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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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秀吉の思惑

 山城の国、今の京都である。ここは豊臣秀吉の領地だ。この土地は信長亡き後明智十兵衛が抑えていたが、十兵衛がいなくなった後、前田利家が押さえた。その時、大活躍したのが後藤信尹、そう真田の四男である。信尹は京に屋敷を構えていてそこには細川幽斎が訪れていた。


 幽斎は大阪に居を構えていて秀吉に呼ばれたらすぐに出仕しなければならない立場だ。今日は、武田に勝つ策について再び相談に来たのだった。


「後藤殿、また助けていただきたく参った次第。度々すまぬ」


「また武田攻めのご相談でしょうか?殿下に何か言われましたか?」


「この間の話で、大阪に呼び込んで戦ってはと言ったのだが一喝されてしもうた。そんな誰でも考えるような事をわざわざ言いに来たのかと」


 信尹は、はて?と思いつつ考え始める。幽斎に期待しているわけではなかろう。秀吉には考えがあるはずだ。幽斎に問いかけたのはその確認にすぎないと思っていたのだが何か裏があるのか?


「その時の殿下のお顔はどんなでしたか?」


「少し笑っていたようにも見えたが声は怒っておった」


 うーむ。どういうつもりなのか?出るか待つか、その2択でしかない。中途半端な事をしてもお互いが大軍を操ることになるのでうまくいかないだろう。待つ時は当然途中でも攻めかけ、大阪城を攻めようとする武田の背後を別動隊が攻める。出る時は京より東で戦うべきだろう。京は、??そうか、秀吉は京で帝を盾にするつもりなのかもしれん。だが、いくら秀吉でもそれでは民意を失うだろう。わからなくなってきた。


 少し前に秀吉はバテレン禁止令を出した。貿易は禁じていない。対等な取引には応じるが、土地や人は売らない。なぜかというとスペイン、ポルトガルは日本を植民地にしようと暗躍し、領主に借金をさせて土地を奪ったり日本人を奴隷として買い、海外に売り飛ばすという非道な行いをしていて諸国から泣きが入っていた。なぜか武田領ではそのような事は起きなかったのも癪だ。秀吉は奪うのは好きだが奪われるのが嫌いだったし、比べられて負けるのも嫌いだ。


 秀吉は神も仏も信じてはいない。宣教師などと言ってもただの国を盗みにきた輩としか思っていない。今までは利用できるから使っていた。そのおかげで鉄砲や大筒も入手したし領内で生産できるようになった。もういいだろう、あいつらとはここまでというだけの事だ。朝廷は秀吉のこのバテレン禁止令に喜んだ。日の本には帝がいる。帝こそが国の象徴であり神のように崇めるべき存在でなければならない。それを否定する宗教はこの国にはいらないのだ。今の帝は秀吉が無理やり交代させた良仁親王こと秀仁天皇だ。


 三雄の歴史では秀吉が良仁親王を天皇にしようとしたが、後陽世天皇の反対にあって出家させられた良仁親王がこの世界では天皇になっている。朝廷の中では批判も多かったこの交代劇だったが、バテレン禁止令が朝廷内を秀吉贔屓に変えていった。秀吉は帝を大事にしていると勝手に勘違いをしている。


 世間には秀吉の思惑がわかるはずもなく、秀吉が帝を尊重してバテレン禁止令を出したとしか伝わらず、信尹でさえ秀吉も帝だけは敬うのかと思っていた。なので余計わからなくなっているのだ。


「殿下のご本心は私などには掴めるはずもありません。お役に立てず申し訳ないとおもっております」


「いや後藤殿。後藤殿だけが頼りなのだ。そうさじを投げないでくれ」


 幽斎は泣きそうだった。大阪まで敵を呼び込むつもりで近江を素通りさせたのだが、それを今のところは責められてはいないがいつ怒られるかわからない。


「細川様、殿下がお咎めを言ってきたのですか?」


「今のところは何も。だが、あの殿下だ。いつ何を言い出すか」


「そう怯えなくても。細川様に用事を言いつけるという事はそれだけ信頼があるという現れでしょう。忠興様から武田の兵の数の情報はありましたか?」


「8万と聞いた」


「それは大軍。兵糧も大変でしょうに」


「そ、それだ!」


「どうかなされましたか?」


「いい事を教えてもらった。さすがは後藤殿だ、ごめん」


 幽斎は慌てて大阪へ戻っていった。




 屋根裏から影猫が降りてきた。


「周囲は?」


「見張りが2名。後藤様が外へ出なければ問題はありません。監視だけにとどめているようです」


「幽斎の話の出どころがここでも味方なれば問題はない。味方ならば、な」


「信尹様が疑われている様子はまだ見えません」


「疑われる事はしておらんし、加藤様の命令に従っているのみ。幽斎殿の話がわしからの助言という事は周知の事実。助言も大した事はしておらん」


「兵糧の話もですか?」


「わしは大変だと言っただけだ。そんな事は対策済みだろうて。で、兄上達はどこら辺だ?」


「すでに山城に入っています。今頃は山崎の辺りだと」


「そうか。では、わしは家に籠ろう。其方も控えるように」


 監視がついているのだから当然の事ではあるが、信尹は影猫に念押しした。いくら手練れの忍びでも隙はできるだろう。今が一番大事な時だ。



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