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未来を知った武田勝頼は何を思う  作者: Kくぼ


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沙沙貴源氏

 少し前に遡る。黒田官兵衛が物見に確認して勝利を確信した場面だ。戦艦用宗、武田の船に 沙 と書かれた旗が掲げられていたのだ。


 黒田官兵衛は佐々木源氏の末裔だ。秀吉に仕えるようになり生活する金に困らなくなる前から、近江にある沙沙貴神社への寄進をしていた。沙沙貴神社は佐々木姓の氏神として縁故のある者の繋がりの場ともなっていたのだ。沙沙貴神社のある地域が明智十兵衛の支配下になった頃、明智と木下秀吉は同盟を結んでいたこともあり官兵衛は年一回、沙沙貴神社にお参りをしていた。そこである男に出会った。


 その男は六角家ゆかりのものだった。六角家、今はもうないがこの近江を少し前まで納めていた大名だ。六角も佐々木源氏の出だ。


「黒田官兵衛様でございますな。ここでお会いできるとは。某は佐々木道幸と申し以前は六角家に仕えておりました」


「黒田官兵衛でござる。六角家ですか、織田信長様が現れる前は天下に近かったお家。この戦国の世でここ沙沙貴神社でお会いできたのも何かの縁ですかな?」


「時代の流れは急に加速しました。六角家はその波に乗れなかったのです。あれだけ勢いのあった織田信長様も今は亡く木下、いや豊臣秀吉様の時代となりました。某は縁あって北条家にお世話になったのですがその北条家も無くなりました。今はその北条家を滅ぼした武田の家臣に嫡男を拾ってもらいなんとか生活している始末。どこで何を間違えたのか、倅に家を任せて旅をしております」


「なんとか生活という割に旅ですか?武田の金回りがいいので?」


 官兵衛は武田と聞いて興味が湧いた。こういった情報はなかなか直接得られない。


「倅が武田の水軍の将に気に入られましてな。某は六角家で琵琶湖の水軍にいたので某も倅も船の知識があることから北条では水軍の末端におりました。小田原では運良く予備兵扱いだったので助かりました。そのあと某は隠居し倅が伊谷という武田の将のところへ……… 」


「伊谷と申したか。聞いたことがある。武田水軍の要と聞く。そんなところにご嫡男が」


「黒田様。武田とは争っておられるのですよね?いつか倅と戦うこともあるやもしれませんな」


「佐々木殿。この縁をそんな形にしたくはありません。同じ佐々木の出、戦国ゆえに争うこともあるでしょうがお近づきになりたいものです」


 官兵衛は調子のいい事を言っているが、要はこいつらを利用しようとした。佐々木も同じだった。旅人というのは嘘ではないが、ここ沙沙貴神社で黒田官兵衛が来るのを待っていたのだ。


 そして何度か沙沙貴神社で会う中でいつか一緒に戦う日の事を何パターンか決めていた。倅とは会った事はない。ここまで来る自由はないからだ。怪しげな父親との話が実際にどうなるのかはわからないが、矢は多い方が有利だ。


 倅こと、佐々木道誉は武田海軍で戦艦用宗を任せられるまで出世した。船が増え、水軍経験者が足りないという幸運もあり要職に就くことができた。佐々木道誉はずる賢い男だった。伊谷には忠臣のように振る舞い、腹の中ではいつか豊臣方に寝返る事を考えていた。それが父の命令だったからだ。ただ、その中で道誉はもし、豊臣が劣勢ならそのまま武田に残ることもあると思っている。六角、北条、武田と短い間に主君が変わる人生に飽きていた。


『どうなるかは成り行き次第。風に逆らわない事だ』


 佐々木道誉が船を任された事は黒田官兵衛に伝わっていて、沙 の合図も決められた。ただいつそれを使うのか、いつ寝返るのかは佐々木に任せられた。官兵衛もどこでどうなるのかはわからない。






 偶然なのか必然なのか?織田との戦で小早川隆景を助けた事がきっかけなのか、官兵衛は小早川水軍の船に乗っている。小早川秀秋を迎えに行くだけの船旅の予定が武田水軍との戦になる。そしてなぜか指揮を取ることに。


 戦となれば手腕の見せ所だ。官兵衛は海での戦は初めてだが武田相手に奮戦した。だが、戦艦官兵衛は敵の不思議な攻撃で大破した。


「敵の船はどうなっているか!」


 官兵衛の声が飛ぶ。


「黒田様。敵の砲撃らしき攻撃で本艦は大破しています。もうしばらくは持ちますがいずれは」


 小早川家の家老、清水景治は状況を報告した。さっきの衝撃は凄まじかった。いきなり船が大破して浸水を始めたのだ。数発の砲弾を喰らってもこうはなるまい。官兵衛はそれを考えている暇がない事を悟った。まずは秀秋だ。


「中納言は?」


 さっきクッションにしてしまった。血だらけだったが大した事はなさそうだったがそういえば姿がない。


「もう小舟の方へ移動しています。黒田様も早く」


「物見を出せ、しばらく保つのであれば敵船の様子を見届けねばならぬ」


 そして敵の船は同志撃ちが始まったと聞き、


「縁、面白いものよ。沙の旗を掲げた敵船がこっちに来るはずだ。それは味方だから攻撃はしないように。可能な限りこちらからも武田の船を狙え!この船はまだ撃てるはずだ」


 官兵衛は砲撃兵のところへ向かった。脱出は最後でいい。

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