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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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開戦

 源三郎の策は現実的だった。そもそも信豊が目指しているところがわかっていない。丹羽長秀は主君、信忠がそれを聞かされていない事を聞いている。知っているのは武藤喜兵衛くらいだろう。もしかしたら武藤喜兵衛すら知らされていないかもしれない。


 当然敵にも知られていない。武田軍がどこを目指しているのかわからないのだ。


 一昨日、武藤喜兵衛が源三郎を通じて説明した策は、さっき源三郎が話した策とは異なり敵をここで迎え撃つというものだった。こちらから出向いて来ているのに迎え撃つというのもおかしいが、敵が攻めてくるのを待って撃退するという。鉄砲隊、大砲、中砲隊が用意されてすぐ後ろで陣形を作っている。なぜか大砲が五つしかなかった。


 丹羽長秀は源三郎信之に向かって、


「お主の策を父君には伝えたのか?」


 と聞いた。源三郎は首を横に振った。


「父上は殿の策を申しただけです。それがしごときが考える事は当然考慮した上での事でしょうから申すまでもありません」


「いい策だと思うがな」


 源三郎が笑みを浮かべたがすぐに険しい顔になった。


「敵がきます!」




 川幅が狭くなった淀川の反対側に盾襖を構えた兵を先頭に敵兵の集団が小走りで向かって来ていた。源三郎達が下がる間に味方兵がすぐに壁になる。すぐに鉄砲隊が出て来て敵兵に備える。今が攻めてくるのを知っていたかのようなような動きだった。


 敵兵も鉄砲隊を見て足を止めた。そして射程距離外で止まった。敵は二百ほどしかいない。そして5分程して引き上げていく。丹羽長秀は、


「様子見というところか。こちらの備えを確認しただけのようだが?だが源三郎、見事だ。相変わらず武藤の兵はよく訓練されている」


「丹羽殿、それがしは父上から家督は継ぎましたがまだまだ未熟者です。まんまと敵の策に乗せられました」


「そうか?いい応対に見えたが?」


 偽の攻撃だった。まんまと乗っかってしまったと源三郎は悔やんだ。しかし見事な采配だ。もう蒲生はいないだろうに、誰だ?




 前田陣営では様子見部隊を率いた前田利長の報告を聞いて、本攻撃に移ることが決まった。様子など見ずに一気に攻めようとする利家を利長が止めたのだ。相談された後藤信尹がそれならばと様子見をする事を提案して利長が実行に移したのだった。


「やはり敵は備えておりました。物見の報告だけではここまではわかりません。あのまま突っ込んでいたら鉄砲の後の大筒攻撃で大変な目にあったでしょう」


 利家は面白くない。兵を失ったわけではないが負けた気分だ。


「ふん、そのような小細工は長続きせん。まあいい、手の内が見えたのだし、織田だけでも倒して仕舞えばいい」


 武田信豊は後方にいるという。上杉景勝もだ。川を挟んで向かい合ってるのは織田の兵二万。総勢八万がこの狭い場所で同時に戦えるわけではない。後藤信尹は黙っている。利長と奥村に任せておけばいい。これは前田利家が言い出した戦なのだから。ところが、様子見の作戦が上手くいった事で利長が後藤を頼るように、


「後藤殿。噂は聞いておったが見事な手腕。敵の前衛には織田だけでなく武藤信之もいたそうだ。ならばあの武藤喜兵衛もいるであろう。いい敵である、だが故に手強い。どう攻めるのがいいと思う?」


「前田様。それがしをあまり買い被らないでいただきたい。ですが、敵が攻め上がれば後ろには大阪城。あの巨大な城を八万で攻めるのは無理というより無茶です。攻め上がる事ができないのですから追い返せばいいのです」


「そうだな。その追い返し方までお主に頼っては前田家の名が廃る。父上、ここは私のお任せ下さい」


 利家は面白くないのでそのまま許可した。利長は軍議を始め諸侯に指示をした。後藤信尹は出しゃばらないように黙っていてたまに頷いている。利長はそれを見て満足そうだった。


 3日後、川幅がさらに減り兵の移動が容易になった時、前田利家が出撃の合図を出したくて今か今かと待っている。仕掛ける時期、それは………、




 3日前、武田陣営では源三郎の報告を聞いて武田信豊が頷いている。上杉景勝の陣が京側、信豊の本陣が中央、大阪側が織田信忠の陣だがそれはそのままで行くと指示があった。八万の兵はどうしても縦長になる。武藤の兵は信豊陣に配置されているが、源三郎率いる千名は織田陣にいる。お市もそこにいた。


「丹羽様、あの後父上とそれがしの策について話しました。先程の指示はその結果です」


「であったか。そんな気はしていたが。では二、三日後に仕掛けてくるという事だな」


「おそらくは。織田は織田の戦をというお市様のお言葉通りにお願いいたします」


「頼りにしているぞ」


「ありがたきお言葉」



 そしてそれは突然やって来た。川向こうに備えていた織田軍の横から、つまり茨木方面から兵が現れたのだ。その兵に気を取られていると法螺貝が鳴り響き前田軍が川を小走りに渡り始めた。兵の動く音を聞いて中央の本陣にいる武田信豊は指示を出した。敵はここに来る。



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