見つけた
瀬戸内海で武田海軍と小早川水軍が偶然の出会いから戦闘が始まった頃、勝頼は仙台に着いていた。小山を成敗した後、下野の仕置きは穴山に任せることにした。色々あって考える時間も必要だろう。要望があった訳ではないのだが、錠の雰囲気から察して錠も置いていく事にした。話し相手というのも大事な存在だ。
真田幸村は井伊直政の看病で宇都宮城に残った。なんだかんだ言ってこの二人は仲がいいのだ。幸村がそう判断したのには佐助の情報があったからだ。仙台には直江兼続が先に向かっていると。ならば、俺いなくていいじゃん、という判断だった。後で徳に怒られるという事はこの時点では1mmも考えていない。
勝頼のお供は甲斐姫だった。特殊部隊ゼットのチーム甲と乙も同行しています。チーム甲のリーダー錠はお役御免となったのでチーム乙のリーダーである桃が両方をまとめています。もう当初の生き残りはほとんど無く、甲も乙もメンバーは入れ替わっています。
「お屋形様、お久しゅうございます」
城に向かう途中で出迎えたのは、元伊那忍びの棟梁、吾郎だった。
「お屋形様ではないぞ。もう信勝がお屋形様だ。久しいな、吾郎」
だいぶ老けたな、と思いつつ勝頼は答えた。
「わしに取っては勝頼様こそが主人でございます。このようなところまでご足労いただく事になりどうお詫びしていいか」
「お前は春のお守り役だ。それだけしてくれれば満足だよ。今回の件はお前ではどうしようのないくらいの大きな力が動いている。気にする事はない。で、本多正信はいたか?」
「それが、佐助から聞いて手の者に探させておるのですが見つかっておりません。佐助が言うには変装の名人だとか」
「本多正信というよりは風魔だな。この東北であいつらの息の根を止める。俺はその為に来たんだ」
秀吉との決戦、それに風魔や本多正信が加わると面倒くさい事になる。大戦になるのに撹乱戦法で味方を引っ掻き回されたんじゃたまらない。勝頼は秀吉が武田の戦力を分散させる為に本多正信が動いている事を承知の上で、わざと東北に来ているのだ。この隙に戦が始まる事を想定してだ。そう、もう戦は始まってしまったがその報告はまだ届いてはいない。徳、半兵衛、喜兵衛、それに信豊がいる。信勝も動くだろう。動かないように半兵衛あたりは言いそうだが、あいつは動く。
城に入るとすぐに部屋に通され、そこに伊達小次郎と春が挨拶に来た。なぜか直江兼続も一緒にいる。
「おう、兼続。お前がいてまだ見つからないのか?」
勝頼は一発かましてみた。上杉には西に行って欲しかったのが本音だ。
「勝頼様。あやつ目は仙台にはおりませぬ」
「その言い方だと居場所を知っているようだが?」
「最上」
そうか。そっちか。前回の東北仕置で、最上だけは様子見にした。伊達家が風魔にいいように利用されたのは最上との関係があったのは間違いないが、最上家は武田に従う姿勢をみせていた、長い者にまかれているだけなのはわかっているが、土地を収めるものは必要なのだ。逆らわない連中まで殺していてはキリがないし誰もいなくなってしまう。
勝頼は小次郎の苦労を労い、春に夏や信勝、信平の話をしてから兼続、吾郎、それといつのまにかそばにいる山上道及、佐助とともに別室に入った。別室には先に片倉小十郎が控えていた。片倉は吾郎と懇意にしている伊達家にこの人ありと言われた重臣だ。
「お初にお目にかかります。片倉小十郎でございます」
片倉は勝頼と話をするのは初めてだった。輝宗、政宗に仕えていた片倉家は伊達家の要だ。若輩の小次郎が伊達家を仕切れるのも片倉あっての事だという事は吾郎からの報告で知っていた。吾郎は春のお守り役ではあるが、東北の情報収集係でもある。
「片倉、春が世話になっているそうだな。礼を言う」
「勿体無いお言葉でございます。先日城下で問題が起きた際、吾郎殿のお力で解決することができました。その後しばらくは薬の後遺症が出る者がおりましたがやっと落ち着きましてございます。その後、播磨の阿国の行方はわからず、警戒は継続しておりますが今のところ城下に怪しい動きはありません」
「その方らの苦労は聞いている。だが、あいつらは武田家中を撹乱させるのが仕事だ。下野でも穴山が酷い目に遭わされた。越後にも行っただろう?」
そう言って勝頼は兼続を見た。兼続は、
「景勝様のご命令で城下を警戒しており大きな被害なありませんでした。すぐに居なくなりました」
上杉景勝、勝頼の妹が嫁いでいる。兼続によると、すでに上杉は美濃へ向かったそうだ。信豊に合流するのだろう。勝頼の指示を待たずとも上杉は動く。義、勝頼は上杉を信頼している。
「で、見張っておったのか?」
「はい。あちこちで薬をばら撒いていましたが下野が一番被害が大きかったようです。その後、小山を放ったらかしにして最上へ行きました。勝頼様が来るのを待っているようです」
そりゃそうだ。俺をこっちに足止めするのが目的、いや、あわよくば命を狙っているのだ。風魔小太郎と本多正信、信勝は真っ直ぐだからこいつらの相手は厳しいだろう。俺がやるしかないんだ。




