがいつまで保つか?魔神2号を操縦している特殊部隊ゼットのあいは、
「メイン電池が切れた。本体はもう動かない。あとは腕の武器だけだよ。みれい、合図よろしくね。私は信豊様の護衛に戻る」
「了解です。利家が来たんだけどなかなか近づいてこない。あいつを仕留めればこの戦は勝ちよね」
「そんな簡単には行かないわよ、えっ、何?」
敵の伏兵が斬り込んできた。おかしな連中がいると目を付けられたのだ。いつもは後方で兵の影になって敵に見られる事はないのだが、前線近くまで出ているため目立ってしまった。チーム戊の護衛係が応戦し犠牲を出しながらも何とか堪えたが、敵が次々と現れる。
「前に出過ぎた。ここは危険よ、下がりましょう」
リーダーのあいが適切な判断をした。戦は何が起きるかわからないのだ。ところが、
「今下がったら利家は倒せない。りこ、私と残って。あとは下がって」
みれいがそれに逆らって怒崙改を出してきた。以前天海に見せた時に助言をもらって改造した現代でいうドローンもどきである。ラジコンに毛が生えて程度のものだが矢を装備している。あいは、一瞬何か言いかけてやめた。それはそうだ、絶好機を逃すことになる。本来はリーダーの私が残るべきなのかもと思ってしまった。そして
「他の者は下がって。みれい、死ぬなよ」
そう言ってあいは配下の者と下がって行く。みれいは軽く手を振り怒崙改を操作し始めた。そしてその様子は戻ったあいの口から武田信豊に知らされる事となる。
利家の檄で兵がからくり人形を周囲から囲み縄で縛り始めた。それを望遠鏡「見えるんです で見たみれいは、
「りこ、腕の銃を発射。全弾適当に撃っちゃって」
「了解、これでもう腕も動かなくなるわね。全弾発射」
りこは操縦桿の銃発射ボタンを押した。ラジコンの電波により腕に装備された銃から弾が発射される。それは散弾だった。適当に発射された散弾だが、前田兵が周囲を囲んでいたため効果的に兵に命中していく。縄で縛ろうとしていた兵が倒れ、またからくり人形に近づけなくなった。流石の利家も目の前でこんな惨劇が起きてすぐ次!とは言えなかった。ここで不思議な間ができた。
5分後何も起きないのに我慢できなくなった利家は、からくり人形を放っておいて全軍に進撃を命じた。人形が時間稼ぎをしているように思えたのだ。電池切れとは想像できなかった。そもそも利家は電池を知らない。その頃、武田信豊がみれいが心配になり前線に出てきていた。敵の動きが止まっていたのと、愛人のみれいが心配になったのだ。
「みれい、何をしている。下がれ!」
「信豊様、何でこんな前に。信豊様こそ下がってください。私はまだ怒崙改があります。あれで利家を倒してから戻ります」
「そんな簡単にはいかん。りこ、お前も下がれ」
そうこうしているうちに前田兵がこちらに向かって走り出した。みれいとりこは怒崙改を上空へと展開しながらゆっくりと下がっていく。信豊は自分だけ逃げるわけにはいかず、連れてきた兵を前に出した。




