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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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終盤戦

 子駿河改の一番艦は敵の砲撃で動けなくなってしまった。二番と三番艦は砲弾をジグザグに避けながら用宗を射程距離に捉えた。その時、


「ドガーン」


 用宗から直接の攻撃を受けてしまう。用宗は油断していなかった。子駿河改が追ってきていたのに気がついていたのだ。それを見たかなは、


「全艦、バラバラに突撃!敵の的にならないように散らばって攻撃!用宗を沈めるのよ」


 用宗は駿河のような最新艦ではないが、以前五郎盛信が乗って行った船よりは超高性能だ。武田の技術が至る所に使われている。敵に渡すくらいなら沈めないと。かなは残りの七隻の指示を出して自分の船の舵を取った。





 小早川水軍の戦艦官兵衛では、黒田官兵衛が沙の旗をあげている敵船が近づいてきている事を知って援護射撃を指示したあと、脱出するべく小舟に乗り換えようとしていた。小舟は武田の船とは反対側に着水しているので状況がわからないが官兵衛は焦ってはいない。今は逃げる事に徹底すべきだ。こういうところが指揮官として優れている。緊急時に中途半端などっちつかずな行動は失敗する事が多いのだ。


 小舟を見ると血だらけの小早川秀秋が先に乗っていた。小早川家を継ぐという事は今は無き毛利の血筋になるという事だ。最初秀吉は秀秋に毛利を名乗らせようとしていた。それが小早川になったのだが、隆景が動いたのだと思う。隆景が存命中に機会があれば聞いてみたい。隆景は秀吉贔屓ではあったが、毛利が無くなるとは思ってはいなかった。いくら何でも秀吉の血筋の者に毛利が盗られるのは嫌だったのだろう。


 官兵衛が小舟に乗り込むと船は出発した。波は荒れていて縦揺れがひどい。秀秋は今にも吐きそうな顔をしているが、血だらけなのでかなり不気味だ。


「中納言殿、気分が悪そうだがいい知らせがある。小早川水軍は武田水軍に勝ったぞ」


「な、なんと。我らは逃げ出しておるではないか。それで勝ったというのでござるか?」


「こちらの被害は大きいが敵は壊滅状態だ。わしの手の者が武田の船を手に入れてこちらに向かっておる。その者を召し抱えてもらいたい」


「黒田殿の手の者を、か」


「わしは隠居の身。それに隆景殿の計らいで水軍の指揮を取ったが船をだいぶ失うてしまった。慣れない事をするものでは無いと身をもって実感した。隠居は隠居らしく過ごすといたそう」


 秀秋はここで急に態度を変えた。血をぬぐい揺れる船の上で必死な形相で胡座をかいてから、


「改めて黒田官兵衛殿にお願いしたきことがござる。小早川家の水軍を貴殿にお任せしたい。その手の者も水軍であろう。戦に水軍はまだまだ必要、黒田殿の手腕、叔父上から聞いた以上であった。お受け願いたい」


 そこまで言ってからひっくり返った。船の揺れに耐えきれなかったようだ。それが滑稽で官兵衛はつい笑ってしまう。


『これも運命なのか?佐吉よ』


 死んだ石田三成の顔を頭に浮かべながら腹の中でつぶやいた。三成は色々ありすぎたが最後まで忠臣だった。官兵衛はそこで即答はせず、空を見上げながら小舟は陸へと向かって行った。味方のはずの武田の船が拾ってくれるだろう。動けなくなった他の船からも多くの小舟に乗った兵が現れ陸へと向かい始めた。小早川水軍の軍船で動ける船はもう無かった。



 官兵衛が陸にむかって進み始めると敵船の様子が見えるようになった。戦艦官兵衛に向かっている武田の大型船が官兵衛が居る方へ進路を変えた。我らを見つけたのだろう。と思いきやその大型船の向こうに小型船が向かっているのが見えた。


「まだ生き残りが!」



 かなは残りの七隻を左右に展開して用宗に攻撃を仕掛けた。用宗も反撃するが的を絞れずに中央の二隻は沈めたものの五隻の子駿河改からの攻撃を受けてしまう。


「魚雷撃てー!」


 子駿河改の武装は魚雷一発と中砲のみ。戦艦相手には魚雷しか意味がない。五発のうち三発が用宗に着弾した。


「何が起きた!」


 船の大きな揺れに佐々木道誉は叫んだ。佐々木は魚雷というものを知らない。魚雷の存在は武田の中でも一部にしか知らされていなかったのだ。戦艦用宗は故障の振りをして後方にいたため、子駿河改がさっき使った魚雷は見えていなかった。


「突然海中から攻撃を受けました。船は航行不能です」


「それは駆動がやられただけだろう。手漕ぎで動かせ。我々は小早川水軍の黒田官兵衛様に合流しなければならんのだ。ここで捕まれば腹を切らねばならなくなる」


「それが、浸水が始まっております」


「ならばモーターボートの用意を。砲台は無事か?」


 魚雷は船底を攻撃した。つまり甲板は無傷だ。佐々木はとにかく武田の船を引き剥がすよう指示して自分は脱出するためのモーターボートへ向かった。


 そして外れた魚雷、そのうちの一つ、それは偶然かなが撃った魚雷だったが、戦艦用宗を掠めその先を進んでいる小舟の集団の方へ向かっていった。





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