魔神2号
前田利家は、槍を持ち大声を上げた。
「槍の又左、織田信忠、武藤喜兵衛の首を取り、利長の前に献上いたす。皆の者、出るぞ!」
すでに兵は出てしまっていて残っていたのは護衛の五名だったが、その五名も大声で、おー! と返事をした。利家の声は前方の戦の音にかき消されて周囲にしか届いていないが、それでよかった。自分に気合いを入れ直したのだ。気合いを入れ直し、戦場を改めて見渡した。後ろは川で周囲は味方兵が前へと進んでいっている。利家はふと殺気を感じたように感じ後ろを振り返った。川面には武田の攻撃の余韻か、薄煙が漂っているが特に何もなさそうだ。気のせいか?護衛の兵は利家を囲み、主人が進むのを待っている。
「殿、いかがなされた?」
「いや、なんでもない。行くぞ!」
前線では武田信豊が前田兵と戦っている。時折り後方から武藤信之の手筒隊による手榴弾攻撃や、ボーガン隊による味方兵の隙を突こうとする敵兵の排除が上手くいき優勢だ。
「今回の桜花惨劇は旧型の改か。確かにここで唐辛子パウダーの目潰しは味方にも被害が出る。喜兵衛の準備は相変わらず抜かりがない」
それを聞いた、特殊部隊ゼットのあいが、
「最初はマーク2で、今は改。改改は殿が使うと言ってました。同じような武器でも使い所が大事だと仰っておりました」
「そうか。で、お前達は何を使うのだ?さっきからガチャガチャうるさいが」
「見てのお楽しみです。それでは私達も出ますので」
この戦には特殊部隊ゼットのチーム戊、5人揃って魔神ゴーの連中の他にチーム丁と巳が喜兵衛とともに参戦している。丁は暗殺部隊でリーダーは影猫だ。巳は近接戦闘に特化した部隊で喜兵衛の護衛に付いている。
「魔神ゴー!」
あいの掛け声とともに現れたのは、戦車のような機体だ。キャタピラーの上に箱が載っていて顔と両腕があるように見える。背中にはリュックを背負っている。表面は鉄のようだ。信豊は初めて見た機体に驚いて愛人となっているチーム戊のメンバー みれいに走り寄って聞いた。
「なんだこれ?蒲生戦での無人爆弾かと思ってたぞ」
「これは竹中半兵衛様が考案した陸戦兵器を殿が実現化した物です。名付けて魔神2号。組み立てが大変なのと長時間の稼働ができないのが弱点ではありますが、戦う場所によってはかなりの物だと思います」
「そうか、で、さっきお前達の合言葉を叫んでたろ、魔神ゴー、って。あれはなんだ?」
「気合いですかね?徳様があれを使う時に叫べと命令がありまして」
徳ちゃんが??なんか意味があるのだろうか?それはともかく魔神2号は進み始めた。操縦をチーム戊が行っている。操縦装置というのだろうか、台車に乗せられた箱をあいが弄っていて、どうやら本体の操縦をあいが、魔神2号の様子をりかが、両腕の操作をひなたとりこが行なっているようだ。
「みれい、お前の役目は?」
「私は別のをやりながらあの4人の手伝いです。まあ見ててください。大殿は下がって下がって」
魔神2号が戦場に現れると信豊の兵が活気づいた。蒲生との戦を皆見ていて、ある意味期待していた。ゼットの面々が参戦しているのを知っていてまたなんか出てきたけどきっとすごいやつだと思ったのだ。逆に前田の兵はなんだかわからない鉄の箱が出てきたので一瞬止まって見てしまう。その好きに武田兵の攻撃で死傷する兵も出た。
前田兵を指揮していた奥村助右衛門も一瞬固まった。が、すぐに観察を始める。
「あれは足か?ならばあれは顔と手があるという事なのか。からくり人形を戦に投入したと見える。武田は摩訶不思議な武器を使うというがあれはどう攻める?」
考えている間にそれは奥村に向かって進んできた。りかが双眼鏡見えるんですを使って上手く誘導している。前田兵は魔神2号に向かって槍を振るった。が、カーンという音がして槍が折れてしまう。ある兵はキャタピラーに轢かれ、ある兵はよじ登ったが腕が動き振り落とされてしまう。
「いいよ、その調子。右腕を左に振って。左手は前に突き出して。そのまま前進、あっ、誰か轢いちゃった」
「敵将はまだ見つからないの?」
「今、向かってる。あれは奥村助右衛門、前田利家はまだここまで来れていないみたいだけど時期に来るでしょ。まだ電池持つよね」
「あと5分ってとこね。利家が間に合ってくれるといいんだけど。来なかったらあとは私に任せてやっちゃいましょう」
「了解!」
「前方50mに奥村助右衛門、リュック開放」
魔神2号機の身体が前に斜めに傾き、リュックの上側が開放された。そこには手筒5門が隠されていた。いわゆる移動砲台だ。
「桜花惨劇改、発射。発射後モードBへ!」
奥村助右衛門はからくり人形には50名の兵を向かわせた。からくり人形の進行方向に穴を掘らせ動けなくする集団と、その作業が終わる間に人形を壊す事を試みる集団に分けた。それと並行して後退した武藤兵の代わりに前に出てきた武田兵に対する攻撃も指示している。狭いエリアではあるが鶴翼で包み込むように攻める策をとっている。武田の背後は街道で狭い。こちらは河原に広がり兵を展開できるから有利なはずだ。出てきた武田兵を囲んで仕舞えばいい。丹羽長秀と滝川一益は討ち取った。あとは織田信忠の首を取ればいい。
指示をし終わり前方を見ると、からくり人形が変形していた。ん?と思ったら背中から砲弾が発射されるのが見えた。慌てて下がろうとしたが、慌てる奥村の頭上でそれは爆発した。




