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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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狙いと思惑

「伊達のところへ行くのかと思えば。面白いやつだな、お主は。秀吉が気にいる訳だ」


 話しかけられた男は考え事をしているようで、答えない。おしゃべりなイメージがあるこの男、本多正信。会話は武器だ。計算された言葉を口に出す。


 話しかけた男は風魔小太郎という。瀬戸内海の島に設けた新・風魔の里に一部の者を残し、主だった者たちは全てこの東北に連れてきている。小太郎は本多正信の策に乗っかって動いている。秀吉にそう言われた訳ではないが、風魔単独で暴れても大した事ができないのだ。武田の護衛は厳しかった。最初は信勝を暗殺しようとしたが近づくことすらできなかった。変装をしても日々変わる合言葉に追従できず何人もの部下が殺されてしまった。これ以上手練れがいなくなっては何も出来なくなる。そこでこいつと行動を共にするようになったのだが、考える事が面白い。


 本多正信がようやく返事をしようと振り返ると、風魔の小太郎の姿は無かった。


「物音一つせずに、化け物め。さて、ぼちぼち勝頼が仙台に着いた頃だな。護衛が厳しいのは武田の家族がいるところ。ここは脆いと思ったが簡単すぎた。勝頼の甘さだな」


 最上家、すでに最上を名乗る風魔が入れ替わっている。当主の最上義光、嫡男の義康の二人はすでにこの世にいない。


 麻薬を使って武田家中を撹乱させたのは一応の成果は出た。上杉、伊達、そして何よりも穴山だ。馬場、穴山、山県のうち攻略するなら馬場と穴山だ。伊達は麻薬の実験として使った。もっと被害を広げたかったが片倉の動きが早くできなかった。次に上杉に向かったがすでに情報が入っていたようでいいように追い出された。そして穴山、勝頼を誘き出す為に全ての麻薬を投入した。南蛮貿易で手に入れた謎の麻薬、危険という事でもう二度と手に入らないと言われた貴重品だが、勝頼さえこっちに向かってくれれば採算は取れる。


 とにかく武田の戦力の方が豊臣より多い現状を変えなければ勝てない。いや、負けないにしても長期戦になる。それは秀吉の寿命を考えれば負けと同じだ。秀吉が生きている間に決着をつける。この思いは秀吉も正信も同じだった。そして完璧ではないが、穴山は混乱し勝頼はこっちに足を向けた。ここからが勝負だ。





 仙台では勝頼が桃を呼び、調査報告を受けていた。


「何かわかったか?」


「はい。上杉方の梟と佐助からの情報です。出羽の草からの報告では、特に変わりがないとのことでしたがどうやら最上義光は何者かと入れ替わったのではないかと」


「草が気づかないという事は城下の衆や家臣に変わりがないという事だが。いくら風魔が変装が上手くても流石に気づかれるだろう?義光には子がいたよな?」


「はい。嫡男の義康、次男の義親です。義親は前回の東北仕置きの後、駿府へ出仕していました。気持ちのいい若衆という印象です」


「ああ、信勝に聞いた事がある。そいつは今どこにいるんだ?」


 武田から見て外様の大名は人質として家族を駿府に出している。これはこの時代、仕方のない事だが勝頼は人質を将来、武田のために働くよう教育を命じている。もちろん、機密に関する事は教えないが武士は民のために働くという事を徹底的に仕込んでいる。その中に最上の次男がいた事を勝頼はうっかりしていた。


「大屋形様の兵として同行しています。お屋形様がたまには里帰りもいいだろうと」


 信勝が?なんか虫の知らせでもあったのか?だが、これは助かるな。


「あいつめ。ならば、そいつを出羽に使いに出せ。義光と、そうだな、嫡男の義康に仙台まで出てこいとな」


「危険ではありませんか?」


「そうだな。共の者にゼットから何人か出せ。あとは佐助に頼もう」


 桃を下がらせて勝頼は考え込んだ。敵の狙いをだ。お互いに考えがあって東北に来ている。ここまではお互いに思惑通りだろう。なぜ最上なのか?麻薬はどうした?風魔はどう動く?

 狙いは俺の命と東北勢が大戦に参加できないようにする足留めだろう。だがそれだけか?見落としはないか?こんな時に徳でもいれば相談できるのだが。勝頼はそう考えてから大声で笑ってしまった。徳を頼りにしている自分に、だ。思えば徳は不思議な女だ。教科書には勝頼が徳という女と出会った事は書かれてはいない。妾にもいない。三雄は歴史が変わって分岐したのではないかと言っていた。この世界は三雄の知る世界とは異なるのだと。


 だが、今の武田があるのは徳の影響が大きい事は事実だ。世を動かすのは男ではなく女だ、と三雄の娘が言っていた。アニメのセリフらしいがなんとなくわかる気がする。


 勝頼の笑い声を聞いて甲斐姫が部屋に来た。もう入ってもいいと思ったようだ。そうか、甲斐姫に相談するのもいいな。そして夜は更けていった。




 翌朝、最上義親が挨拶に来た。共を2人連れてきている。


「大屋形様、最上義光が次男、義親でございます。お目にかかれて恐悦至極にございます。これに控えるは出羽から付いてきておる従者で、佐藤と鈴木でございます」


 横の2人は震えながら平伏している。鬼に会う訳でもないだろうに。


「勝頼じゃ。信勝から其方の事は聞いておる。将来有能だとな。で、それを見込んで頼みがあるのだが」


 共の2人がさらに震え出した。おいおい。



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