空中戦
織田軍の兵は休憩と言われて座り込み、水を飲んだりして一息ついていた。久しぶりの出陣でしかも今回は牽制が目的で戦にはならないだろうと多少の油断があった。そこに休憩やめて移動という指示が来て、
「急ぐのか、なんか忙しないな」
「そう言うな。我らは従うまで。それに丹羽様が言うのだから仕方あるまい」
先陣は丹羽長秀隊が勤めていた。とはいっても丹羽長秀本人は後方の織田信忠の側にいるが。立ち上がった兵の一人がふと空を見た。
「あ、あれはなんだ?」
「ん?鳥か?」
それは段々と近づいてくる」
「い、いかん。空からの攻撃だ。て、鉄砲を!」
織田軍は敵の空中からの攻撃に対する訓練をしていた。空を飛ぶ者無防備だ。攻撃を防ぐ術がないのだ。空からの攻撃は脅威だが、こちらから攻撃する事で抵抗はできる。
「い、急げ。殿の方に行かせるな!」
敵の空中編隊は30機、叫んだ兵に空から炸裂弾を落として後方へ飛んでいく。完全に不意を突かれてしまった。
編隊を指揮するのは甲賀忍者の飛龍だった。飛龍は織田信忠を狙うように指示をしてから、山中へと引き上げていく。武藤喜兵衛を狙いたいが後方にいてそこまで攻撃するのは無理だろうという判断だ。例の徳という女はいないというしまだ無理はしなくていい。もとよりここで決着がつくとは思ってはいない。織田の領地内で奇襲をして様子を見ろというのが命令だ。
飛龍は名の通り木の上から空を使った攻撃を得意としていて、織田信長を仕留めた功績もあり豊臣の空中部隊を任されている。甲賀の里は織田に取られてしまった。ここで上手くやって織田信忠を殺せば気も晴れる。
飛龍はそうはいってもここで無理をするつもりはなく、敵がどう出るかを見たかった。徳がいなくても武藤喜兵衛がいるのだから簡単にはいくはずがないのだ。武田が小田原で使用したハンググライダーとかいうものを甲賀で改造した。ぐるぐる回すと加速する羽根も付けた。とはいえ下からは狙い放題になるのは変わらない。奇襲にしか使い道がない空中部隊、そんな物を任されても嬉しくはない。飛龍はこの部隊の兵は使い捨てとしか考えていない。だが、使い捨てだからこそ使い途もある。
飛龍は着地し空中部隊の活躍を離れて見始めた。炸裂弾がいいように爆発している。こんなものか?空中部隊はどんどん敵の後方へ炸裂弾を落としながら進んでいく。不意を突いたとはいえ上手く行きすぎだ、と思った時それは現れた。
何かが飛んできて空中部隊は地上へ落下していく。
「なんだあれは?何が起きた?」
飛龍は最初なんで味方が落下したかわからなかった。続けて5機が落下して初めて何かが浮かんでいるのに気がついた。そうこうしているうちに織田軍が鉄砲の準備ができてしまい全てのハンググライダーが撃ち落とされて落下した。
「あんな備えが。いい物を見た。武田は空を制する、豊臣は陸だな。秀吉に報告せねば」
そう言って飛龍は山中へ消えて行った。
少し前のこと、武藤喜兵衛は特殊部隊ゼットのチーム戊を呼んでいた。
「魔人組一番、あい」
「魔人組二番、ひなた」
「魔人組三番、りか」
「魔人組四番、みれい」
「魔人組五番、りこ」
「五人揃って、魔人ゴー!」
変な決めポーズを喜兵衛の前で披露してデコピンを喰らう。
「お前らふざけてないで用意はいいのか?」
喜兵衛の顔は真剣だ。それをリーダーのあいが、
「大殿、これをやらないと私達の調子が出ない事はご存知でしょう」
と軽く交わすがその会話の間にも他の四人は動いている。
「空からですよね?」
「他は考えにくい。我らの忍びも山中は調べているしな。だがここは甲賀が近い。穴はあるだろう」
みれいが、
「準備完了、前進するので道を開けてください」
その時にはもう武藤信之が兵に指示をし終わっていて、自ら先頭で走り出した。その後を五人の女が続き荷車を押す兵が続く。
「なんで源三郎まで。全く最初はあいつらを毛嫌いしてたくせに今じゃすっかり仲良しだな。なあ与助」
与助は真田幸村についている佐助の弟だ。ふっと現れて笑みを浮かべた後、また山中へ消えて行った。
「さて、敵はどう出てくるか?ここは織田の領地、大仕掛けはできないとは思うが先入観は危険だ。様子見かと思いたいが」
源三郎は走りながら爆音を聞いた。すぐさまあいに向かって、
「努崙改を用意!敵は空にあり!」
と叫ぶと自らが荷車に走り寄って準備を始める。その間に五人は五つの操作盤の前に立ち電源を入れた。努崙改とは、以前天海に見せた時にもらった助言をもとに矢を5本に増やした改良版だ。チーム戊の操縦で努崙は空中へ浮かび姿が見えた敵のハンググライダーに向かって飛んでいった。
矢を撃ち尽くした頃には織田の鉄砲隊が間に合ったようで慌てる敵兵を次々と撃ち落とし敵は全滅した。源三郎達は努崙改を回収すると喜兵衛の元へ戻った。
「父上、やはりハンググライダーは下からの狙撃にはただの的です。あれでは、」
「そうだな。だからこそ徳様は………、いやなんでもない。ご苦労だった。信豊様と織田様のところへ行ってくる」
何を言いかけたのか?源三郎はその夜眠れなかった。




